特別養護老人ホームの内部留保の行方(2) ~ 誰が改善策を提起すべきか

2013-10-28 21:19:15 | 日記
今日の日本経済新聞ネット記事では、全国22都道県で社会福祉法人が運営する特別養護老人ホームから351施設を抽出して会計検査院が調べた結果を報じており、概要は次の通りだ。

○2011年度末時点で183施設が将来の施設改修に備えた積み立てをしていない。
○183施設の1施設当たりの内部留保額は平均3億1千万円。
○検査院「改修に備え自己資金を確保する必要があり、計画的な積み立てが重要」。厚労省「適切な助言をしていきたい」。
○特養の内部留保をめぐっては、厚労省が今年5月に調査結果を公表し「過大にため込んでいる」と指摘。
○特養側は「積み立てをすると使用目的が限定されるので、積極的に検討しなかった」と説明。

先のブログ記事でも書いたが、特養の内部留保が大きく問題視される理由は、一般の株式会社やNPOが参入している介護保険事業分野で、税制面などで優遇を受けられる特別な地位を与えられた法人なのだから、相応の社会還元を怠ってはならないということである。そういう中で、内部留保の現金での貯め込みは非常に具合が悪い。

介護保険事業分野において社会福祉法人という形態による事業を、今後どのようにしていくかは、政府大の検討の場でもまだ定かではない。しかし、こうした内部留保に関する件も含めて、社会福祉法人の中で悪貨が良貨を駆逐するが如きは決して望ましいものではない。先ずは、社会福祉法人側が改善策を自発的に提起していく必要がある。そうした危機管理面での怠りが、政府内のみならず、マスコミも含めた広く一般からの社会福祉法人への風当たりを強めさせているのではないか。

政府の規制改革会議でも今後再び議論が出るだろうが、社会福祉法人と株式会社・NPOのイコールフッティングの確立が叫ばれている。このため、次の2つのことについて真剣に検討していくべきだ。

  (1)社会福祉法人について、株式会社・NPOと同等にするため、税制面などでの優遇措置を廃止する
  (2)株式会社・NPOについて、社会福祉法人と同等の税制面などでの優遇措置を新設する

「社会保障関係費」から『社会保障関係費以外の費用』への返戻

2013-10-27 20:47:56 | 日記
日本の国家予算の一般歳出に占める「社会保障関係費」の伸びは、資料〔=一般歳出に占める項目別指数推移(平成12年度~平成25年度)〕にもある通り、他の歳出項目に比して突出した伸びになっている。ムダ遣い批判に晒されて久しい「公共事業関係費」の落ち込みが最も著しいが、これも含めた『社会保障関係費以外の費用』のマイナス分(74.9)と、「社会保障関係費」のプラス分(73.7)は、概ね同じ規模になっている。

マクロで考えれば、『社会保障関係費以外の費用』から「社会保障関係費」に財政移転が行われてきたことになる。少子高齢社会が更に進展していくことは必至なので、年金や医療を中心とした社会保障サービスを現行水準に維持したままで実施していくと、「社会保障関係費」は更に上昇していく。今後ともこの傾向が続けば、「公共事業関係費」はもちろんのこと、「防衛関係費」、「文教及び科学技術振興」、「その他」の全ての歳出項目は減少していかざるを得ない。

先のブログ記事の資料2〔=一般会計の主要経費別歳出額の推移〕にも表れているが、このまま行くと「社会保障関係費」のためだけに国家予算が組まれるような時代が来るかもしれない。それが望ましいとはとても思えない。先のブログ記事の資料1〔=社会保障給付費の見通し〕にあるように、「社会保障関係費」の大宗は年金と医療であり、ここから「文教及び科学技術振興費」、「公共事業関係費」、「その他」に組み込むことができる予算の使途を見出していくようにしていくべきである。

財政健全化とは、単純な歳出削減ではなく、世代構成と成長可能性に見合った財政配分への移行でもあるはずだ。「社会保障関係費」から『社会保障関係費以外の費用』への返戻をしていくことが必要であろう。



<資料>

(出所;厚生労働省資料

生活保護法改正案 ~ 反対声明だけでなく対抗案も出すべき

2013-10-26 23:35:03 | 日記
昨日の毎日新聞ネット記事東京新聞ネット記事では、政府が今臨時国会に提出した生活保護法改正案に反対する大学教員らのグループによる反対声明に関して報じられている。東京新聞ネット記事の抜粋は次の通り。

○生活保護費の抑制策を盛り込んだ生活保護法改正案に反対する学者など研究者による共同声明の賛同者は1087人。内訳は社会保障・福祉分野が225人、教育学152人、憲法・行政法などが138人など。
○「安全網を切り縮めることは、自由で民主的な社会の基盤を掘り崩す。生活困窮者だけでなく全ての人々の生存権に対する攻撃だ」と批判。
○申請時に資産や収入に関する書類の提出を義務付けた規定に関し「申請への門前払いが横行するのは目に見えている」と指摘。
○親族らの扶養義務強化に対し「一層多くの人が迷惑をかけたくないとの理由から生活保護の利用を断念する」と懸念。

政府が今臨時国会に提出した関係法案は、生活保護法の一部を改正する法律案生活困窮者自立支援法案の二本。いずれも、先の通常国会最終日に政治的ゴタゴタの末に廃案になったものなので、今臨時国会では比較的すんなり成立するものと見込まれている。

下の資料や関係法案の要綱を読む限り、記事にあるような“生活保護費の抑制策”は、“生存権に対する攻撃だ”的な激しい批判論調が当たるようなものではなく、不正・不適正受給対策や医療扶助適正化の結果によるものになると思われる。

生活保護制度改革も含めた社会保障制度改革では、低所得者など経済弱者の権利擁護のための制度改正反対が激しい口調で叫ばれることはよくあることだ。それはそれで理解できる。だが、そうした反対声明ばかりでなく、一向に減らない不正・不適正受給への対策や増え続ける医療扶助の合理化に関する前向きな提言などの対抗案を出していくべきだ。そうすれば、説得力を持つことができるのではないか。反対コールだけだと、要望はなかなか通らない。



<資料>



(出所:厚生労働省資料)

人口漸減社会での生産人口維持策 ~ 現役・退役の年齢区分の引上げ

2013-10-25 23:41:52 | 日記

先のブログ記事に掲載した資料〔=社会保障給付費の見通し〕によれば、少なくとも2025年度までは、社会保障費は伸び続ける見込みとされている。ではその後はどうだろうかと考える時、下の資料1〔=日本の人口の推移〕と資料2〔=今後の人口構造の急速な変化〕を踏まえておく必要がある。

資料2によると、退役世代(65歳~)を支える現役世代(20~64歳)の人数比は、2010年で2.77人→2030年で1.84人→2060年で1.26人と推移する。退役世代を支える現役世代の人数が漸減していく。

資料1によると、生産年齢人口割合は2010年で63.8%→2060年で50.9%、高齢化率は2010年で23.0%→2060年で39.9%と推移する。生産人口が漸減していく中で、非生産人口が漸増していく。

これを素直に直視すると、今後の日本ではあたかも、現役世代は退役世代を支えるためだけに働いているような社会になっていくように思えてしまう。こういう状況がわかっているからこそ、消費増税によって同世代間扶助に徐々に移行していこうとなる。しかし、それだけで社会保障財源を賄えるとは思えない。

消費税率はそう易々と引き上げられるものではないし、そうすべきものでもない。消費税や保険料を含む社会保障費の歳入規模は、簡単に大きくできるものではない。となると、社会保障費の歳出規模を削っていくしかない。そのためには、資料1の「生産人口割合」の折れ線グラフを横這いに戻し、資料2の「14~64歳」と「65歳以上」に当たる部分の面積比を大きくしないための制度改正をしていくことが唯一の手法となる。

年金支給開始年齢の引上げや高齢者医療費の自己負担率の引上げとは、こういうことだ。これまでも、これからも、これが内政上最大の政治課題である。


<資料1>

(出所:社会保障制度改革国民会議資料

 

<資料2>

 

(出所:社会保障制度改革国民会議資料


将来も変わらない「子ども子育て」への冷遇 ~ 2025年度も社会保障予算の1%弱

2013-10-24 23:13:16 | 日記

先のブログ記事に掲載した資料1〔=社会保障給付費の見通し〕によると、2025年度の構成比について、「年金」・「医療」・「介護」には若干の変動があるが、「子ども子育て」と「その他」には殆ど変化がない。そのブログ記事の資料2〔=人口ピラミッドの変化(1990~2060年)〕で示されている人口構成推移を見ると、若年層の人口構成比が減っているので、財政配分が増えないことも仕方ないと思われるかもしれない。

しかし、本当にそうだろうか。政府は本年4月に発表した『待機児童解消加速化プラン』に基づき、待機児童解消を強力に進める予定だが、そういう状況下であってさえ、社会保障財政の配分があまりにも高齢者向けに偏重したまま推移する見通しを立てざるを得ないのは何故なのだろうか。

別のブログ記事に書いたが、その理由は下の資料〔=全国待機児童マップ(都道府県別)〕を見ればすぐに気付く。待機児童対策も含めた子ども子育て政策が高齢者向け社会保障政策に比して著しく冷遇されてきたのは、待機児童対策など保育政策が都市対策の一つとしてしか捉えられていないからだ。

これでは待機児童対策を進めようとの政治的機運が全国大で起こる訳がない。下の資料の白地部分にある地方の地方議員や自治体職員からは、待機児童対策は自分たちには関係ない、との声をしばしば聴く。これがこの国の一つの政治の姿でもあり、根源的には選挙制度の在り方に行き着く問題となる。

「子ども子育て」への冷遇を続けることは、社会保障制度を支える世代を支えない社会保障制度を続けることに他ならない。子どもたちは親のために生きているわけではない

 

<資料>

(出所:厚生労働省資料


交付金事業の基準 ~ 介護サービス需要予測を厳格化すべし

2013-10-23 19:12:23 | 日記

昨夜の日本経済新聞ネット記事によると、厚生労働省の交付金を使って整備された地域密着型の介護サービス施設について会計検査院が調べたところ、8割で利用率が50%を下回っていたとのこと。主な記事内容は以下の通り。


○調査対象は「小規模多機能型居宅介護施設」と「認知症対応型デイサービスセンター」。11年度は小規模多機能型で上限3千万円、認知症対応型で同1千万円が市町村を通じて事業者に交付。

○06~11年度に25都道府県326施設のうち、255施設で平均利用率が50%を下回っていた。94施設は利用率30%未満、8施設は昨年度末時点で休廃止。一度も利用がない事業所も8施設。

○交付金約43億円が有効に活用されていない。


介護サービス事業主体は、社会福祉法人、株式会社、NPOなど多種多様だ。言わば民間事業としての側面もあり、事業を展開する上で介護サービス需要の的確な観測は介護サービス事業の行方を左右する

この記事では、「利用が低調な理由」として、「主に通所の利用を想定していた小規模多機能型では、実際は宿泊を中心とした利用を望む声が多く、需要に関する事前の調査が不十分だった」と書いている。 交付金は税金を財源とする公的資金であり、それによって整備した介護サービス施設の稼働率が非常に低調であることは、いかにも具合が悪い

10兆円に達しようとする規模の介護保険財政全体から見れば、有効活用されていない交付金額が「43億円」というのは、割合としては微々たるものかもしれない。だが、今後の予算配分において徒らな削減に向けた揚げ足取りの材料になり得る金額水準でもあろう。交付決定の基準として、厳格化された需要予測を盛り込ませるべきだ。

厚労省は「再発防止に努めたい」としているが、そのために最善の手法は、交付金規模を相当圧縮できるような事業内容(例:新設促進から既設活用へ)に転向していくことだ。介護保険制度は株式会社やNPOの参入を当初から許容しているわけだが、その制度的な趣旨を勘案すれば、介護保険制度以外の制度による予算配分は極力なくしていくべきである。

先のブログ記事にも書いたが、小規模多機能型居宅介護や認知症対応型通所介護は、比較的新しい業態である一方で、全体としての費用対効果は決して高い方ではない。介護サービス事業には国や自治体から資金が自動的に降りて来るわけではない。緊縮財政の中で、各々の介護サービス事業がいかにして生き残っていくかという発想が大事だ。


統計は危機意識醸成の素 ~ 介護給付費実態調査月報(平成25年8月審査分) 

2013-10-22 11:26:01 | 日記

毎月この時期になると、『介護給付費実態調査月報』が厚生労働省より発表される。今日発表されたのは平成25年8月分で、概要は次の通りで、全文は下の資料の通りだ。

1)受給者数:介護予防サービス1,031.5千人、介護サービス3,706.2千人。
2)受給者1人当たり費用額:介護予防サービス40.5千円、介護サービス192.7 千円。

これについて、先のブログ記事で掲載した介護保険制度に係る「サービス種類別にみた受給者1人当たり費用額」と比較すると、各サービスの費用対効果の一端が見えてくる。受給者1人当たりの費用額」の上昇をいかにして抑制していくかが、介護保険財政のあるべき配分論であろう。

毎月出されるこの月報は、ただ眺めて終わるだけではいけない。統計は、持続可能性を維持していくための危機意識を醸成させるためにあると考えておくべきだ。活用していかなければ、何の意味もない。

 

<資料>

(出所:厚生労働省資料


2025年の社会保障費用見通し ~ 年金・医療・介護・子ども子育ての順は不変

2013-10-21 23:30:03 | 日記

周知のように、日本の財政において社会保障は最大の歳出規模となっている。今後もそれは変わらない見込みで、2025年度までは資料1〔=社会保障給付費の見通し〕のような見通しになっている。個別の歳出項目ごとに伸び率などは異なるが、年金・医療・介護・子ども子育て、という順序は変わらないようだ。

社会保障制度を考える上での最大の課題は、誰が社会保障制度を支えるのかということだ。それには人口構成の変遷を見通しておくべきで、今は資料2〔=人口ピラミッドの変化(1990~2060年)〕のような見通しとなっている。年金、高齢者医療、老人介護などは高齢者向け施策である。これらには若年層への所得移転を伴う場合も相当あるが、第一義的な受益者は高齢者となる。

2025年までの日本国内での公的な財源配分は、規模的には今よりも大幅に増えていくが、内容的には今と殆ど変わらない。人口の多い年齢層が最初の受益者となる部分に多く配分されるのは必然かもしれない。だが、政府は高齢者向け施策に係る公的資金が若年層にどのような形で巡り巡ってくるかを説明していく必要がある

そういう説明をしていかないと、若年層は高齢者向け施策に必要な税や保険料を納めるためだけに生きているかのような錯覚に陥ってしまう。だとしても、年金・医療への歳出を削減していくべきであることは間違いない


<資料1>

(出所:財務省資料

 

<資料2>

(出所:社会保障制度改革国民会議資料


一般会計に見る社会保障予算と他の予算の関係 ~ 右肩上がりは社会保障予算だけ

2013-10-20 17:47:12 | 日記

社会保障と財政の関係を考える時、国家予算全体に占める社会保障予算の割合や社会保障予算の配分先を見ておく必要がある。社会保障予算の配分先は資料1〔=国民生活を生涯にわたって支える社会保障制度〕、そのマクロ推移は資料2〔=一般会計の主要経費別歳出額の推移〕の通りである。

資料2を見ると、社会保障関係費の右肩上がり傾向は突出しており、他は横這いか漸減となっている。「その他歳出」には、エネルギーや食料安定供給などに係る予算がある。来年4月の消費増税(税率5%→8%)、再来年10月の消費増税(税率8%→10%)は、社会保障関係費の増分を賄うものとされており、他の予算に振り分けられることにはなっていない。

消費増税では賄い切れない部分も多い。それについては、他の予算からの財源の転用か国債の発行に依る方法がある。だが、重要な既得権益ばかりであり、社会保障のために削る既得権益は政治的にはもうこれ以上は無いと思われる。そうなると、社会保障関係費を削らざるを得なくなる。社会保障関係費が増えるからと言って、増税や保険料引上げがそう易々とできるわけではない

社会保障関係の内訳は資料1のようなものだが、このうち年金が5割弱、医療が3割強というのが近年の推移だ。他の社会保障予算項目は、金額的には年金・医療には到底及ばない。社会保障財政のみならず国家財政全体の持続可能性と健全性を慮れば、年金・医療に係る歳出抑制が政治の最大の役割であることは論を待たない。

 

<資料1>

(出所:社会保障制度改革国民会議資料

 

<資料2>

(出所:財務省資料


介護保険制度:費用負担の公平化(2) ~ 『ナショナルミニマム』は財政事情で変えるべし

2013-10-19 15:33:30 | 日記

現行の介護保険制度では、食費・居住費は給付対象外となっている。介護保険3施設やショートステイに限っては、住民税非課税世帯などに対しては当面、『補足給付』が措置されている。

先のブログ記事では、介護保険3施設のうち特別養護老人ホームに関して、入所者の所得階層を取り上げた。この中で、「特養入居者の約80%が低所得層ということは、自己負担の拡大を求める素地がないに等しい」と述べた。

補足給付の現状は、資料1〔=特定入所者介護サービス費用(補足給付)の概要〕と資料2〔=補足給付の(低所得者の食費・居住費の負担軽減)仕組み〕の通りである。自己負担の拡大を求めるような状況にないことは、これを見てもよくわかる。

社会保障制度改革の手法の一つは、自己負担を拡大することができる人には自己負担を拡大してもらう、ということである。だが一方で、こうした応能負担原則を低所得層に適用することはに相当な困難がある。だからと言って。こうした応能負担原則をあまりにも進めていくと、低所得層以外の人にとっては不公平感や悪平等感が醸成させていく可能性が高い。現に、そのような批判を受けている社会保障制度は個別に見れば数多ある。行き過ぎた応能負担は社会保障制度への信頼性を削いでしまう懸念が大きい。

医療給付や介護給付は社会保障制度の一環なので、必要最小限の範囲で何らかの措置を講ずるのは当然のことだ。しかし、それに関して財政需要が発生し、かつ、そのための財政が逼迫しているとなると、いつまでも従前のようにはいかない。『必要最小限の範囲』を更にもっと小さくしていく必要がある

『必要最小限の範囲』、即ち『ナショナルミニマム』は、財政事情によって変化させていくべきものだ。負担能力のある人への自己負担拡大だけではなく、『ナショナルミニマム』としての給付を減らしていくことを真剣に考えていかなければならない。これは介護保険制度もさることながら、医療保険制度と年金制度で先行的に断行していくべきことだ。


<資料1>

(出所:厚生労働省)


<資料2>

(出所:厚生労働省)


介護保険制度:費用負担の公平化(1) ~ 所得階層と費用対効果は逆相関

2013-10-18 13:13:35 | 日記

介護・医療などの社会保障制度には、被保険者の所得段階によって負担面での差異がある。高い所得段階の被保険者からは相対的に高い負担を求める傾向にある。法的な制度の在り方としてはごくごく通常の姿である。 介護保険制度については、資料1のような区分となっており、更に各段階ごとの割合は資料2のようになっている。

この所得段階ごとにどのような介護保険サービスを受けているのかは、資料3の通りだ。先のブログ記事で掲載した資料〔=サービス種類別にみた受給者1人当たり費用額及び費用額累計〕によれば、介護サービスの費用対効果は「訪問介護 > 通所介護 ≫ 介護老人福祉施設 > 介護老人保健施設」となっている。

これらの資料からわかることは、現状では、所得階層の低い被保険者が一人当たり費用額の高い介護保険サービスを受けている割合がとても高いということだ。即ち、介護保険制度の運用面では、所得階層と費用対効果は逆相関関係にある。これはどう考えても『費用負担の公平化』に逆行するものであり、今後是正の方向に誘導していくような介護保険制度改革が緊要だ。

 

<資料1:第一号被保険者の所得段階区分>

(出所:厚生労働白書)

 

<資料2>

(出所:厚生労働省)

 

<資料3>

(出所:厚生労働省)