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世にも不思議な物語。
出会いの数だけドラマがある。
一日一話愛の短編物語。
〜ショートストーリー〜

17.パラソル

2007年09月19日 | 家族
 私の家は喫茶店をしている。
 家の前には虹色のパラソルを大きく広げ、その下にはベンチのようなソファのような座る場所がある。
 いつも夕暮れになると父が座っている。
 杖をついてジョンレノンみたいなサングラスをして帽子をかぶり、堂々とした感じで夕日を眺めている。
 首のコルセットが少し痛々しいが、どことなくアルパチーノ演じるゴッドファーザーを感じさせられる。
 大きな体を支えるのが辛そうなソファに座るとギシギシと唸っていた。
 父はお構い無しに座っていた。
 その前を近所の小学生の団体がランドセルをからって帰っている。
 ジャンケンをして負けた人が全員のランドセルをからうゲームをしていた。
 父の姿を見ると「サヨナラ。」と言っている。父親は無邪気に手を振りながら「はい。さよなら。」と呟いている。どこかの学校の先生のようだ。
 こんなガラの悪い先生はいないだろうけれど。
 首を手術して大分時間が経った。その後、脳内出血で倒れたのだけど、何とか生きている。
 生きる事に一生懸命だった父は何を思っているだろうか。
 沈む夕日に何を唱えているだろうか。
 近くの三池炭鉱が栄えていた時から喫茶店を始めて、かれこれ35年の月日が経った。店を潰さないようにしてきた父はやはり尊敬する所がある。
 色々なお客さんが来た事だろう。
 様々なアクシデントがあった事だろう。
 私も父の隣に座り何も言わず一緒に夕日を眺めていた。
 
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