人生ブンダバー

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小泉信三『今の日本』(昭和24年)

2021-07-31 05:00:00 | 近現代史

今月のブログで、「満州事変とシベリア出兵」「幣原喜重郎
『外交五十年』」
「司馬遼太郎<昭和の中の魔物>」と書いた
流れで、小泉信三『今の日本』から「1.反省」を取り上げる。

これは昭和24(1949)年1月に発表されたものだ。
小泉信三は、自ら教育者として、「戦前、戦時中の40年」に反省
を行っている。


<反省>
 この頃よく、日清日露両戦役当時の日本人と、太平洋戦争における日本人と
 いうことを考える。

 日清日露の両戦争は、日本人として兎も角も手際よく始末をつけることが出
 来た。それが今度は大失敗をして、歴史に汚点をのこしてしまった。日本の
 政治家、日本の国民は馬鹿になったのであろうか。学問教育が退歩したので
 あろうか。


 日本では、日露戦争以後において大学その他学校教育を受けたものの数が激
 増し、書籍の数が激増し、参政権を持つものの数が激増した。これほど良い
 事が重なったのであるから、日本国民はよほど賢くなっていなければならな
 かった筈である。それが前古未曽有の愚かな事をした。これはどうしたこと
 だろう。


 どう考えても、凡てあのままで宜かったのだとは言われない。軍人が国を誤
 ったという。たしかにその通りである。しかしなぜ彼等に国を誤らせたか。
 その国を誤った軍人が他力によって倒されたあと、凡ては軍人が悪かったの
 だと、いかにも他人の仕業のようにいって、別に赤面もしないというところ
 に、却って日本の真の禍根があったと考えるべきではなかろうか。(*)


 日清日露戦争を回顧して私が強く感じるのは、当時わが政府と軍とによって
 国際法が忠実に守られたことである。それが強い正義感から出たのであるな
 ら、真に見上げたものであるし、よしや世界の同情を惹きたいという、利害
 の打算から出たのであったとしても、充分賢明の所為であった。


 終戦以来、この戦争には反対であったと、人は口々にいう。そうしてそれは
 嘘ではなく、たしかにその通りであったのであろう。問題は、その反対であ
 った戦争をなぜ起こさせたかである。


 明治の興隆は西洋の科学と個人尊重の思想との導入に負うものであった。然
 るに当時先に立ってこの西洋の学問と思想とを学んだものは、重に諸藩の士
 族であった。伝統的な面目と廉恥の観念と、そうして儒教によって養われた
 強い義務心とは、彼等日本の士族を道徳的背骨(モラル・バックボオン)の
 ある人間とした。


 日本在来の教えはゆるがせにされて、西洋文化もしっかりと本質的には掴む
 ことを怠った。これが日本人の犯した過ちではなかったろうか。


 明治を回顧して私は頻りにそれを思う。

 初出:『サン・ニュース』昭和24年1月5日号より抜粋

小泉信三(1888-1966)らしい分析と反省ではないかしらん。


こういうものを読むと、以前にも少しく書いたが、渡部昇一(『知
的生活の方法』は★4つの良書だが。)の「昭和史」は、満州事
変にしても南京事件(「大虐殺」とは言わないが。)にしても、
百歩譲って、justifyとまで言わないまでも、どちらかというとexcuse
に聞こえるのではないかしらん??




*ドイツは、ヒトラーが戦争末期に自殺したこともあり、戦争ま
では熱狂的にヒトラーを支持した国民は、ヒトラー(とナチス)
をスケープゴート(贖罪の山羊)にした?

余談:他の国のことはその国が決めることだが、
現在、ドイツでは、ヒトラーやナチスを礼賛することは「民衆扇
動罪」で罰せられる。

ちなみにドイツでは戦後、「共産党」も「戦う民主主義」という考え方から違
憲裁判を経て、禁止されている(→こちら)。

*現在のポーランドも同様?



小泉信三『今の日本』(小泉信三全集第15巻)


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○いよいよ陸上競技が始まった。
 走り幅跳びは49年ぶり(!)に決勝進出。--ミュンヘン五輪
 の冨沢英彦以来だ。


走り高跳びの戸邉直人(とべなおと、29)選手

走り高跳びの応援にはふさわしい名前では?--「飛べ~」。


〇男子ゴルフ2日目:バーディーラッシュで、1位は通算10アン
ダーを超えそう。優勝スコアは15アンダーか?
松山は上位に来そうだが、今の段階で誰が優勝するとは誰も断言
できない?

○フェンシング男子:エペ金メダル。歴史的快挙!


「歓喜」


「礼に始まり礼に終わる」


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