私は地球で楽しく遊ぶために生きている

心はいつも鳥のように大空を飛び 空に吹く風のようにどこまでも自由に

女達の恋愛事情~人妻久美の場合~4~

2016-02-28 09:18:22 | オムニバス恋愛小説
渋谷の街は24時間眠らない。様々な人々が溢れるエキサイティングな街。
私は迷路のような小さな道が交差する飲み屋の街を歩いていた。
ロングのウィッグ、赤い口紅は濡れている、縁の黒い眼鏡をかけ、
そし胸元の開いたワンピースを着ている容貌を見て
私であることを見破れる者はいないだろう。                             飲食店が並ぶ中、赤いドアが右側に見えた。
スナック「バンビ」。昭和の匂い漂うスナックのドアを開けた。
「いらっしゃいませ」薄暗い店の中からハスキーな声がした。
席はカウンターが5つ程あり、テーブル席が3つの小さなスナックだ。
髪を束ねた疲れた表情の中年の女性が不愛想な表情で私を見た。
カウンターには男が2人飲んでいる。お客は私と男2人だけだった。
男の一人は谷トキオ。もう一人の男はトキオの大学時代の友人だ。
2人の関係は既に調べてある。かなり酔っているようだ
私は、トキオの隣に座りハイボールを注文した。
しばらくして、男2人は立ち上がり勘定をして外に出た。
私もすぐに男達の後を追って出た。
通りへ出ると友人が一人でタクシーを止めて乗った。
トキオが一人になった。ラッキーな夜だ。
今夜の渋谷は私の味方だ。
トキオの体がふらついている。私は足早に歩くと
「大丈夫?」と言い、トキオの体を支えた。
うつろな表情で横を向いたトキオはかなり酔っていた。
肩に手を回しながら歩き、やがて狭い路地を曲がった。

白い建物のホテルの前で止まり、受付で入口近い部屋へ入った。
ドアを閉めたと同時に私はトキオを抱きしめ壁に体を押しつけた。
情欲は簡単にトキオの理性の垣根を飛び越えた。
乱暴に服を脱ぎ捨てパンティーを下ろしたと同時にトキオは私の中に入ってきた。
ああ...声が漏れる。私は部屋の絨毯に崩れた。トキオも同時に私の上に倒れた。
そして私の中で果てた。谷トキオとセックスすること。

谷トキオから京香を切り離すにはこの方法しかなかった。
私の中のマグマは噴火してしまったのだから。
                   
続く・・・


女達の恋愛事情~人妻久美の場合3~

2016-02-22 01:28:08 | オムニバス恋愛小説
ある日の受講の帰り、京香に声をかけた。
「美味しいイタリアンレストラン見つけたのよ。行こう」
京香は困惑した表情で
「ごめんなさい。今日は用事があって帰ります」と言う。
京香と出会って初めて断られた。
京香は申し訳なさそうな表情で通り過ぎた。
京香に拒否されたことに私を打ちのめされた。
待って!どこへ行くの?誰と会うの?叫びたい衝動を堪えた。

その日を境に京香は私の誘いを断るようになった。
英語スクールの仲間が週末に谷トキオと京香が
手を繋いで表参道を歩いていたのを偶然見たという。
「絵になっていたよ、あの二人」
恐れていたことが起きてしまった。
自分の支配の中にいたと思っていた京香の存在が消えていく。
喪失感は想像以上だった。
京香を目で追う。もう彼女に私自身は写っていない。
ある日の夜、京香がトキオに抱かれる夢をみた。
きゃあ大声で叫ぶ横で寝ていた夫が飛び起きた。
「どうしたんだ!」
京香が他の男のものになってしまう。
「やめて、やめて」
夫が興ざめした表情で見つめていた。
谷トキオへのジェラシーは日を追うごとに増していった。
トキオさえいなければ京香との幸せな時間は続いていたのに。
トキオさえいなければ。トキオさえいなければ
再び幸福な時間が訪れるのに。
いつしかトキオの存在は私の中で、
憎悪と嫉妬の対象になっていた。

続く・・・

女達の恋愛事情 ~人妻久美の場合2~

2016-02-20 00:35:15 | オムニバス恋愛小説
「最近のお前の行動だよ。家のこと何もしないじゃないか。
掃除も洗濯も料理も、最近はまともな料理作ってないだろう。
最近変わったよね」
「変わった?」
「ああ、変わったね。僕の知っている君じゃない」
「そうかしら」
「少なくとも最近、僕達の関係はおかしくなっている。その事実を把握すべきだ」
私の感情を夫に話したところで理解など到底してくれないだろう。
そう、私は変わってしまった。もう戻れない。
京香という唯一無二の存在と出会ってしまった。
生きている価値を与えてくれる存在を知ってしまった。
京香なくしてこの先の私の人生などない。
夫との暮らしがセピア色に色褪せていく。
結婚生活が猛烈なスピードで過去の人生として過ぎ去っていくのを感じていた。
確実にわかっていることは、京香への思いが日々を追うごとに強くなっていくことだ。

ある日、英語教室の帰りに京香が声をかけてきた。
「相談したいことがあるんですけど時間ありますか?」と言う。
胸騒ぎがした。不安な気持ちでいつも行く
店のドアを開けると京香は既に待っていた。
「谷トキオさんのことどう思います?」
谷トキオは商社マンだ。会社から英語を学ぶ為に受講していた。
某有名私立大学を出た、育ちの良さを感じる感じの良い好青年。
「どうしたの?谷トキオに誘われたとか?」
「実はそうなんです。今度映画観に行かないかって」
私の心臓がドクドクと音をたてはじめた。
「そう、京香ちゃんは行きたいの?トキオ君が好きなの?」
「好きとかじゃなくて彼だったら行ってもいいかな、くらいです」
「どうかな?どんな人かわからないのに会うって無防備じゃないかしら?」
精一杯に止めた言葉だった。多分、京香は行かないだろう。いや、行かないはずだ。
しかし、私の考えは甘かった。

続く・・・

女達の恋愛事情~人妻久美の場合~1

2016-02-14 01:29:40 | 小説
高揚した頬が熱を帯びている。
久美は恋をした。この幸福感はたとえようもない。
世間には、夫以外の異性に恋する人妻達は多々いるだろう。
もう一度言う。久美は恋をしてしまった。
しかしその恋は問題があった。久美の恋した相手は女だった。
そして相手は娘と同じ年の女性だった。
そこからこの恋の修羅場は始まっていたのだ。

         
田山京香を見た瞬間、言葉に表すことのできない衝撃が体内を走った。
京香と会った時から久美の本当の人生が始まったのだ。
彼女を自分だけのものにできるのなら、
今日まで生きてきて得たもの全てを捨ててもいいと思った。
しかし、哀しいことに久美には夫と娘がいた。
何よりも絶望的なのは恋した相手が女だったということだ。
初めて趣味の英会話教室で会った時
京香は、はにかむように久美の隣に座った。
何て可愛いのだろう。八重歯が一段とチャーミングさを増している。
この世には生まれながらにして愛されるタイプという人間が存在する。
京香はそのタイプだ。何かをしてあげたくなる、守ってあげたいと
周りに思わせる何かを京香は醸し出していた。
柔らかな雰囲気と独特のオーラは京香の天性のものだと思う。
京香のそばにいられることが至福の喜びとなった。
京香はセンスが良かった。
京香は笑顔が愛らしかった。清潔なお洒落をして、
少しだけセクシーで、チャーミング。京香のすべてが久美の魂を揺さぶった
京香は一瞬にして久美の人生の価値観を変えたのだ。
魅力的な京香の存在はすぐに教室の注目となった。
久美は快感だった。まるで自分の恋人が注目されている優越感を感じた。
3ヶ月過ぎた頃には、京香は久美に頼り懐き甘えていた。
教室が終わるとは居酒屋や、イタリアンレストランで食事をした。
時に映画を観て、ショッピングをする日々。
久美の生活は京香の色に染まっていった。

ある日、帰宅すると、夫は既に帰宅してリビングでテレビを観ていた。
「ただいま」
夫の清志はビール缶を片手に後ろを向いている。返事はない。
向かい側のソファに座る。「ああ疲れた」
ジロリと一瞥すると夫は無表情のまま言った。
「どういうつもりだ?」

続く・・・