私は地球で楽しく遊ぶために生きている

心はいつも鳥のように大空を飛び 空に吹く風のようにどこまでも自由に

尽くし過ぎる女~5~

2016-10-22 17:07:14 | オムニバス恋愛小説
ネクタイを緩めた孝志の表情は、この恋愛に辟易しているように感じた。
この恋が終わりを告げている。理沙は感じた。
「一体男って女に何を求めているの?」
「求めるもの?何だろうね。僕もわからない。初めの頃は新鮮だったし、
可愛いいし、好きだった」
「愛していた?」
「愛していたと思っていたけど・・・」
「けど、何?」
「愛している?と聞くから愛しているよと答えていたよ。
でも男は気持ちを固めるのが遅いんだよ。少なくとも僕はね、
待って欲しかった愛が固まるのを。
夏美は会うと必ず聞くんだ私を愛しているか?とね。何度も」
「愛されているか不安になるのよ」
「毎回会う度に愛しているか?と聞かれるこっちの身にもなってくれよ。
上司に叱られ、取引先に気を使い疲れているのに、恋人にまで機嫌とれないよ」
「ほんとに孝志さん疲れているね」
「うん・・・このままいくと夏美と別れるかもしれない」
孝志の中ではもう夏美は恋人ではないのだ、理沙は確信した。
「ところで、理沙さんて、浮いた話聞かないね。恋人は?」
孝志が話題を変えた。
「恋人か・・・別に欲しいと思ったことないな」
浮かない顔だった孝志が興味の表情に変わった。

続く・・・



尽くし過ぎる女~4

2016-10-16 09:18:37 | オムニバス恋愛小説
「夏美もつきあい始めた頃はあんなんじゃなかった。
無邪気で素直で、こんなに可愛い女性がいたんだって新鮮だった。
でも次第に僕のテリトリーにまで侵入してきた。
誰と友達なのか?会社の残業は何曜日が多いか、飲み友達、
学生時代の友人のことまで詮索し、いつも僕のことを優先する生活になっていった。
部屋の掃除、手料理、男がすべて喜ぶと思ったら大間違いだよ。
夏美とつきあってはっきりわかったことがあるんだ。
僕は女に色々世話されることが嫌いだってこと。
最近の夏美は世話女房だよ」
「世話女房?」
「結婚もしていなにのに、健康の為にいいからと野菜スムージーを作り、
お酒も体に悪いからと注意までし始めた。
そのうち僕は叫びそうだよ。僕は母親とつきあってるんじゃない!とね」
「彼女はあなたが好きだから、あなたの為にと思ってしている行為よ」
「それが重いんだよ。どうしてそんなに男に世話をしたがるの?
尽くしているその行為が僕にとって重いんだ」
「どうしてほしいの?」
「ほおっておいて欲しい、いつもラインの返信が遅いとか、
1週間に1回しか会えないのは寂しいとか・・・疲れてきたよ」
尽くす女と尽くされている男の心の交差点が見失っていく。
彼の疲労困憊の表情に理沙は言葉を失った。

続く・・・

尽くし過ぎる女~3~

2016-10-09 22:16:57 | オムニバス恋愛小説
理沙は迷うことなく頷いた。
夏美に対する気持ちを聞くのにいい機会だ。
二人は電車に乗り、理沙の乗換駅の横のコーヒーショップに入った。
店内は混んでいた。
二人は奥の席を確保して座った。
アイスコーヒーを喉に流し込み孝志が溜息をついた。
「ああ、疲れた」
「今日、夏美に連絡したの?」
「特に・・・用事もないし」
「私、今まで夏美と会っていたのよ」
「そうなんだ」
「なんか、興味なさそうね」
孝志は何も言わない。
「夏美、あなたの気持ちがわかならくて不安に思っているのよ」
「ああ、面倒くさいなあ。女って」
「どういう意味?夏美は恋人でしょう?どうして安心させてあげようと思わないの?」
「恋人か・・・女は恋人になったら男のすべて知りたいの?
いつもいつも連絡をしなくてはいけないの?
正直疲れてきたよ。男はひとりになりたい時があるんだよ」
「夏美への気持ち変わったの?」
「そうじゃないけど。重いんだよ」
「重い?男にとって重い女ってどういうタイプを言うの?」

続く・・・

尽くし過ぎる女~2~

2016-10-06 18:46:56 | ミステリー恋愛小説
「夏美を見ていると、彼中心の生活じゃない。それって男からみたら重いんじゃないかしら?」
「重い?どうしてそう思うの?」
「たとえば、いつも自分中心で生活している彼女だったら自分の趣味や、友人とのつきあいに
もっと目を向けてほしいと思う時があるんじゃないかな?」
夏美の表情が暗くなっていく。夏美の恋人孝志とは何度か三人で食事をしたり、居酒屋で飲んだことがある。
ハンサムではないが、いい顔をしている癖のない好青年だ。
「それ、彼に言われたばかり。理沙は男の気持ちが理解できるのね」
「私は、夏美と反対なの。恋人ができても自分の生活スタンスが変わらない。
そのことに男は苛立つみたい。どうして二人の時間をもっと優先できないんだ。て言われる。
夏美は女性からみてもとても可愛いわ。チャーミングで男が保護してあげたくなるタイプよ。
私は男に甘えられないから羨ましいわ」
「ほんと?私って魅力的?」
「勿論よ。とてもチャーミング。夏美のこと、孝志さん愛しているわよ」
夏美の憂鬱な表情が幾分晴れやかになる頃、二人は別れた。

地下鉄のホームで電車を待っている時だった。
「あれ、もしかしたら理沙さん?」
目の前に孝志が立っていた。
そして孝志は言った。
「理沙さん、時間ある?話があるんだけど」

続く・・・

尽くし過ぎる女~1~

2016-10-02 17:58:52 | オムニバス恋愛小説
「ねえ、どうして孝志はすぐにメールをくれないのかしら?」
夏美は今日も涙ぐみながら友人の理沙に恋人の悩みを打ち明けている。
「どうして私の気持ちをわかってくれないのかしら?
私はいつも友人との約束も、仕事も孝志の予定を優先しているのに全然わかってくれない。
メールだって返信は翌日とか、ひどい時にはスルーされるの。
孝志にとって私は何なの?恋人だったら、いつも気になる存在でしょう?
私が誰と遊んでいるのか、どこにいるのか気にならないのかしら?」
最近夏美の話は恋人の恋愛の悩みばかりだ。
正直理沙は辟易していた。
久し振りに会ったのだから、趣味の話や、これから何をしたいか。
未来に向かっての話をしたかった。
理沙は思う。
そんなに男っていいものなの?
恋愛って何かを学ぶことよりも楽しいもの?と。
「この前孝志の部屋に行ったらすごく汚かったから掃除してあげたの。
帰って来た孝志が喜ぶと思ったら凄い剣幕で怒ったの。
余計な事しないでくれ、ですって。
最近じゃ、料理を作ったりしてあげても喜ばなくなったの。
マンネリなのかな」
「夏美、男に尽くし過ぎなんじゃないの?」
「尽くし過ぎってどういう意味?」


続く・・・