都会から、久しぶりに故郷に帰って来たのはいいが、母の様子がおかしかった。
家の鍵を閉めたかどうかを何度も聞くし、鍵の場所も何度も探している。
父は、物心ついた時にはいなかった。私が小さいころ愛人と逃げたようだった。母には父親の事を色々聞きたかったが、知らぬふりをしていた。
母一人で、私を育ててくれたのはよかったが、子供の頃から迷惑ばかりかける娘だった。
暴走族の総長と仲良くなり、バイクに乗り、レディースみたいな事をしていたし、毎回、交番にお世話になって、その時スナックで働いていた母が、ドレスのような派手な格好をして頭を下げていた。家に帰ると、殺風景な畳四畳半のアパートで、貧乏のどん底みたいで、大変だった。
世の中の不平不満みたいな物がたくさんあった。
だけど、母の生きることへの懸命さは、よくわかっていたつもりだ。
「お母さん。明日、また帰るけど、一人で大丈夫なの?」
「なんも心配せんでよか。あんたも生活があるだろうから。」と今度は携帯電話を探しているが目の前の机にあった。
「また、落ち着いたら帰ってくるから。」
「あぁ分かっとる。分かっとる。」何かを探すかのように壁の隅を見て、私の顔を見た。娘だと分かってなさそうな風にも見える。
何かを思い出したかのように、私の腕の袖をめくって、リストカット跡の腕を優しく何度も何度もさすっている。
そんな事をしても、傷は消えないのにと思うと涙が一筋頬をつたわった。
「お母さん。こんな娘でごめん。」庭の桜の花びらが、隙間風からひとひら入ってきた。
家の鍵を閉めたかどうかを何度も聞くし、鍵の場所も何度も探している。
父は、物心ついた時にはいなかった。私が小さいころ愛人と逃げたようだった。母には父親の事を色々聞きたかったが、知らぬふりをしていた。
母一人で、私を育ててくれたのはよかったが、子供の頃から迷惑ばかりかける娘だった。
暴走族の総長と仲良くなり、バイクに乗り、レディースみたいな事をしていたし、毎回、交番にお世話になって、その時スナックで働いていた母が、ドレスのような派手な格好をして頭を下げていた。家に帰ると、殺風景な畳四畳半のアパートで、貧乏のどん底みたいで、大変だった。
世の中の不平不満みたいな物がたくさんあった。
だけど、母の生きることへの懸命さは、よくわかっていたつもりだ。
「お母さん。明日、また帰るけど、一人で大丈夫なの?」
「なんも心配せんでよか。あんたも生活があるだろうから。」と今度は携帯電話を探しているが目の前の机にあった。
「また、落ち着いたら帰ってくるから。」
「あぁ分かっとる。分かっとる。」何かを探すかのように壁の隅を見て、私の顔を見た。娘だと分かってなさそうな風にも見える。
何かを思い出したかのように、私の腕の袖をめくって、リストカット跡の腕を優しく何度も何度もさすっている。
そんな事をしても、傷は消えないのにと思うと涙が一筋頬をつたわった。
「お母さん。こんな娘でごめん。」庭の桜の花びらが、隙間風からひとひら入ってきた。
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