人生ブンダバー

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林健太郎『歴史と体験』

2020-06-28 05:00:00 | 読書

先日、林健太郎『歴史からの報告』のところで触れた『歴史と体験』
(文藝春秋社、人と思想シリーズ)を読む。

本書は「名著」であり、amazonでも中古本が安く手に入る。むろん
図書館にもあるだろう。

学生時代、昭和47(1972)年3月25日第1刷(文藝春秋社)を翌48年
8月23日に買い求めている。
当時、単行本は500~600円だったが、これは900円と結構高価だった。

高価といっても、かりに文庫本としても、今では目が痛くなりそう
な、小さな 8pt.×26文字、2段組びっしりで、500ページはあるから、
読みごたえは十分だ。

<目次>
1.ドイツの歴史から
2.マルクス主義をめぐって
3.歴史の理論について

4.移りゆくものの影  (注)小文字は本書の抜粋(以下同じ)
 もう五、六年前のことになるが、私は「学生委員」というものを仰せつかって
 よく時計台の下にある大学の本部に詰めていたことがある。・・・・・・(これは)
 要するに学生対策委員と言った方が正しい。これは戦後南原総長の時に出来た
 もので、学生運動と大学当局との間に立って両者を仲介する役目のものである。

 戦後学生運動というものは共産党の中でも特に極左的な「全学連」という組織
 に牛耳られるようになったから、この委員長になった教授は代々大変苦労した。
 初代の委員長は山田盛太郎教授(注:講座派のマルクス主義者)であったが、
 戦前共産党のシンパとして大学を追われ、敗戦後大学に復帰した山田教授が、
 共産党の学生たちから「反動」として悪罵を浴びる姿を我々は隔世の感をもっ
 て眺めたものだ。総長になられる前の矢内原さんがそれら学生から「お前」呼
 ばわりをされたのは有名な話である。



学生運動といえば、いささか長い余談になるが、昭和46(1971)
年の秋だったか、経済学部日吉自治会の、やや頼りない役員(?)
が二人して、我がクラスG組にオルグにやってきた。

要は「大学当局に対して、我々とともに立ち上がろう」というこ
とである。そこまではまだよかったが、彼らが「学生運動をやっ
て退学になったものはいない」と言った時に、私は「ウン?」と
なった。

私は、ただちに手を挙げて立ち上がり、極力穏やかに「それは事
実に反するのではないでしょうか。現に、東大では矢内原総長時
代に(「無届けの」というと表現がおかしいが)全学ストライキ
を計画指揮した者は退学処分になっているのではないですか」と
反論した(--この事実は、たまたま竹山道雄「学生事件の見聞
と感想」を読んで知っていた。東大の矢内原忠雄総長は学生運動
に厳しかった)。

すると彼らがグッと詰まって、ひと言も反論できず、気まずい雰
囲気となり、そのオルグは自然に終わってしまった。

その後、何週間か経って、キャンパスで彼らとすれ違った時に、
私は手を挙げて「やあ」と挨拶したら、彼らは、私の顔を見て、
ヒソヒソと話をしながら、足早に通り過ぎて行った(もしかした
ら、私は民青などと間違われた?)。


5.共産国 東と西
 私はソ連を旅行しながら、いつも「共産主義とは何ぞや」ということを考えて
 いた。その結論は平凡なことながら、「共産主義とは官僚主義ということを見
 つけたり」というに尽きる。共産主義とはマルクスの定義によれば、「能力に
 応じて働き、必要に応じて与えられる」社会だということになっているが(注:
 マルクスは共産主義社会にはほとんど言及していない?)、今のソ連がそんな
 状態にないことは彼等もよく知っているので、今の段階は共産主義に到る過渡
 的な状態だと見て、それを「社会主義」と呼んで共産主義から区別している。
 こういう言葉の区別はどうでもよいとして、・・・・・・


6.大学紛争の中から
 東大の今度の事件の始まりは本年一月末の医学部のストライキであるが、それ
 がはっきりと騒動の観を呈するようになったのは今年の三月に起った医学部本
 館の占拠からである。この不法占拠を行なった学生は三派系全学連(注:中核
 派、社学同、社青同の三派)に属する連中であった。三派系と言えば学生運動
 の最左翼であって最も暴力的な集団であるが、当時東大の十学部の学生自治会
 の中で三派がヘゲモニーを握っていたのは医学部だけであった。

( )内の「注」はいずれも私が付けたもの。


マルクス主義者が書いたものを読んでもマルクスはよく分からない
が、小泉信三や上記「2」を読むとよく分かる。

また、当時、例えば朝日新聞を読んでも共産圏の事情は分からない
が、「5」の「文化革命見聞記」や「ロシア人は馬鹿なのか?」な
どを読むと、よく理解できる。

同様に、東大全共闘側の本(あまり多くない?)を読んでも何が言
いたいのか分からないことがあるが、「6」を読むと大変よく分か
る。そんなものなのかもしれない。



林健太郎『歴史と体験 人と思想』(文藝春秋社)

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昨日、6月27日付の朝日新聞に「対中国 距離感探るEU」および
「スウェーデン 悪化する対中関係の行方は」という記事が掲載さ
れていた。現在、欧州では対中批判が高まっているという内容だ。

よく読むと、冷静に事実関係を報道したもので、朝日新聞の意見を
表明したものではない??見出しの付け方に現れている??


朝日新聞6月27日付


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