高齢者医療費の抑制(2) ~ 相互扶助し合う『同世代』の範囲をどう設定するか

2013-10-02 12:11:11 | 日記
医療保険制度は、複雑な経緯があるため体系も複雑なもので、概要は資料1〔=医療保険制度の体系〕、詳細は資料2〔=各保険者の比較〕の通りである。これら全てを一つの制度に統廃合することが最もすっきりしていて理想的な感じもするが、政治的には不可能に近い。

そういう発想は以前からあるが、検討するにしても最終的には徒労に終わるだろう。眼前の課題は医療保険財政の健全化であり、端的には医療費削減そのものである。では、どのような削減方法であれば納得性が高くなりそうだろうか。

子どもは親に育ててもらったのだから、親が年老いた時に子どもが恩返しをするのは当然だ。一般的には、それはごく自然な感情であろう。それを医療の視点から数字で示すと、現状では資料2のようなことになっている。「加入者一人当たり医療費」、「加入者一人当たり平均所得」、「加入者一人当たり保険料」などを見ると一目瞭然である。

少子化時代に入り、高齢世代における『同世代間の相互扶助』はますます重要になっているのは周知のことだ。次に問題になるのは、医療保険の利用頻度が高い人とそうでない人との関係をどう考えるかであり、更に、相互扶助し合うべき『同世代』の範囲をどう設定するかである。

医療保険の利用頻度の差は、患者負担率をどう設定するかで概ねの納得感を得られると思われる。現行の患者負担率については、政治的に大きな問題にはなっていないようだが、それこそが危機である。患者負担率は引き上げざるを得ない

相互扶助し合うべき『同世代』の範囲は、医療保険財政の持続可能性を追求する上で極めて重要なことだ。若年世代か高齢世代かを年齢によって区分しようとする場合、若年世代の負担抑制は当面の国是である。そうなると高齢世代の起点を何歳にするかであり、それを突き詰めていくと後期高齢者医療に対する補填率の高い主体を何歳まで拡げるかということと同義となる。

政治的関心に係る世代別構造を慮ると、高齢世代の起点を50歳代後半に設定すれば、改革の機運が高まる可能性がある。人生の後半30年間にいる相当広い高齢世代間争議を起こすことが緊要だ。そうでないと、若年層の持続可能性を高めようがない。



<資料1>

(出所:厚生労働省)


<資料2>

(出所:厚生労働省)