私は地球で楽しく遊ぶために生きている

心はいつも鳥のように大空を飛び 空に吹く風のようにどこまでも自由に

善人の背中 ~最終章~

2020-02-20 18:22:34 | ミステリー恋愛小説
菅田れん子の指定された喫茶店に入るとれん子が片手を振っています。
私はれん子の座る席に向かい歩いていきます。
合図をされて席に座りました。
ウェイターにアイスコーヒーを注文して運ばれてくるまでらん子は無言です。
ウェイターが去って行くと、一口コーヒーを飲み呟きました。
「私、今週末アメリカに行くの」
「えっ!」
「しばらくアメリカで生活するつもり」
「・・・」
「驚いてるようね。無理ないわ。私も容疑者としてマークされているのに」
「私に何故そのことを言ったのですか?私が警察にあなたのことを言ったらどうなると思いますか?」
「アメリカには行けなくなるでしょうね。これはね賭けなの」
「賭けってどういうことですか?」
「あなたが黙って私を行かせてくれるか?、警察に密告するかっていう賭け」
「そんな、無実だったら賭けなんてこと」
「無実じゃないから言ったのよ」
「どういう意味ですか?」
「そう、あなたの推察通り、キオは私が殺したの」
「えっ!」
「妹をとことん惚れさせて、身も心も空っぽにして捨てた佐川キオを殺したのよ私が」
れん子の表情に罪悪感がないことに驚きました。
むしろ清々しささえ感じたのです。
「これからの私の人生はあなたの手中ってことね」
そう言い残しれん子は先に喫茶店を出ていきました。

一週間後
私は既にれんこがアメリカへ旅立った空を見上げていました。
れん子は私が警察に密告しないことを知っていたのです。
何故なららん子は  ・・・私なのですから・・・
れん子が殺していなかったら私がキオを殺めていたでしょう。
れん子と私は共犯者なのです。
ねえ、私達再生の、それぞれの旅立ちだね、私は空に向かって呟きました。


終わり