パルコ・プロデュース公演 「なにわバタフライ Ｎ．Ｖ」

(2010年3月9日 名鉄ホール 19時開演)

作・演出：三谷幸喜　出演：戸田恵子

初演から5年…ミヤコ蝶々をモチーフにした傑作一人芝居のニューバージョン。
生演奏を廃し、小道具などの仕掛けを最小限に抑える事で、演技に重点を置いたシンプルな芝居に生まれ変わっている。
上演時間も2時間15分→1時間45分と、30分も短縮。

＜ネタバレあり＞


初演で感じた、三谷流一人芝居の驚きとギミックがもたらす楽しさも恋しかったですが、再演はシンプルさが深みを際立たせていてこれまた良い。

三谷さんの悪いクセ…特に「温水夫妻」とか、「12人の優しい日本人」の再演とか、小道具や仕掛けで目先の笑いを取ろうとする姿勢に「そんな事しなくても充分面白いのに！」と苦々しく思ってたので、今回のこの変化は嬉しかった。

パンフには「シンプルにして戸田さんを楽にしてあげたかったから」と書いてありましたが（でも余計に戸田さんの仕事が増えたような）、目的は別の所にある思う。

それは、「緊張と緩和」そのもののを表現した舞台。

一幕もの4部構成。合間に戸田さんの素の部分も見られると言うもので、この息抜きの部分が「緊張と緩和」を表していると思う。落語で言うとマクラと本編みたいなものか。前回よりもっとリラックスしていて、お客さんにそして蝶々さんに向き合えた気がする。一人芝居の基本は「語り」である。再演でようやく、「語る」事が出来たんじゃないかと思う。

愛した男の妻や愛人に対峙するという緊張感のある場面の後にどっとやってくる笑い。
そして、立場を変えて繰り返されるシチュエーションに、人生は因果応報と知る。
それでも頑張って生きて、今日も板の上で多くのファンを笑わせる。
女優ってなんと哀しくて、素敵な商売なんだろうと改めて思いました。


初演の感想はこちら。
http://blog.goo.ne.jp/kato261/e/e3c06fef6fe23fe0c5f8aaa254364640