私は地球で楽しく遊ぶために生きている

心はいつも鳥のように大空を飛び 空に吹く風のようにどこまでも自由に

女達の恋愛事情 ~人妻久美の場合8~

2016-03-27 17:42:38 | オムニバス恋愛小説
           
京香と警察と夫の間でどのような話し合いをしたのかわからないが、
私は自宅へ帰ることができた。
自宅に帰ると夫は罵詈雑言で私を攻撃した。
「まったく呆れたよ。一体何を考えているんだ。
娘と同じくらいの女性を追いかけて挙句に警察に通報されたなんて。
京香さんが穏便にしてくれるということで注意だけで済んだんだ。
もうおしまいだな、僕達」
うな垂れたまま私は動かない。
「気持ち悪くて一緒に住めないよ」
「気持ち悪い?」
「女が女に惚れるなんて考えられない。少なくとも僕には理解できない世界だ」
私は消え入りそうな声で呟いた。
「好きになっただけよ・・・ただ好きなになってしまっただけ」
「好きになったら本能丸出しで行動してもいいのか!君は逮捕されたかもしれないんだぞ。
それもストーカー。ああ、おぞましい」
夫が絶望的な表情で額に手をあてた。
その時、キリカの姿が視界に入った。
リビングの入口でキリカは怒りの表情で立っていた。
「キリカもパパと同じ考えだろう?母親失格だよな」
キリカの怒りは母親へのものだと勘違いしたのだろう。
同調を求める声で言った。
キリカの頬が濡れている。泣いているのだ。
「パパのことは好きよ。でも、でもパパにママを軽蔑する資格はない」
「何を言うんだキリカ、気持ち悪いと思わないのか?」
キリカは首を左右に振ると叫んだ。
「ママはただ人を好きになっただけじゃない!純粋に人を愛しただけじゃない!」
キリカの言葉に衝撃を受けた夫は無言で部屋を出て行った。
うなだれている私の身体をキリカは抱きしめた。
弱い小動物のように震えながら私は言った。
「ねえ、京香ちゃんはどうして私のこと嫌いになったのかしら?」
キリカは私を抱きしめながら泣いていた。


続く・・・

女達の恋愛事情人妻久美の場合~7~

2016-03-12 23:17:03 | ミステリー恋愛小説
京香の住むマンションの前でタクシーを降りると一目散に階段を上った。
部屋のチャイムを鳴らす。
ドアを開けた京香の表情が引き攣っている。
私は京香の顔を見た瞬間歓喜の表情になった。
「京香ちゃん!大丈夫?怖かったでしょう?」
「何故?何故久美さんがいるの」
「無事でよかったあ」
京香は驚きと恐怖で青ざめている。
「京香ちゃん、どうしたの?」
「迷惑です・・・」
京香は絞り出すような声で言った。
「どうしたの?何言っているの?京香ちゃんが心配で飛んで来たのよ」
私は京香の傍に近寄りいつものように手を掴んだ。
「やめて。傍に来ないで!触らないで!」
「何を言っているの?京香ちゃん。どうしたの?」
京香の身体に触れた瞬間、京香は叫んだ。
「いやー!助けてー。誰か助けて!」

数分後、2人の警官に両脇から腕を掴まれていた。
「署までご同行おねがいします」
京香の悲鳴を聞いた同じマンションに住む住人が警察へ通報したのだ。
私は同性を追いかける変態ストーカーとなっていた。

続く・・・


女達の恋愛事情~人妻久美の場合~6

2016-03-05 18:24:07 | オムニバス恋愛小説
京香との季節が終わろうとしていた。
私は京香を待った。
時に英語スクールの玄関で。
時に、京香の住む駅の改札口で。
時によく行ったイタリアンレストランで。
京香は私の姿を見つけると次第に不快感を露にした。

「京香ちゃんどうして軽蔑したような目で私を見るの?」
「別に」
無機質な京香の声が返ってくる。その度に深い失望が押し寄せてくる。
「京香ちゃん変わったわ。二人の時間楽しかったじゃない」
「何がですか?」
「ねっ、京香ちゃん今日いつものパスタ食べに行かない?」
「予定があります」
「どこに行くの?」
「久美さんに言う必要ありますか?」
入り込めない壁のようなものを感じる。
どうしたの?どうしちゃったの?
英語スクールの帰りに声をかける。
「ねえ、今日一緒に帰れない?」
京香は能面のような表情を向けた。
「予定があるって言ってるでしょ!」
私は意識を失いそうになった。
この場に倒れたらどんなに楽だろう。
何故?突然変わってしまったのか?
そして京香は冷やかに「最近のあなた気持ちが悪いです」と言った。
・・・あなた・・・これ以上の言葉のナイフはないだろう。
京香の態度は徐々に変わっていき、やがて私の姿を見つけると、
不気味なものを見るような視線を無遠慮に投げかけた。
そして、2人の人生に決定的な出来事がおきた。
ある日の深夜、
熟睡しているとベッドが揺れた。
その揺れは徐々に左右に激しくなりマンションが大きく揺れた。
「地震だ。でかいぞ!」夫も飛び起きた。
棚に飾ってある飾りの人形やぬいぐるみが落ちた。
私はベッドから起きると叫んだ。
「京香ちゃん!」
叫びながら財布だけを持つと部屋を飛び出した。

続く・・・

女達の恋愛事情~人妻久美の場合5~

2016-03-03 00:24:27 | オムニバス恋愛小説
「私ね、見てしまったの。トキオ君が女性と一緒にいるのを」
話があると私は、京香を行きつけのレストラン「ブルーキャット」に呼び出した。
「それだけじゃないの。偶然見てしまったのよ」
「何を?」京香の顔色が徐々に蒼白になっている。
「言いにくいんだけど・・・トキオ君が女性とホテルに入って行くところを」
「嘘!嘘よ。トキオがそんなことするはずないわ」
「トキオ・・・そんな仲になったのね。事実かどうかトキオくんに聞いて見たらいいわ。
京香ちゃんはトキオ君の一部分の性格しか知らないでしょう?」
京香は信じられないと何度も呟いた。
「トキオ君も誘惑に負けるただの男だったってことよ」
「まさか、トキオが私を裏切るなんて」京香は首を左右に振り続けた。
「久美さん、ほんとにトキオさんだったのですか?見間違いじゃないですか?」
「確かよ」私は大きく頷い心で呟いた。だって浮気の相手は私だもの。


翌週の英語スクールが終わると、京香が話があると誘ってきた。
「どうしたの?珍しいわね。京香ちゃんから誘ってくるなんて」
京香の表情は歪み、涙ぐんでいる。
「久美さんの言う通りでした。トキオは私以外の女性と浮気していました」
「「やっぱり」
自分から告白するなんてバカ正直な男だ。
そう思いながら私は心の中で喜んだ。これで京香は私のところへ戻ってくる。
京香さえ戻ってきてくれるなら何も欲しくない。
私は京香と元の楽しい生活が再び戻ってくることを信じていた。

しかし、京香から食事の誘いもメールの返信もなかった。
悶々とした日々が続いていたある日、京香からメールが入った。
「ブルーキャットで待っています」と。
待ち合わせの店に行くと京香の隣に谷トキオがいた。
何故?どういうことなのか?
怪訝な表情で二人の向かい側の席に座る。
京香がバツの悪そうな表情で言った。
「どうしたの?」
京香は隣のトキオを見つめる。バツの悪そうなトキオの表情を睨んだ。
「私、今回は彼のこと許そうと思います。トキオ何度も謝って2度と過ちはしないって」
「何を言ってるの。男の言葉なんて信じちゃだめよ。京香ちゃん」
「ええ、でも、でも一度だけ許そうと思っています。一度だけ」
何故?何故?
「私、トキオさんのことほんとに愛してしまったみたいです」
愛している、愛している、やめて京香ちゃん、その言葉はやめて。
心が凍っていく。予期せぬ出来事がおきた。
「久美さんには色々心配や気遣いをしていただいたのでホントのことを話したかったのです」
「二度と京香を裏切ることはしません。ご迷惑、ご心配をおかけしました」
トキオが神妙に頭を下げた。
ご迷惑?ご心配?あなたが浮気した女は私なのよ。あの時寝た女は私なのよ!叫びたかった。
そして、その日から私の世界の色は止まった。


続く・・・