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世にも不思議な物語。
出会いの数だけドラマがある。
一日一話愛の短編物語。
〜ショートストーリー〜

9.ガールフレンド

2012年03月25日 | 春の物語
 車の窓を開けると、暖かい風が横を通り過ぎていく。君に会うのは今日で3回目。待ち合わせはいつも彼女の家の前だ。私が車で迎えに行くのが日課になっていた。
 私が、車の中から手を振ると彼女も手を振っている。今日は、チェックの丸い帽子を被り、白の長袖のシャツに紺色の長めのスカートを履いている。肩からショルダーバッグをかけていた。
 「待った?」
 「そんなに待ってないよ。」
 「車に乗りなよ。」
 「はーい。」彼女が、ドアを開けて乗り込んだ。乗り込む時、香水の甘酸っぱい香りが車の中に漂った。
 「今日はどこ行こうか?」
 「どこでもいいけど。」
 「じゃーその辺ドライブしよっか。」
 「いいとも。」彼女が右手を上げて叫んだ。
 「まったく。タモリじゃないんだから。」と突っ込むとお互い苦笑いをした。まだ付き合ってもいない関係なので、無理に彼女が盛り上げているのがよく分かった。
 家の通りを抜けると海が見えてきた。海をバックに桜並木がある。まだ、桜は咲いていない。蕾が少し出ているような感じだ。
 「まだ、桜さいてないね。」彼女が残念そうに桜の木を見て呟いた。
 「後2週間後くらいに満開になるんじゃないかな。」
 「じゃーその時にまた、来ようね。」と言ってウィンクをした。
 「うん。」その時は、彼女とはどうなっているのだろうか。ちゃんと付き合っているのだろうか。二人きりで会うという事は、すでに付き合っているという事なのだろうか。付き合ってくれと言うべきなのか。
 「ちょっと海でもみよっか。」
 「いいよ。」砂浜に車を止めて、降りた。近くに大木があったので、二人で腰掛けた。
 「海きれいだね。ピカピカ光ってる。」彼女が言葉を捜すように言った。
 「だよね。」一時黙った後、質問をした。
 「俺たちって付き合ってないのかな。」
 「どうだろうね。」彼女が貝殻を見つめながら肩をすぼめた。普通の男はどんな感じで付き合ってというのだろうか。かっこつけて言うのだろうか。
 「俺たちいい感じだと思うけど、どうかな。俺と付き合ってくれない。」暖かい風が波を泳がせている。
 「あと少し考えさせて。」
 「何で?」
 「まだ、元彼の事が忘れられないの。」
 「そうだったんだ。」それから、じっと海を眺めていた。
 帰りの車の中、饒舌だった彼女が黙っていた。元彼と私とを量りにでもかけているのだろうか。何を考えているのかよく分からない。彼女の家の前についた。
 助手席で彼女が小さな声で「ありがとう。」と言った。その返答に困っていると、彼女が私の唇にキスをして家の中に入った。このキスは何のキスなんだろう。付き合ってあげるのキスなのか。別れようのキスなのか。よく分からない。
 ただ、彼女のやわらかい唇は、ミントの味がした。
 
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