１１．手紙

拝　啓

　これが最後の手紙です。
　あなたが私の目の前からいなくなって大分時間が経ちました。
　別れてから何度もあなたの事を考えていました。
　これから先もあなたを好きな事には変わりありません。
　何でこの手紙を書いたと思いますか。
　私が結婚するからです。
　自分にとってけじめをつけたかったからかもしれません。
　この手紙を書いてどうなる事でもないかもしれません。
　ただ私は文章としてあなたに伝えたかったのです。
　今でも愛していると。
　こんな事を言ったら、これから旦那さんになる人から怒られるかもしれませんね。
　だけど、この気持ちは消えないのです。
　まだ、言いたいことはたくさんありますが、涙が溢れそうなので、この辺で止めておきます。
　それでは、また会える事を願って、見守っていてください。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　敬　具
　昨日書いた手紙を封筒に入れ、薪と一緒に火をつけた。
　燃え盛る煙を見て天国にいる夫に届いただろうか。
　蝉の鳴き声がどこまでも痛かった。
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