私は地球で楽しく遊ぶために生きている

心はいつも鳥のように大空を飛び 空に吹く風のようにどこまでも自由に

尽くし過ぎる女~最終章~

2017-01-08 10:10:30 | オムニバス恋愛小説
「角松夏美の妹です。突然お電話してすみません」
夏美の妹とは何度か食事をしたり、自宅に訪ねた時に話したことがある。
夏美とは対照的に口数は少ないが、奥底に芯を感じる女性だ。
「久しぶり。どうしたの?」」
「姉のことでどうしても理沙さんに謝りたくて」
「何かしら?」
「理沙さんを姉の恋愛問題に巻き込んでしまったのは私のせいです。
孝志さんと理沙さん2人を駅で見かけたことを伝え方を気を付けていたら
思うと、後悔しています。その時の2人の様子を執拗に聞いてきて、
楽しそうだったか?と聞くから私が見た時は2人笑顔で会話していたから、
そうね、軽く言ったんです。それだけなのに、
姉、ジェラシーのスィッチが入ってしまって」
「そうだったの・・・それで今夏美の様子はどうなの?」
「あれから孝志さんと別れ話で揉めて、孝志さんは別れたくて避けていた。
姉はあきらめきれなくて、ひどい状態になってしまって」
「何かあったの?」」
「最後はストーカーのようになってしまった。孝志さんが帰る時刻に駅で待ち伏せ
していたり、孝志さんの自宅マンションの前で深夜までいたから、
マンションの住人に不審者と間違われて警察に通報されたんです」
「えっ!」理沙はめまぐるしく変貌していた2人の恋愛模様に言葉が出なかった。
「結局会社を辞めて、現在は母方の実家で心の静養しています」
「そう、大変だったわね」
「はい、今は何とか家族も落ち着きました」
「もう、夏美には嫌われてしまったから何もしてあげられないけど。
私でできることがあったらいつでも連絡してきてね」
妹からの電話が終わると理沙はふっと溜息をついた。

女とは、恋愛とは、なんと哀しく切ないものだろう。
夏美あなたは正直で人間ぽくって純粋で素敵な女性よ。
必ず自分に似合う男性に出会うわ。
あなたが愛する男ではなく
あなたを愛してくれる男に。

終わり・・・

尽くし過ぎる女~14~

2017-01-01 15:09:40 | オムニバス恋愛小説
孝志はこの恋に疲労困憊していることが明らかな口調でわかった。
「もう、疲れたよ」
「疲れた?疲れているのは私よ。我慢しているのも私よ。
あなたは自分の生活を優先しているじゃない。
私は、我慢している。孝志のことを優先しているじゃない」
なおも追及しようとする夏美に孝志は最後の言葉を放った。
「もうやめよう」
「どういう意味?」
「僕達もうだめだ。僕が耐えられない」
夏美が驚愕した表情で孝志を見つめている。
「理沙さんの名誉の為にはっきり言っておくよ。僕と理沙さんは何もやましいことはない。
理沙さんは、夏美のことを考えてくれている友情に熱い思いやりのある女性だよ」
その途端に夏美の表情が豹変した。
「ふん、どうかしら。クールな裏の顔は小悪魔だったりして」
「それが嫌だってのがまだわからないの?理沙さんみたいな友達はもう君の人生には表れないよ」
嫉妬と、怒りと不満に満ちた夏美は、かつての男性に保護され愛されるタイプの女性ではなかった。
ジェラシーの炎をたぎらせている女に理沙は感動すら感じていた。
恋でこれほどまでに変貌できる女に感動していた。
「理沙さん、これ以上2人のことで煩わせたくない。ごめん。2人だけにしてくれるかな」
理沙は無言で頷き喫茶店を後にした。

一ヵ月後、夏美と孝志が別れたことを聞いたのは
夏美の妹からの電話だった。


続く・・・