私は地球で楽しく遊ぶために生きている

心はいつも鳥のように大空を飛び 空に吹く風のようにどこまでも自由に

どうしょうもなく惹かれる ~愛とセックス~1

2016-07-25 12:25:00 | オムニバス恋愛小説
その音が、風の音でないことはわかっていた。
気まぐれな夜の訪問者の匂いは身体で覚えてしまった。
今夜も男は当然のように私の布団の中に無遠慮に入り乱暴にパンツを下す。
唾液の絡まる舌で乳房を舐め、太い指で強く揉む。渇望した私の泉があふれ出る。
その濡れた液体が男の指に絡まり奥へと忍び込む。そして男は必ず言う。
「何が欲しいんだ」
「・・・」
「ほら、何が欲しいんだ、言ってごらん」
「ああ・・・」
「どうして欲しい」
「入れて」
満足した男の表情。深部へと深く深く飽くことなく突き上げてくる快感。
私の喘ぎ声は男の唇にかき消され、または、タオルで口を塞がれ
エクスタシーは苦しい表情へと変貌していく。暗い部屋。汗の匂い、そして荒い息。
白日夢のあの日、窓から見えた庭に鮮やかに咲いていた花。
その燃えるような朱色の花、曼珠沙華(マンジュシャゲ)が鮮明に記憶残像となった。
正体不明の男との秘密のセックス。
ある日、セックスの余韻に浸る男は満足した表情で窓の外を見ていた男が聞いた。
「あの花はなんていう名前だ?」
「マンジュシャゲ・・・」
「マンジュシャゲか・・・卑猥な花だな」
分厚い唇から出てくる男の言葉の一言にさえ胸が疼いた。
その日のマンジュシャゲは夕焼けのオレンジ色と重なり真っ赤に染まっていた。
そして、男は、セックスの耽美な快楽の渇望だけを残して去った。
父親が受験に集中できるようにと自宅の敷地に建てられた離れの小部屋は
歪んだ性癖へと導いただけとなった。

その男が自宅の改築工事に出稼ぎに地方から来た大工職人だと知ったのは
男が去ってからしばらく過ぎてからだった。

あれから、10年の歳月が過ぎた。私は28歳になった。


続く・・・