私は地球で楽しく遊ぶために生きている

心はいつも鳥のように大空を飛び 空に吹く風のようにどこまでも自由に

どうしょうもなく惹かれる~2~愛とセックス

2016-07-29 09:46:13 | オムニバス恋愛小説
某女子大学を卒業した後、
丸の内の商社の受付に就職した。
自分自身が、羨望の存在の女性だったことは、周りの視線と発する言葉でわかっていた。
ひとり娘で過剰な程の愛情を与えられ、経済的に豊かな環境に何の疑いもなく生きていた。
大学病院勤務の医師である父親は誠実で、家庭団欒をこよなく愛する人物だった。、
私は、経済的にも精神的にも、ゆとりのある生活の中で私は生きていた。
そして、父親の紹介で同じ大学病院の内科医師、青田雄介と出会った。
雄介は知的で、穏やかでそして善良な男性だった。
時々女友達と会話しているような錯覚をするほどに雄介の思考回路は女性的だった。
だからこそ、緊張することもなくデートを重ねることができたのだろう。
雄介の顔立ちは整っていた。鼻筋も真っ直ぐに通り、唇は適度に膨らみ形もよい。
つきあって3か月目にプロポーズをされた。
養子に入ることも拘らない雄介との結婚を両親は喜んだ。
しかし、私の内面に何も生まれていなかった。
いくばくかの熱情さえも。
半年後、二人で旅行をした時に雄介に初めて抱かれた。

均整のとれた体。しかしその体に抱かれても感じることはなかった。
無表情に抱かれている私を雄介はバージンと誤解した。
「大切にするよ」そう言い優しく抱きしめた。
既に男を知っていることなど想像もしないだろう。
将来性のある有望な婚約者、経済的に余裕の環境、
家族旅行、ホテルのリッチな食事、幸せを絵に描いた生活とはこういうものなのだろう。
世間的に見て私は幸せな人生を生きているのだ。
しかし、私はそれらのものすべてに一度も幸福感を感じたことがない。
満足を感じたこともない。
そして心の奥底で正体不明の風がいつも吹いていた。
時折、求めてくる雄介の性の欲望を私は無視した。雄介は私の我儘を受け入れてくれた。
このまま生きていけば私の幸福な人生はどこまでも続いていくのだ。
そのはずだった。
あの風の正体を求めなければ。

続く・・・
      

どうしょうもなく惹かれる ~愛とセックス~1

2016-07-25 12:25:00 | オムニバス恋愛小説
その音が、風の音でないことはわかっていた。
気まぐれな夜の訪問者の匂いは身体で覚えてしまった。
今夜も男は当然のように私の布団の中に無遠慮に入り乱暴にパンツを下す。
唾液の絡まる舌で乳房を舐め、太い指で強く揉む。渇望した私の泉があふれ出る。
その濡れた液体が男の指に絡まり奥へと忍び込む。そして男は必ず言う。
「何が欲しいんだ」
「・・・」
「ほら、何が欲しいんだ、言ってごらん」
「ああ・・・」
「どうして欲しい」
「入れて」
満足した男の表情。深部へと深く深く飽くことなく突き上げてくる快感。
私の喘ぎ声は男の唇にかき消され、または、タオルで口を塞がれ
エクスタシーは苦しい表情へと変貌していく。暗い部屋。汗の匂い、そして荒い息。
白日夢のあの日、窓から見えた庭に鮮やかに咲いていた花。
その燃えるような朱色の花、曼珠沙華(マンジュシャゲ)が鮮明に記憶残像となった。
正体不明の男との秘密のセックス。
ある日、セックスの余韻に浸る男は満足した表情で窓の外を見ていた男が聞いた。
「あの花はなんていう名前だ?」
「マンジュシャゲ・・・」
「マンジュシャゲか・・・卑猥な花だな」
分厚い唇から出てくる男の言葉の一言にさえ胸が疼いた。
その日のマンジュシャゲは夕焼けのオレンジ色と重なり真っ赤に染まっていた。
そして、男は、セックスの耽美な快楽の渇望だけを残して去った。
父親が受験に集中できるようにと自宅の敷地に建てられた離れの小部屋は
歪んだ性癖へと導いただけとなった。

その男が自宅の改築工事に出稼ぎに地方から来た大工職人だと知ったのは
男が去ってからしばらく過ぎてからだった。

あれから、10年の歳月が過ぎた。私は28歳になった。


続く・・・

女達の恋愛事情~理香子の場合~最終章

2016-07-16 21:37:21 | オムニバス恋愛小説
人は生きていく中でさまざまな選択がある。
もしも、あの時田島と出会っていなかったら・・・
もしも、あの時職場の先輩のプロポーズを受けていたら・・・
もしもあの時ユリを産まないで、独身でいたら・・・
私の人生は変わっていただろうか。
いや、結局何が起ころうと人生の「もしも・・・」は繰り返されるのだ。

田島は、ユリを選んだのだ。
私は、不幸にも愛されない側になってしまった。
私は女を失った。自信を失った。
それは、体の一部分をもぎ取られたような喪失感だ。
女として?そう女としての哀しみと喪失感だ。
正直に言わなければならない。
私は母親にはなれなかった。
ユリが感じていたであろう母という生き物に最後までなれなかった。
・・・でもユリ、あなたは田島に選ばれた。
    女として勝組じゃない・・・

私は空を見上げ呟いた。


終わり・・・

女達の恋愛事情~ユリの章~最終章

2016-07-09 20:13:44 | オムニバス恋愛小説
「お母さん、私はもうあなたの元へ戻ることはないでしょう。
私は田島の元へ行きます。お母さんの娘であるよりも、私は田島を選択しました。
田島と生きていく理由を今から語ります。

ある日学校から帰る途中のことでした。
携帯電話が鳴りました。見知らぬ番号でした。
でも、何故か直観で田島ではないかと思いました。
消息不明になってからから5年が過ぎていました。
「ユリ元気だったか?」やはり田島でした。
言葉が出てきません。
「ユリ会いたいな」田島の懐かしいねっとりした声が耳に入ってきます。
「ユリを抱きたい」こういうのを獣と呼ぶのでしょう。田島らしいセリフです。
しかし、私の中で5年前の田島との戯れの男女の時間が身体を走ったのです。
「ユリ大人になっただろうな。あれから俺以外の男とやったのか」
やったのか。田島がよく使う言葉です。
5年の間、同級生や、先輩とセックスを何度かしました。
しかし、稚拙なセックスは田島との濃厚な蜜の世界とは天と地の差が
あることを知っただけでした。
不幸にも私の身体は田島でしか喜べない身体になってしまっていたのです。
「ユリ会えないか?2人だけで」
もう体の芯の部分が疼いています。

翌日、田島の指定した駅の近くのビジネスホテルに私は迷いながら向かいました。
部屋に入ると田島は両手を広げて迎えています。
吸い込まれるように田島の胸の中にしなだれます。
忘れていた快感はすぐに呼び起こされました。
私の身体は田島を待っていたかのように歓び、快感の波が何度も押し寄せてきます。
お母さんごめんなさい。
許してください。私は女になりました。
女であることを選びました。刹那の人生の罰はいつか来るでしょう。
後悔の生活を強いられるでしょう。
でも田島と離れることに比べたら耐えられそうです。

最後にお母さんひとつだけ確かめたいことがあります。
いつも心の隅に思っていたことがあります。
おかあさんあなたは、私を愛していたのですか?
もし、子供への愛があるのなら、2人の異変に気づかないわけがないですよね。
結局あなたも又、女であることを優先したのです。
私を抱いた腕で、生暖かいペニスを挿入されていることに、
異常な快感を感じていたのではないですか?
あなたの中にあったものはやはり「おんな」なのです。
私達はおんなとしてのみ生きてきたのです。
そして、今私は田島を選んで生きていきます。
おかあさん、田島の身体に愛されたいと望んだ娘を
忘れてください。     さようなら

続く・・・


女達の恋愛事情~理香子の章5~

2016-07-02 20:18:54 | オムニバス恋愛小説
田島が消息不明になってから5年が過ぎた。
ユリは高校1年生になった。
綺麗な女性に成長していた。年令不詳の色気を時々感じる時、
田島との淫靡なそして快楽の日々を想像すると、不快感が全身に走った。
私とユリは田島のことを封印して生きてきた。
時折お風呂から出た後にユリの裸体に遭遇する時があると、
私は 目をそむけた。田島に抱かれた女の身体は見たくなかった。
田島が失踪してから、ユリと田島のことを語ることはなかった。
私と娘ユリの間には触れてはいけない暗黒の川が流れていた。
その暗黒の川をお互いが対岸で見つめていた。
しかし、人生はあまりに理解不可能なドラマが起きる。

夏が終わろうとしていた。
明日から新学期が始まる前の夜、
友人と会って来ると行ったままユリは帰って来なかった。
そして数日後、分厚い手紙が届いた。
見慣れたユリの字だ。
始めに視界に入った文字に驚き手が震えた。

「「お母さん、私はもうあなたの元へ戻ることはないでしょう」

続く・・・