恋愛ブログ

世にも不思議な物語。
出会いの数だけドラマがある。
一日一話愛の短編物語。
〜ショートストーリー〜

4.失恋

2006年02月22日 | せつない恋
 私は、あの人が大好きだった。背が高くて、目が澄んでいて、お笑い芸人に少し似ていた。あの人の側にいるだけで、楽しくて胸がときめいた。
 あの人は7年付き合っていた彼女がいた。私とあるきっかけで出会い、彼女と別れて、付き合うと言ってくれた。
 私はうれしくてあの人の前で子供みたいに泣きじゃくった。
 あの人は困ったような顔をして頭を撫でてくれた。
 私は、勇気を出してあの人の胸の中に飛び込んだ。温かい広い胸。高鳴る鼓動。目を閉じてキスを待った。待つ事約15秒。あの人の柔らかい唇が触れた。大好きな人とのキス。頭が真っ白になり、胸が苦しくてどうにかなりそうだった。キスの時間約30秒。永遠に忘れられない時間になった。あの人の胸の温もりは、大自然の中にいるように居心地がよかった。
 キスをした後、少し離れてあの人の顔をゆっくりと見た。顔がゆでだこみたいに赤くなっていて、恥ずかしそうに笑っていた。2度と忘れる事が出来ないやるせない熱い想い。2回目のキスをして、いつの間にか夜を飛び越えていた。
 次の日、あの人から電話があった。
 「彼女とヨリを戻した。」よりって何なのか頭の中でグルグル言葉だけが迷路みたいに回っていた。記憶の中によりと言う言葉が見当たらなかった。
 脳がありませんと信号をキャッチすると、泣きたい気持ちが全身に伝わって、少し震えていた。私は信じられなくて、何度も聞いた。
 「何で私じゃ駄目なの?何で?」
 「やっぱり彼女の事が忘れられない。」沈黙が約10秒続いた後、あの人は言葉を詰らせて静かに言った。
 「あの夜は何だったの?ただの遊びだったの?私はそんなつもりじゃなかったのに。ひどい。」
 「ごめん。」電話が切れた。私は、何時間か電話の前で化石のように固まっていた。プープーという音が、居心地悪くて、無意識に何度も受話器を壁にぶつけていた。
 私のどこが悪いの?何で彼女の事が忘れられないの?何で私じゃ駄目だったの?頭の中で小さい自分が何度も叫んでいた。
 要するに彼女に負けたのだ。惨敗だった。悔しくて唇をキュッと噛み締めた。男の気まぐれ。男の欲望。男の気持ち。男なんて二度と信用しない。
 昔もこんな事があったが忘れていた。
 人は悪い事は忘れていくように出来ている。自分勝手な生き物だ。
 忘れていた事が、些細な何かのきっかけで思い出す事もある。
 あの人のおかげで嫌な過去を思い出していた。
 同級生の男。専門学校の先輩。会社の係長。飲み屋の店長。数えればキリがない。私の前からいなくなった男達。
 残ったのは、ひとかけらの記憶と砂を食べたように後味が悪い感覚だけだった。 忘れた男を思い出すとそれぞれの男に悩まされる。一人一人が孤独で陰気で嫌な男達だった。だけど、こんな夜は昔抱かれた男の夢をみるのも悪くない。
 あの人の事もいつか思い出す日が来るのだろうか。
 思い出す日の事を考えて、自分勝手にいい思い出にしていた。
 


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2 コメント

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胸が苦しくなります (先生)
2006-02-26 12:46:09
恋をしていると、どんな恋の話も自分のことのように思えますね。

胸が苦しくなったり、ついニヤニヤしちゃったり。

またきます。

私のブログも覗いて見てください。

作ったばかりですが。
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 (キーボーです。)
2006-02-26 17:58:20
 恋をするとニヤニヤしますよね。私なんか年中ニヤニヤしてます。危ない人みたいだからやめようと思うんですが、好きな人が目の前にいると仕方ないですよね。

 やはり先生でも恋をするんですね。私だけかと思ってましたよ(笑)

 先生としての意見と恋する乙女の意見、ぜひ参考にしますので見に行きますね。

 ヨロピクピク(*^_^*)
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