社会保障制度改革プログラム法案骨子において掲げられている介護分野の改革案に関して、
本日の一部報道によると、介護サービス利用に係る自己負担の割合(現行1割)を、年収三百数十万円を超える夫婦世帯や年収250万~300万円程度の単身世帯については2割へ引き上げる方向で検討するとのこと。
介護保険制度の仕組みは資料1の通りであり、この中で「1割負担」が『2割負担』に、「費用の9割分の支払い」が『費用の8割分の支払い』にそれぞれ変更されることになる。では、介護サービス利用者にとっては、どの程度の負担増になるのだろうか。
介護サービスの種類によらない受給者1人当たりの費用額(資料2)で見ると、平成25年4月審査分で、総額157.6千円のうち自己負担分は15.76千円→31.52千円(約1万6千円の負担増)となる。
これをもう少し細かく、介護サービス種類別の受給者1人当たりの費用額(資料3)で見ると、平成25年4月審査分で、次のような代表例について、
・訪問介護では、69.6千円のうち自己負担分は6.96千円→13.92千円(約7千円の負担増)
・通所介護では、88.8千円のうち自己負担分は8.88千円→17.76千円(約9千円の負担増)
・介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)では、279.6千円のうち自己負担分は27.96千円→55.92千円(約2万8千円の負担増)
・介護老人保健施設では、295.3千円のうち自己負担分は29.53千円→59.06千円(約2万9千円の負担増)
となる。
上記の記事によると、この負担増の対象者数は数十万人とのことだが、介護サービス利用者数は平成24年度の年間実受給者数で543万人となっている。これでは、自己負担増となる介護サービス利用者の比率は1割にも満たないことになる。介護保険財政改革の視点からは、
負担増対象者の範囲を広げるべく、負担増率の累進化などを勘案しながら所得水準を引き下げていくことも検討すべきである。
合わせて、
介護サービス事業者の経営効率化努力を促すような制度改正又は制度運用改善をすべきであることは言うまでもない。
<資料1:介護保険制度の仕組み>
(出所:厚生労働省)
<資料2:受給者1人当たり費用額の年次推移 >
(出所:厚生労働省)
<資料3:サービス種類別にみた受給者1人当たり費用額及び費用額累計>
(出所:厚生労働省)