人生ブンダバー

読書と音楽を中心に綴っていきます。
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小田原少年少女合唱隊&マルベリー・チェンバークワイア定期演奏会

2009-05-20 05:08:35 | 音楽

大正12年生れの母が、昭和5年(満洲事変前年)中国から帰国して通った小学校が
小田原城内小学校である。母は小田原で一年を過ごし、東京の笄(こうがい)小学
校に転校、そこから府立第六高女に進んだ。

5月17日(日)、母ゆかりの地、小田原(市民会館大ホール)で開催された小田原
少年少女合唱隊&マルベリー・チェンバークワイアの第46回定期演奏会を初めて聴
いた。(長文ご容赦)


今回の話には、「こんなことってあるの?(アンビリーバボー!)」といえる長~
いプロローグがある。→こちら


会場の小田原市民会館 昭和37年建築


小田原少年少女合唱隊は昭和38(1963)年に結成された。その代表・指揮をしてお
られる桑原妙子先生は、同合唱隊設立当初から45年以上(!)にわたって、熱心に
指導しておられる。一口に45年というが、それは1.5世代に相当する年月である。
(10歳だった子が55歳になる!)桑原先生の同合唱団(隊)に対する指揮・指導の
長さは、G.セル/クリーヴランド管弦楽団の34年を凌駕し、ムラヴンスキー/レニ
ングラード・フィルの50年に迫らんとするものである。

開演30分前に客席に入り、プログラムをめくっていると、客席での会話が自然入っ
てくる。お子さん、お孫さんが出演している人、またご自身かってオンステした人
が多いことが分かる。この歴史ある合唱団(隊)がいかに地域に根付いているかを
示すものだろう。1階席はほぼ満員。全9ステージ!お客様の拍手も大変温かいもの
だった。


<プログラム>指揮;桑原妙子、ピアノ;桑原春子
1.日本のわらべうた クラスⅡ(中高生)
2.「7つのフランスの子供の歌」 クラスⅠ(小学生)
3.日本民謡 マルベリー・メールクワイア(男声)
4.「ノスタルジア」 マルベリー・チェンバークワイア(混声)
5.「風のとおりみち」 クラスⅠ・Ⅱ
--休憩ーー
6.北欧の合唱曲 マルベリー・クワイア(女声)
7.「魔法の歌」 マルベリー・メールクワイア(男声)
8.ヨーロッパの合唱曲 クラスⅡ
9.世界の合唱曲 マルベリー・チェンバークワイア(混声)

以下は私のつたない、独断と偏見による「感想」である。
1.日本のわらべうた クラスⅡ(中高生)
 2:02、緞帳が上がると約40人の中高生(そのうち男子は4人)が着物姿でステー
 ジに並んでいた。拍手の中、桑原妙子先生が着物姿で登場。音取りなし(!)、
 暗譜で広島地方のわらべうたが始まった。「てぃんさぐの花」、「あんたがたど
 こさ」をアタッカで歌い上げた。「あんたがたどこさ」には動きが付いていた。
 透明感ある音色で統一されている。


2.「7つのフランスの子供の歌」 クラスⅠ(小学生)
 前ステージが終わっても緞帳は下がらず、先生が下手に退場すると合唱は一人ず
 つ上手へ退場。入れ替わりに下手から約20人の小学生が順番に入ってきた。続い
 て両桑原先生が洋装で登場。先生も着物から洋装へあっと驚く早替わり!(大江
 美智子の早替わりだ! といっても分からない?)

 さて小学生の声にはほとんどfもpもクレッシェンドもない。しかし、である。
 計算もなく、無心に歌う「子供たちの声」を聴いているうちに、なぜかしらん、
 涙がポロポロと流れてきた。


3.日本民謡 マルベリー・メールクワイア(男声)
 青のハッピを着た成人男性(「昔の子供たち」(桑原先生))10人による合唱。
 桑原先生は赤のハッピ。--会場が沸く。「五木の子守唄」は大胆なデュナーミ
 ク。東京オペラシンガーズとはいわないがソリストの集まりといってもいい10人
 による強い声だった 。あとで聞いたが、「最上川舟歌」のソリストは芸大だそ
 うだ。


4.「ノスタルジア」 マルベリー・チェンバークワイア(混声)
 女声18+男声10による混声合唱。信長貴冨編曲による日本民謡を強い声、造型の
 大きな音楽で歌い上げた。このような演奏は好きだ。音取りはどなたかのハミン
 グ--ウン?絶対音感?


5.「風のとおりみち」 クラスⅠ・Ⅱ
 前ステージが退場するや小学校2年から高校3年までが、両サイドから全員着物姿
 で、谷川俊太郎作詩「かぞえうたⅠ」を歌いながら入ってきた。下手からは合
 唱と一緒に妙子先生と春子先生が同様に着物姿で入場。これも先生は早替わりで
 ある。1曲目の途中から伴奏が入ったが、合唱と音がぴったり合った。(--合
 唱を知らないとアタリマエと思ってしまうが、難しいことである。)

 三善晃作曲、現代のわらべうた(新唱歌)といったステージ。団員によるタンバ
 リンやカスタネットも登場し、次々と「色」が変化するステージとなった。また
 も予期もしなかった「感動」が押し寄せてくる。最後の輪唱風の曲では歌いなが
 ら何人かずつ退場し、曲が終わる頃にはみんないなくなった。ピアノはきちんと
 叩く、きっちりした伴奏、ブンダバーであった。

<休憩>
この日は、以前ブログで書いたが、小学校から大学までずっと一緒だった、小田原
在住のBさんとご家族(奥様、お嬢さん--お嬢さんは元合唱隊員)にお会いし
た。彼とは年賀状のやり取り、一年に一回も会わないが、会うと一瞬にして何十年
も昔に戻ってしまう。お互いに少しは大人になったのかしらん。中学来のテニスは
続けているという。
お嬢さんは、この日受付やCD販売にボランティアとして活躍されていた。この定
期演奏会はOG、OB、PTA全員で作り上げている。


6.北欧の合唱曲 マルベリー・クワイア(女声)
 スウェーデンとフィンランドの作曲家による作品。女声18人が本当に「強い声」
 を出した。とくにソプラノの左上2、3人は圧倒されるような声!趣味の問題では
 あるが、私はこのような、けっして「ハモっておしまい」ではない、一人ひとり
 が全身を使った「本物」の合唱が好きだ。女声にプロ(芸大)が何人かおられる
 らしい。


7.「魔法の歌」 マルベリー・メールクワイア(男声)
 カナダの作曲家による作品。意味なし言葉といおうか擬音語ばかり。3曲目では
 足踏みしたり背伸びがはいったり、変化のあるステージだった。ここでも「ソリ
 スト10人」による合唱を実感した。


8.ヨーロッパの合唱曲 クラスⅡ
 今度は約40人が民族衣装風のステージ衣装で登場してきた。ステージ写真を載せ
 られないのが残念である。(一番下の写真参照。)エプロンはボランティア、手
 作りだそうだ。中高生はすべて原語を何事もないかのごとく歌った。1曲目は教
 会風のポリフォニー。いい雰囲気。2曲目がラテン語の歌詩「主をほめたたえよ
 う」の繰り返しを合唱にしたもの。3曲目はチェコのルカーシュの「花の冠」。
 歌うのは難しい。終曲はいわば児童のためのコンポジション。無声音もあり、合
 唱を知っている者にとっては難しいと思うのだが、なんなく歌っていた。会場も
 いい意味で堅苦しさがなくなり、上手への退場にはお客様の温かい拍手がいつま
 でも続いた。


9.世界の合唱曲 マルベリー・チェンバークワイア(混声)
 女声18+男声10による。コンクールの課題曲と自由曲のステージ。3曲目、チェ
 コのルカーシュによる「怒りの日」では、インパクトある、圧倒されるようなフ
 ォルテが印象的。全身をフルに使い、しかしけっして力まない(!)、見事な声
 だった。フォルテもピアノもけっしてフォームが崩れない。終曲は一転柔らかく
 入って、中盤を盛り上げ、静かなppで終わった。ここでも上手への退場には温
 かい拍手が送られた。


これで終演か、と思ったら、小さな小学生たちが入ってきた。大きな拍手が起こ
る。当日の出演者が再びステージに上がり、80人による全員合唱となった。あとで
聞いたところによると、10年ほど前にカナダに演奏旅行に持っていった2曲だっ
た。手拍子あり、ウェーブあり、2曲目では全員が手をつないで、「大きな音楽」
を歌い上げた。退場には最後の一人にいたるまで盛大な拍手が続いた。私も負け
ず、一生懸命拍手をしたのはいうまでもない。(3:55終演)


総じて、随所に<変化>がある、子供と大人の合唱を聴かせていただいた。アット
ホームさと格調高さの混じった演奏会だった。合唱に関わる者は一生に一度でいい
から、だまされたと思って、本定期演奏会を聴いていただきたい。

そして小田原少年少女合唱隊は小学校から高校までの、一つの学校(一貫校。入団
オーディションはないそうだ。)で、桑原先生は校長先生だった。合唱では、結果
の点数よりもさらに大切なことがあることを教わった気がする。ここであらためて
ブンダバー!

最後に、桑原先生による曲目解説も詳しく親切でよかったことを付記しておきたい。



終演後のロビー・ストーム




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8 コメント

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ありがとうございました (マルベリー・メールクワイアのIと申します)
2009-05-22 19:46:47
先日は雨の中、遠路小田原まで足をお運びいただきに誠にありがとうございました。
先生よりブログをお教えいただき拝見させていただきました。
定期演奏会の大変丁寧なご感想とても嬉しく存じます。ステージに立つことができた感動を改めて鮮明に思い出しました。団員の一人としてとても励みになります。重ねて御礼申し上げます。
今後とも機会がありましたらよろしくお願い申し上げます。
返信する
Unknown (katsura1125)
2009-05-22 21:35:30
I様、ご丁寧に有難うございます。恐縮です。小学生から52歳までの合唱--合同ステージは
本当に楽しかったです!音楽の力はすごいですね~。最近の私はもっぱら「聴き役」ですが、
やはり歌うということを実行されている皆さんを尊敬する次第です。また聴きに伺いたいと存
じますのでよろしくお願いします。
返信する
素晴らしいご感想! (MCCの横山です)
2009-05-22 22:13:00
合唱隊のページから拝見させていただきました。
素晴らしいご感想ありがとうございます!
読んでいて本当に嬉しくて、このように感じてくださるお客様が聴いてくださって私は幸せ者だなあと思います!
私は今年の3月まで合唱隊員でした。
だから今回の定期演奏会がマルベリーとしての初ステージでした。
私も早く先輩方のように迫力のある歌が歌えるよう、頑張ります。
また、是非聴きにいらしてくださいね!

素敵な気持ち、ありがとうございます。
返信する
ブラーボッ (katsura1125)
2009-05-23 06:26:31
横山さん、早々にコメント有難うございます。先日の演奏会は、「上手」とか「下手」とかを
突き抜けた何かを感じました。私は必死に拍手したのですが、小田原市民のみなさんにとって
は「いつもの演奏」なのかしらん、周りが普通の拍手だったので、それにちょっと「不満」を
覚えたほどでした。もうちょっとで大きな声でブラボーを叫びそうでした(笑)。
また「人生ブンダバー」にお立ち寄りください。明日は「マタイ受難曲」を聴いてきます。
返信する
ありがとうございました! (MCCの小暮と申します)
2009-05-23 17:04:10
先日はご来場いただきましてありがとうございました。また、打ち上げに参加してくださったことも大変うれしく思いました。

私たち自身、毎回のステージで、ああ歌ってきて良かったなと実感しています。うまく歌いたいのはもちろんですが、私たちの好きな音楽を表現したいという気持ちで歌っています。
本当にこのような感想を持っていただける方に聞いていただけるのは幸せなことです。
このような巡りあわせに感謝したします。

これからも歌うことの喜びを表現していけたらと思います。また、何かの機会にお目にかかれること楽しみしています。
返信する
音楽の輪 (katsura1125)
2009-05-24 06:39:07
MCCの小暮様、長文コメント有難うございます。皆様のおかげをもって、5/22はgooブログで
全国3965位とランキング入り!しました。
「小田原少年少女合唱団」で検索、小暮様のブログも拝見しておりました。
地道な音楽芸術教育活動にブンダバーでございます。
桑原先生の蒔(ま)かれた種(たね)が芽が出、花が咲いているということでありましょう。
返信する
嬉しく拝読しました (桑原春子)
2009-05-24 08:49:24
先日は母がお世話になり、ありがとうございました。打ち上げでは、きちんと御挨拶申し上げず、大変失礼致しました。
また、この度は温かいお言葉をいただき、どうもありがとうございました。身内以外のお客様のご感想に接する機会はなかなかありませんので、とても嬉しく拝読しました。
音楽は勿論、読書も大好きですので、これからも時々こちらのブログ読ませていただきます。今後とも、どうぞよろしくお願い致します。すっかり遅くなりましたが、一言御礼まで。
返信する
恐縮です (katsura1125)
2009-05-24 10:35:15
春子先生、ロンドンから覗いていただいたのでしょうか?恐縮です。まさしくインターネット
ですね~。
あくまで素人の「感想」でございますので、失礼の段あればお許しください。

2008年10月16日付けの「人生ブンダバー」にも書きましたが、私のボス(上司)はロンドン帰
りで「楽しい倫敦 おいしい倫敦」というブログをやっており、2006年から2008年にかけてロ
ンドンのことを書いています。(ご参考まで。)


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