アベノミクスの効能 ~ マクロ雇用情勢は引き続き改善傾向

2014-03-31 15:00:21 | 日記
総務省が今月28日に発表した「労働力調査(基本集計) 平成26年(2014年)2月分」によると、先月の就業者数や雇用者数、完全失業率などについては次の通り。

 ・就業者数6283万人(前年同月比41万人増)
 ・雇用者数5544万人(前年同月比29万人増)
 ・完全失業者数232万人(前年同月比45万人減)
 ・完全失業率3.6%(前月比0.1ポイント減)

2012年からの毎月の推移を見ると、下の資料のようになっている。先のブログ記事などでも書いたように、賃金水準という点では未だアベノミクスの効能が現れているとは言えないが、マクロ雇用情勢という視点では安倍政権になってから好い傾向は着実に続いている。個別のミクロ雇用情勢はそれぞれ異なり、『雇用情勢格差』は必然である。

日に日に、アベノミクスへの評価には厳しいものが出されてきている。経済指標や賃金指標に改善の兆しが見られないのは、政権にとってではなく、国民経済社会にとって痛い。どれに注目するかで評価は変わってくるが、一般的に最も景気動向を体感するのは、実質GDPや賃金の水準であろう。我々国民が特に肌で感じるのは賃金に違いない。そこに辿り着くまでには、今の傾向が続くにしても、まだ相当の時間を要するであろう。



<資料>

(出所:総務省統計局資料

厚生労働省は『潜在的待機児童数』を試算せよ ~ 認可保育所入所の待機児童数は44,118人(H25年10月)

2014-03-30 22:26:04 | 日記
一昨日の厚生労働省発表によると、認可保育所への入所を希望しても入れなかった待機児童が、昨年10月1日時点で全国に44,118人であったとのこと。これに関しては、日本経済新聞ネット記事産経新聞ネット記事などで報じられている。

ここで言う待機児童とは、上記の通り、認可保育所に入所希望を出しておきながら入所できなかった児童のこと。別の寄稿などで何回か書いてきたが、認可保育所への入所申込みをしているかどうかを問わずに私が以前試算した『潜在的待機児童』は、最大で198万世帯・364万人となる。これは私の試算に過ぎないので、厚労省は『潜在的待機児童』の数を試算ないし把握しておくべきだ。

待機児童解消が少子化対策や労働力確保策の点で喫緊の課題であることは論を待たない。政策ターゲットとなるべき真の待機児童数が“認可保育所の入所申込み者”限られるのは、もはや不合理である。下の資料1にあるように、毎年4月と10月の待機児童数ですら大きな差異がある。4月集計と10月集計に違いがあるのは、年度途中での認可保育所申込みが4月の新年度入所で大幅に減るといった理由による。

下の資料2からわかることだが、上記の日経ネット記事にもあるように、認可保育所の待機児童数は3歳未満が約9割を占めている。これは、年齢が低い児童ほど保育サービス供給量が少ないということだ。自分の周囲を見ても言えることだが、児童の年齢で大差がある保育サービス政策では少子化対策にも労働力確保策にもならない。

社会保障分野において高齢者対策分野から子ども子育て分野への予算配分を手厚くしていくとともに、実際の保育ニーズを重々踏まえた保育サービス供給体制を構築していくべきだ。消費増税とは、高齢世代のためではなく、現役若年世代のためのものであると改めて認識していく必要がある。



<資料1>

(出所:厚生労働省資料


<資料2>

(出所:厚生労働省資料

“悪しきインフレ傾向”はまだ継続中 ~ 消費者物価と賃金水準の動向

2014-03-29 00:10:53 | 日記
昨日の総務省統計局の発表によると、今年2月の全国消費者物価指数(CPI)は次の通りとなった。依然として、エネルギー価格の上昇が消費者物価の全体を押し上げている主因の一つであることがわかる。


≪概況≫
(1) 総合指数は2010年(平成22年)を100として100.7 前月と同水準 前年同月比1.5%上昇
(2) 生鮮食品を除く総合指数は100.5 前月比0.1%上昇 前年同月比1.3%上昇
(3) 食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数は98.3 前月比0.1%上昇 前年同月比0.8%上昇


この話題に関して昨日付けの報道を見てみると、産経新聞ネット記事や毎日新聞夕刊では、エネルギー価格上昇の要因について「原発の稼働停止や円安による輸入燃料の高騰」を挙げている。他方で、日本経済新聞ネット記事などでは、『電気代が9.3%上がり、エネルギー全体では5.8%上昇(略)エネルギー価格の上昇が物価全体を押し上げる構図が続いた』と報じてはいるものの、それが原発の稼働停止によるものとは書いていない。

このブログなどで何回も書いてきたことだが、政府がCPI(消費者物価指数)を政策目的指標として掲げ続けているのは、もはや不合理極まりなくなっている。必要なのはインフレではなく、実質GDPの拡大である。インフレ傾向が必ずしも国民生活に豊かさを実感させるわけではない。今年の春闘は一部大企業のベア実施をもたらしたが、下の資料〔=月間現金給与額(平成26年1月)〕と合わせて考えれば賃金への反映という点での労働者への恩恵はまだまだ現れているとは言えない。

現在続いている“悪しきインフレ傾向”を止めるために必要な手段のうち、政府が直ちにできることは原子力発電の再開を容認することだ。それにより、電力コストは確実に低減され、電気代も下がる見込みが立つ。今は“原子力発電停止インフレ”という色彩が濃い。こうした政府の権能範囲での経済好転策は早期に実施すべきである。脱却すべきはデフレではなく、“悪しきインフレ傾向”なのだ。



<資料:月間現金給与額(平成26年1月)>

(出所:厚生労働省資料

アベノミクスのプラス効能 ~ マクロ雇用情勢は改善傾向を継続中

2014-03-28 16:31:27 | 日記
今日、総務省が発表した「労働力調査(基本集計) 平成26年(2014年)2月分」によると、先月の就業者数や雇用者数、完全失業率などについては次のようなもの。

 ・就業者数6238万人(前年同月比41万人増)
 ・雇用者数5544万人(前年同月比29万人増)
 ・完全失業者数232万人(前年同月比45万人減)
 ・完全失業率3.6%(前月比0.1ポイント減)

2012年からの毎月の推移を見ると、下の資料の通り。先のブログ記事で書いたように、賃金水準という点では未だアベノミクスの効能が現れているとは言えないが、マクロ雇用情勢という視点では安倍政権になってから確実に好転しつつある。個別のミクロ雇用情勢はそれぞれ異なるし、『雇用情勢格差』は必然のこと。

アベノミクスへの評価には厳しいものが多々出されているが、どれに注目するかで評価は異なるものだ。否定や批判ばかりしていると、効能を見逃してしまい、実態を誤認してしまう。もっとも、一般的に最も景気動向を体感するのは、実質GDPや賃金の水準。我々国民が特に肌で感じるのは賃金水準に違いない。政府からの強い賃上げ要請もあってか、今年の春闘は一部の大企業のベア実施をもたらした。これが中堅・中小企業などに拡がっていくには、今の傾向が続いたとしても、まだ少々時間を要するだろう。



<資料>

(出所:総務省統計局資料

特養待機者数52.2万人 ~ 『待機老人 ≠ 特養入所申込者数』、『待機老人=介護サービス待ち高齢者』

2014-03-25 20:46:17 | 日記
今日のNHKニュースなどで既報の通り、今日の厚生労働省の発表によると、特別養護老人ホームへの入所申込者は約52.2万人で、このうち入所の必要性が高い要介護4及び5で在宅の入所申込者は約8.6万人とのこと。


<報道要旨>
・5年前の前回調査より10万人増。このうち介護の必要性が高いと判定されているものの施設に入れないため自宅で暮らしている高齢者は5年前より1万9000人増。
・特養定員は5年前より7万5000人増、待機者はこれを上回るペースで増。
・厚労省は、施設を効率的に運用するため来年4月から入所基準を厳しくし、原則要介護3以上に限定する方針。



先のブログ記事では、特養入所申込者であって入所できない『特養待機老人』の数は、平成21年12月集計では約42.1万人であった(資料2)ことを掲載した。今回平成26年3月集計では、それが約52.2万人に増えた(資料1)。厚労省資料では、特養申込者のうち在宅の方の数を約8.6万人としているが、範囲を狭めたものを強調したところで待機者総数は変わらない。

『待機児童』の数え方にも通じることだが、いわゆる『待機老人』の数え方にも問題がある。いわゆる『待機老人』という言葉があるが、老人ホームへの入居を希望しているが満杯なので部屋が空くのを待っているお年寄りたち、というのが一般に思われていることではなかろうか。特養の入所申込者数の全員が特養に入所できたとしても、介護サービスを必要としている高齢者の全員に介護サービスが行き渡るわけではない。特養の入所申込者のうち特養側からみて「真に入所が必要な人」は入所申込者全体の1割強という調査結果もある。

今回の厚労省調査の結果は、『特養の待機老人』である。しかし、真の意味での『介護サービス待ち高齢者』は特養など施設系か、デイサービスや訪問介護など在宅系かを問うべきではない。介護保険行財政上は、『特養の待機老人』ではなく、『介護サービス待ち高齢者』という概念の設定が必要だ。

そうしなければ、介護保険財政の最も効率的な配分で実施する介護保険事業計画を立てられる道理がない。厚労省は、『潜在的な待機老人』の全体像を把握するための試算を行っていくべきだ。



<資料1>

(出所:厚生労働省資料


<資料2>

(出所:厚生労働省資料

テレ朝“報道ステーション”に対する環境省の見解 ~ 『最近の甲状腺検査をめぐる報道について』

2014-03-24 15:58:10 | 日記
環境省が、今月11日に放映されたテレビ朝日「報道ステーション」に関して、福島県・県民健康管理調査のうち甲状腺検査について事実関係に誤解を生ずるおそれもあるとして見解を示したので、下記に貼付しておきます。

最近の甲状腺検査をめぐる報道について



日本の人口(2014/3/1現在 1.27億人) ~ 総数は減少、65歳以上は増加、64歳以下は減少

2014-03-23 16:54:40 | 日記
毎月20日、総務省統計局が発表している人口推計。平成26年3月報の概要は次の通り。


【平成26年3月1日現在(概算値)】
・総人口1億2712万人 前年同月比▲22万人(▲0.17%)

【平成25年10月1日現在(確定値)】
・総人口1億2729万8千人 前年同月比▲ 21万7千人(▲0.17%)
 ・0~14歳人口1639万人 前年同月比▲ 15万7千人(▲0.95%)
 ・15~64歳人口7901万人 前年同月比▲116万5千人(▲1.45%)
 ・65歳以上人口3189万8千人 前年同月比110万5千人(3.59%)
・日本人人口1億2570万4千人 前年同月比▲25万3千人(▲0.20%)


これだけでも様々なことが読み取れる。総人口に関しては下の資料1の通りで、年齢層別で見ると、若年層が減り、高年層が増えている。少子高齢化が確実に進行しているのだ。こうした実態が、労働力確保のための移民政策を着想させていく。

先のブログ記事でも掲げたが、総人口推移は下の資料2のようになる。支える側と支えられる側の面積比が逆転しているので、それを踏まえた社会保障制度に変更していく必要がある。今からでも遅くはない、などと悠長なことを言っている場合ではない。実は遅きに失している部分もある。

若い親が幼子を育てる時代は永久に続くだろうが、年老いた親を働き盛りの子どもが支える時代は終わらせなければならなくなるだろう。現行の社会保障制度が行き詰ろうとしているのは、現行制度の発案時の人口ピラミッドの形が変形してきているからだ。



<資料1>

(出所:総務省統計局資料


<資料2>

(出所:国立社会保障・人口問題研究所HP

今回も過去最大を更新する指標 ~ 介護給付費実態調査月報(平成26年1月審査分) 

2014-03-22 17:18:45 | 日記
毎月のこの時期は、『介護給付費実態調査月報』が厚生労働省より発表される。一昨日発表されたのは平成26年1月分であり、概要は次の通りで、最近の推移は下の資料の通り。


1)受給者数:介護予防サービス1,057.0千人、介護サービス3,761.2千人
2)受給者1人当たり費用額:介護予防サービス40.4千円、介護サービス188.6千円


先のブログ記事で掲載した介護保険制度に係る「サービス種類別にみた受給者1人当たり費用額」と比較すると、各サービスの費用対効果の一端が垣間見えてくる。「受給者1人当たりの費用額」の上昇をいかにして抑制又は削減していくかが、今後ますます追求すべき介護保険財政の配分論となっていくはずだ。

毎月出されるこの月報は、ただ眺めているだけではいけない。こうした定期的な統計は、将来の経済社会の持続可能性を維持・向上させていくための危機意識を醸成させるためにあると考えておく必要がある。これを基に常に改善策を考えていかなければ意味はない。この月報に載る数値は、今後当面は過去最高水準となり続けるであろう。



<資料>

(出所・厚生労働省資料

『要介護度が高くなるほど費用が高くなる』のか?『要介護度が高くなるほど費用を高くかけている』のか?

2014-03-21 00:03:01 | 日記
以下は各ポータルサイトの記事URLです。

Gadgetwear
http://www.gadgetwear.net/2014/03/blog-post_816.html

livedoorNEWS
http://news.livedoor.com/article/detail/8645470/

夕刊アメーバニュース
http://yukan-news.ameba.jp/20140319-12/

BIGLOBEニュース
http://news.biglobe.ne.jp/economy/0319/gdw_140319_9610832533.html

不幸な事件後に出された『ベビーシッターなどを利用するときの留意点』

2014-03-19 21:08:07 | 日記
一昨日、ベビーシッターを名乗る男性の自宅から男児が遺体で発見されるという痛ましい事件が発生したことを受けて、厚生労働省は『ベビーシッターなどを利用するときの留意点』と題する文書を発表した。これで一応、国民に呼び掛けたことになる。厚労省の初期動作としては、これが精一杯なのかもしれない。

この事件は今後詳細に解明されていくことになろう。この事件に限らず、育児・保育を巡る不幸な事故や事件も頻発しているように思う。今回の事件はマスコミで大きく取り上げられたことからここまでに至っているのだと思われる。その点では、多くの事案の中で今回の事件が政治・行政を色めき立たせているのは、マスコミの効果や影響であろう。

マスコミで取り上げられなかった事案は、政治・行政にどのような衝撃を与えるだろうか。今回の事件を契機として今後必要な政策転換がなされることを祈念するばかりだが、話題に上っていない他の多くの事案の一つ一つにも向き合えるような対策を少しでも打ち出していくべきだ。日本の政治・行政は、予算配分や制度環境の観点からは、高齢者層には手厚いが、若年層には手薄で、子どもにはとても冷たい。非常に大きな『政策格差』がある。

とっくに遅きに失しているわけだが、その『政策格差』を是正をしていくことが第一歩となる。これは、前世紀からわかり切っていたことだが、政治・行政の動きは鈍過ぎる。来月の消費増税(5%→8%)はそのための契機となるはずだったのだが、そうはなっていない。来年秋の消費増税(8%→10%)まで待つしかないのだろうか。それでは更に遅きに失することになる。

尚、上記の文書の全文は以下の通り。






平成25年中における自殺の状況 ~ 自殺者数27,283人(前年比575人減)

2014-03-18 22:37:47 | 日記
去る3月13日に内閣府が発表した「平成25年中における自殺の状況」によると、平成25年の自殺者数は27,283人・前年比575人減であった。最近まで14年連続で年間3万人を超える自殺者が出ていた時期があったが、ここ2年は3万人を下回っている。それでも、27,283人というのは看過し得ない。

細かな指標のうち主なものについて、下に資料1〔=自殺者数の年次推移〕、資料2〔=年齢階級別自殺者数の年次推移〕、資料3〔=職業別自殺者数の年次推移〕、資料4〔=自殺の原因・動機別自殺者数の年次推移〕、資料5〔=東日本大震災に関連する自殺者数の年次推移〕として掲示しておく。

これらを見る限り、1980年代のプラザ合意・円高不況前後、1990年代のバブル経済崩壊前後や金融危機、2000年代のリーマンショックなど景気動向との連関性は全くないとは言い切れないが、強い因果関係を見出すこともできない。まして、1990年代と2010年代の政権交代は何ら関係ないようだ。マクロの視点からは、それぞれの自殺原因に対して、対症療法を随時行っていくしかないのかもしれない。少なくとも日本では、『自殺防止の特効薬』はまだ発見されていない。



<資料1>

(出所:内閣府資料


<資料2>

(出所:内閣府資料


<資料3>

(出所:内閣府資料


<資料4>

(出所:内閣府資料


<資料5>

(出所:内閣府資料


『老人福祉業界』の市況 ~ 帝国データバンク調査より

2014-03-17 23:27:29 | 日記
去る2月10日の帝国データバンク発表によると、「企業再生支援機構や中小企業金融円滑化法によって、一定の倒産抑制効果が現れていた医療機関、老人福祉業界だが、2012年以降増加に転じる動きが高まりつつある」とのこと。詳細は、帝国データバンク資料を参照されたい。

『老人福祉業界』という言葉はあまり目にしないのだが、福祉サービスと言えども産業の一つであるということだ。上記の資料によると、老人福祉業界に関しては、次のような動向となっている。


・老人福祉事業者の倒産は前年比58.6%増46件、00年以降最多。
・00年介護保険法施行、介護関連事業に参入する企業が相次ぎ競争激化。
・06年改正介護保険法施行、介護報酬引下げ、施設サービス居住費用・食費が保険給付対象から除外。
・近年さらに競争激化による経営悪化、低賃金に伴う人手不足や労働環境悪化など雇用問題の深刻化。

介護サービス産業は、介護保険という公的資金を動力源の大宗としている。当然、介護保険財政の動向に左右される。今後当面は介護需要が増加していくことが見込まれる中では、費用対効果の高い介護保険事業となるような制度改革が必須となる。これは、介護産業界側の努力だけではどうしようもない。介護行財政側が主体的に制度改革を進めていくしかない。