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観た映画の感想など

ディア・ピョンヤン

2006-09-03 | 新作
朝鮮総連幹部だった父を撮影したプライベートなドキュメンタリ作品。

父は戦後に済州島から日本に渡り、大阪の朝鮮総連支部で熱心に活動。1970年代に息子三人を北朝鮮に「帰国」させる。末っ子の娘一人、この作品の監督だけは日本に残る。父はもちろん熱心な金日成主義者だが、娘はそうではなく、北朝鮮にもそれを支持する父にも違和感を感じている。そんな視点でドキュメンタリが作られている。

思想が異なってしまっているとはいえ、家族は家族だ。ほとんどのシーンで父はただのオヤジとして登場する。ステテコ姿で照れながら母との恋愛を語り、娘の結婚を願う。元総連幹部としての顔を見せたのは平壌で開かれたパーティーでのスピーチのシーンだけ。彼は「私の最後の仕事は子どもたちや孫たちを立派なキムジョンイル主義者として育てることだ」と語る。監督は「逃げ出したくなった」とナレーションを入れるが、聞きようによっては「今後は家族のことだけを考えて生きる」という引退宣言とも受け取れる。

一番興味深いのは、父が息子たちを「帰国」させたことを反省するシーンだ。近い将来に「問題が解決」するだろうと考えたが、甘かった、と振り返る。「問題」とは何を意味するのか、説明はなかったが、ずっと仕送りを続けることになってしまったことや、南北統一がいまだに実現していないことをを指しているのだろうか。

監督は北朝鮮の現在の体制には批判的なようだが、その点はハッキリとは語られない。三人の兄が平壌にいる状況ではストレートに批判を語るわけにもいかないのだろう。その結果、この作品はよくできたホームビデオにすぎなくなっている。日本のメディアが報道する一般的な北朝鮮のイメージをひっくり返すほどのインパクトはない。

公式サイト:http://www.film.cheon.jp/
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評価:★★★★★

グエムル -漢江(ハンガン)の怪物-

2006-09-03 | 新作
ソウルの真ん中を流れる漢江に怪物が現れるパニック映画。

売店をいとなむカンドゥの娘、ヒョンソが怪物にさらわれる。一方、怪物と接触した者はウィルスに感染している疑いがあるとされ、カンドゥの一家は病院に隔離されてしまう。ヒョンソは死んだことにされたが、携帯電話でカンドゥに連絡を取ってきて、下水溝にいるという。カンドゥの一家は病院から脱出してヒョンソの救出へと向かう。

VFX技術で作られた怪物は素晴らしい出来。韓国の怪獣映画といえばB級の「怪獣大決戦ヤンガリー」ぐらいしかないが、それとは全くレベルが違い、ハリウッド級だった。実際にハリウッドのスタッフが担当したようだ。日本映画のように自前でチープな映像を作るよりそのほうがずっといい。

ヒョンソを演じたコ・アソンは可愛かった。下水溝で泥だらけになった顔でのシーンがほとんどだったが、それで可愛い目が一層ひきたっていた。この子がいるならペ・ドゥナが出る必要はなかったな、と思ってしまったくらいだ。

政府が何の役にも立たず、ヒョンソの叔父のナミルは火炎ビンで怪物と闘う。カンドゥは警察に追われるが、それに抗議して「パク・カンドゥを解放しろ」というプラカードを掲げた市民運動も登場する。このあたりは韓国の状況を反映していて面白い。

公式サイト:http://www.guemuru.com/
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評価:★★★★★