私は地球で楽しく遊ぶために生きている

心はいつも鳥のように大空を飛び 空に吹く風のようにどこまでも自由に

女達の恋愛事情~ユリの場合5~

2016-05-31 00:06:43 | オムニバス恋愛小説
遠くから聞こえてくる虫の声。
扇風機の回る音、
湿った薄い布団の上で私は女になりました。
性の快楽を義父によって知ったのです。異常な関係であることは理解できました。
そんな淫靡で享楽な日々を悦ぶもう一人の私もいました。
しかし、こんな異常な生活がいつまでも続くわけありません。
1年過ぎたことでしょうか、
恐れていたことがとうとう起こりました。
ある日、母がいつもよりパートが早く終わり帰宅したのです。
玄関の鍵を開ける音に気付いた時、
私と田島は全裸で抱き合っていました。
慌てた田島はすぐにパンツを穿きました。
そこへ母がドアを開けて入ってきたのです。
母は驚いた表情で、田島と私を交互に見ています。
「お帰り早かったな。ああ、ユリを風呂に入れてあげようと思っていたんだ」
母はタオルケットを無造作に体に巻き付けている私の様子をじっと見ています。
そして一言「ユリ風邪ひくわよ」
と、静かに言ってリビングから出ていきました。
田島を見るとほっと表情をしています。
あの頃、田島に心も体もコントロールされていました。
支配されて生活していました。
田島の好きなもの、田島が喜ぶものの中に
依存して生きていたのです。
彼の思うような言葉を発し、彼の望むような
行動をしていることでしか私は生きられなかった、そうした数年間を過ごしました。
だけど、その時の私に何ができたでしょう。
10歳の私に何ができたでしょうか。
お母さんあなたは2人を見た時、何を感じたのですか?
私達の関係に疑念を持ったのですか?

続く・・・



女達の恋愛事情 ユリの場合~4~

2016-05-21 23:11:43 | オムニバス恋愛小説
その日は夕方から小雨が降っていました。母はパートで留守です。
田島はハイボール片手にスポーツ番組を機嫌よく飲んでいます。
私はいつものように田島の横に座り聞き役になっています。
「原田は上手いし、かっこいいピッチャーだな」
原田投手は女性に人気の新人のピッチャーです。
野球に興味のない私です、上手いかどうかなんてわかるはずもありません。
私はあいまいに相槌を打ちました。田島の顔色が変わりました。
「今頷いたな。てことはかっこいいと思っているんだ?」
わけのわからないことを言ってからんできました。
「俺よりあいつの方がいいのか?好きなのか?」
いつものからみかたと違います。
瞳がぎらぎらと燃えているようです。
そして淫靡な声が聞こえてきました。
「ユリは僕以外の男に興味をもってはだめだ。好きになってはだめだ」
そう言うと私の体をすっぽりと抱きしめました。
次に私の小さな唇を指で開けて自分の舌を入れてきました。
生き物のように私の口の中で動く田島の舌、
いつのまにか私の小さな陰部をまさぐる田島の手が動いています。
指が私自身を見つけました。
「ユリ・・・」
田島は喘ぎながらいつまでも舌を動かし、指は私の中に入ってきました。
そして、この行為は毎日の日課となりました。
そしてある日私はとうとう田島によって快感を知ってしまったのです。
いつものように田島の舌と指で愛撫をされていた時、
今までにない気持ちよさが体を貫いたのです。
「あああ、気持ちいい」
田島の瞳が今まで以上に妖しく光りました。
続く・・・


女達の恋愛事情~ユリの章~3

2016-05-14 17:28:55 | オムニバス恋愛小説
田島はIT関係の会社に勤め、母は近くファミリーレストランで働きました。
平凡だけれどそれほど生活に困窮しない暮らしをしていました。
あの頃は田島も良い夫、良い父親になろうと思っていたのでしょうか。
給料を全部生活費として渡してくれていた頃は、それなりに幸せでした。
田島は好物の中華料理が並ぶと上機嫌でした。
たっぷりと入れたレモンのハイボール片手に満足した表情の田島を見ていると
このままの生活がずっと続くと思っていました。
誰が悪かったのでしょうか。いえ、田島が本性を表したのです。
母の顔色が悪くなり、溜息も多くなっていました。

ある日の夜中のことです。トイレに行こうと起きると
リビングで話し声が聞こえてきます。何か言い争っているようです。
「生活費、これだけじゃ生活できません」
「何?」
「これだけじゃ生活できないんです」
「だったらパートの時間もっと増やせば」
「これ以上は出来ません。今だってユリのこと何もしてやれないのに」
「ユリのことは心配しなくていいよ。僕が面倒見るから」
母は田島の顔を怪訝な表情で見ています。
ああ、お母さん、どうか気づかないでください。
田島の私への想いがどのように変化してるのかを。
私は気づかれないようにトイレに行きそっと足音を忍ばせて
自分の布団の中に入りました。

それから数か月後に、それなりに平穏な生活を維持していた家庭は崩壊していくのです。
 母のパートの時間は日々遅くなり、夜11時頃に帰宅することが多くなりました。
この頃になって母はようやく田島の本性がわかってきたようです。
「この人は恋人には良いけど、夫としては失格だったわ」
独り言のように呟き溜息をつきながら汚れた食器を洗っていました。
田島は本性を表してきたのです。
そう外では、気前のよう善人面したプライド男だったのです。
田島の私への興味と独占欲支配欲は日を追うごとに強くなっていきました。
満足する答えを返さないとねちねちと、問いつめるのです。
田島が帰宅すると笑顔でお帰りなさい。お疲れ様と必ず言わなければなりません。
そして、おつまみとレモン入りハイボールを作り田島の座るテーブルの前に置きます。
そして傍に座り田島の聞き役になるのです。それが日常でした。
これらのことを、10歳になろうとする女の子に求めることでしょうか。
異常です。
田島の性的異常さを知るものは誰もいないでしょう。私以外は。

そろそろ、あの日の恐ろしい出来事を告白する時がきたようです。

続く・・・

女達の恋愛事情 ~ユリの章~2

2016-05-08 16:18:24 | オムニバス恋愛小説
田島俊介と初めて会ったのは6歳時、幼稚園の帰りでした。
ファミリーレストランで待ち合わせていた田島に
田島俊介さんよ。ご挨拶なさい」と母は照れたような表情で言いました。
私はにこやかに笑う田島俊介に頭を下げました。
笑った唇から黄ばんだ歯が見えました。・・・煙草を吸っているんだわ・・・
と思いながらあまりいい気分はしませんでした。
何故か歯の汚れた感じと彼の奥の本性がリンクしたのです。
その日は三人でとりとめのない話をして食事をしました。
そうしたことが何回かあり、ある日の夜母が言いました。
「田島さんと一緒になるわ」
私がどう思うかなど聞かずに、母は田島と結婚することを決めているようです。
学生結婚をして私を出産したが、男は私と母を捨てて故郷に帰ってしまったこと、
すべての事情を知って結婚してくれると言うのです。
「彼ね、すべてを受け止めるって言ってくれたの。心の広さに感激しちゃった」
少女のように頬を赤らめています。おめでたい人です。
田島は親にも親戚にも一度も会わせてくれません。
子供の私でも不信感を感じるのに母は浮かれています。
田島は裏の顔がある、闇を抱えている、直観で感じました。
田島を観察していると柔和な笑顔、柔らかい口調は
嘘なんじゃないかと感じていました。
私は二人の会話を聞いている時に時折見せる田島の歪んだ表情を
見逃しませんでした。
母に笑顔を見せながら、時折見せる裏側にある闇がその歪んだ表情にみてとれました。
ある時、食事をしている時でした。
ふいに田島と視線がぶつかりました。
田島は私の顔をじっと見つめています。
不快な感情と、説明のできない不気味さを感じたことを今でも忘れません。
悪魔のような淫靡な日々はすぐそこまで訪れていました。

続く・・・

女達の恋愛事情~ユリの章1

2016-05-02 01:40:32 | オムニバス恋愛小説
その始まりは小学1年生の初夏が幕開けでした。
私は義父田島俊介とテレビを見ていました。
バラエティ―番組で人気俳優は誰かという、街頭でインタビューをしていました。
待ち行く人呼び止めて女性レポーターが聞いています。
「福田良晴最高!」二人のOL風の若い女性が叫ぶように言っています。
福山良晴は歌手、俳優と活躍する人気アーティストで、
甘いマスクと饒舌な口調だけど愛される特異なキャラクターです。
「私も大好き」私は小さな声で言いました。
隣で酒を飲んでいた田島はぺたりとした視線を向け、
「あいつのどこがいいんだ?」と聞くのです。
「ハンサムだし、お話も上手だから」私は素直に答えました。
すると田島の表情が変化しました。
「あんな奴のどこが良いんだ。裏じゃ何をしているかわからないんだぞ。
本性だって隠しているさ」私は黙ったままテレビの画面をみていました。
早くこの会話が終わることを願っていました。
しかし、田島はねちねちと福田良晴の罵詈雑言を捲し立てるのです。
「あんな奴の何処が好きなのか?」
私は観念したように「そんなに好きじゃないよ」とかぼそい声で言った途端
田島の表情が又変化しました。
「そうだろう!そうだよ。たいした男じゃないよ」
一生会わないであろう人気芸能人なのに、まして、
彼とどうなるわけでもない相手に異常程にこだわるのです。
何故なのかわかりませんでした。
しかし、その答えは数年後わかりました。
田島にとって私は既にその頃から「おんな」だったのです。
「俺の女」だったのです。俺の女だから嫉妬したのです。

お母さん、私はあなたを恨みます。
何故田島と結婚したのですか?何故田島を愛したのですか?
シングルマザーでは生きていけないほど弱い人間だったのですか。
それとも田島に心底惚れてしまったのですか。
多分あなたの答えは後者でしょうね。
あなたはいつでも、どこに行っても田島の顔色だけを見て過ごしているから。
でも、でもあなたのいない時に田島が
私に牙を向けていることがわからなかったのですか?
いえ、もしかしたら知っていたのでは、と思います。
知っていて知らぬふりをしていたのならあなたは母親よりも
「おんな」を選択したのです・・・

続く・・・