今日は堅苦しい時事放談。いささか長文でもあり、興味のない方はスルーなさ
ってください。一部にウケるかもしれませんが(笑)。
藤原正彦氏には時々ハッとさせられる。
『管見妄語 知れば知るほど』(新潮文庫、2019/8/1)p62を読
んだ時にいささかハッとした。
ここ数年、かくも我が国が集団安全保障で揺れたのは、「話せば分る」の通
じない隣国の急激な軍事的台頭を前に、官民こぞっての嘘が、いよいよ限界
に達したということだろう。「嘘つき日本」の汚名をそそぐためには、大き
く次の三つが考えられる。
なるべく早期に、(一)嘘の根源である自衛隊を廃止する、あるいは縮小し
災害救助隊にする。(二)現憲法を改正する。あるいは現憲法を時代に合う
ように修正するか、まったく新しい独自のものを作る。(三)現憲法を廃棄
して新しいものをつくらない(注:イギリスのように)。
(「週刊新潮」2015年12月3日号)
昨年秋、憲法と自衛隊について、松竹伸幸『改憲的護憲論』(集
英社新書、2017/12)を読んだ。
松竹(まつたけ)伸幸氏は、日本共産党の元中央委員・安保外交
部長(本書出版当時も同党員)。
本書は、松竹氏が日本共産党の主張も踏まえ、リスクを顧みず、
個人的な主張(日本共産党の主張の矛盾など)を述べたものだ。
その松竹氏が本年1月『シン・日本共産党宣言』(文春新書)を
出版し、日本共産党の党首公選を求めた。
今から2週間以上前だったか、友人から
「ネットなどで話題になってますが、どうなるでしょうね?」
と意見を求められたが、即座に
「どうなるもこうなるも、党の執行部としては、絶対に認めない
だろう」
と答えた。
日本共産党は「民主集中制」の組織だ(ソ連共産党がそうだった
し、現在の中国共産党も同様だ)。
これはロシアボルシェビキ--ウラジーミル・レーニン(そうい
えば、プーチンもウラジーミルだが)以来の「伝統」であって、
このやり方を放棄すれば、共産党ではなくなってしまう(党首
[あるいは執行部]が「右向け右」と決定したら、それに従わな
ければならない)。
「民主集中制」とは、簡単にいえば、党内では(各級で)意見を
言ってもいいとしても、いったん決定したら、あるいは決定前で
も、それを党外で言ってはならぬというものだ。
それを守らなければ、「分派活動」として「断罪」(除名)され
ることになる。
*7日に亡くなった政治評論家森田実氏も全学連時代、共産党から除名されてい
る。
松竹氏ははたして除名された。<民主集中制からすれば>当然だ
ろう(「民主集中制とは」→こちら)。
応援団の内田樹氏や江川紹子氏は日本共産党に「再考したほうが
いい」と言うけれど(朝日の社説もその意味では同じ類だ)。
--民主集中制自体を徹底批判するならまだしも。
民主集中制については、立花隆『日本共産党の研究』(講談社文
庫、1983)の説明が分かりやすい。
民主集中制とは、民主主義と中央集権制という水と油の要素を後者の優位の
上に組立てたものである。中央集権制のほうは、個人は組織に、下級は上級
に無条件に従うということで、いわば軍隊のようなものである。・・・・・・
この民主主義の部分は、中央集権の部分にくらべていかにも弱い。第一に厳
密なタテ割り組織であるから、党中央に反対意見を持っていても、それを自
分の所属する細胞外にまで直接アッピールすることはできない。
党内でいかなる分派を作ることも厳重に禁止されているのである。そんなこ
とをしたら、規律違反で処分されてしまう。また、党内の問題を党外に持ち
出すことも厳重に禁じられているから、事実上、党中央をのぞいては、全党
にコミュニケートすることは不可能なのだ。
だから、ある人が党中央に反対の意見を持ち、その意見を全党にアッピール
できれば、党中央の決定をくつがえすことができるかもしれないという場合
でも、その人がそうした動きをしたとたん規律違反で処分され、党から追い
出されてしまう。・・・・・・
(立花隆『日本共産党の研究(一)』講談社文庫p27-28)
ちなみに、党首選挙(党員による投票)をオープンにやっている
のは自民党であり、まったくやっていないのは、日本共産党と公
明党だ(注:公明党山口代表は無投票当選だった)。
なお、中北浩爾氏は、著書『日本共産党』(中公新書、2022)で、
「日本共産党はどこに向かうのか」として、一つの選択肢はイタ
リア共産党のような社会民主主義への移行、もう一つの選択肢は
民主的社会主義への移行をあげているが、私からすれば大いに疑
問だ。
余談だが、2月7日付産経新聞では、松竹氏の除名問題を7段組み
約1,500字で報道している。
一方、朝日新聞同日付では350字のベタ記事扱いだ。
--「日本共産党にやさしい新聞」と言われる所以かしらん?
藤原正彦『管見妄語』(2019/8/1)
松竹伸幸著 左から
1.『改憲的護憲論』(集英社新書、2017/12/20)
2.『シン・日本共産党宣言』(文春新書、2023/1/20)
立花隆『日本共産党の研究』
朝日新聞2月7日付朝刊 下2行の一部 たったこれだけ?
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