“身を切る改革”の費用対効果 〜 消費増税5.2兆円と議員歳費3割削減(▲45億円)

2014-11-29 21:35:27 | 日記
来月14日の衆院選に向けた各党の公約が出揃った。主要政党の公約(自由民主党公明党民主党次世代の党維新の党)は、それぞれ適宜参照されたい。

今回の衆院選の争点の一丁目一番地は、社会保障と税の一体改革における消費増税(8%→10%)の延期に関してである。消費増税と言うと必ず出てくるのが、議員歳費・議員定数の削減。これは、“国民負担増をお願いする以上、政治・行政が自ら身を切るべきだ”との思想によるのだろう。その是非はさておき、議員に係る経費削減という趣旨で考えるとして、議員歳費の削減額を試算しておきたい。

平成26年度予算ベースで考えると、衆議院議員歳費の総額は100.49億円(資料1)、参議院議員歳費の総額は50.76億円(資料2)、合計151.25億円。ここから1〜3割を削減するとして、削減額は15〜45億円にしかならない。消費増税(8%→10%)による税収見込額は5.2兆円。仮に、消費増税の説得材料として国会議員歳費を3割削減するにしても、「45億円減らすので、5.2兆円増やさせてくれ」という相談事となる。これでは取引にならない。

では、公務員人件費ではどうだろうか。これは、国会議員歳費とは桁が大きく違う大きな話となる。国家公務員人件費の総額は5.1兆円、地方公務員人件費の総額は20.3兆円、合計25.4兆円(資料3)。ここから1〜2割を削減するとして、削減額は2.5〜5.1兆円に上る。これなら消費増税との取引になる。ただ、次の次の増税には使えない。公務員人件費削減は、公務員嫌いの有権者やマスコミにとって一瞬の溜飲を下げる効果はあるかもしれない。だが、社会保障財源を確保する手法としての持続性はない。

社会保障財源を確保する持続性のある手法とは、社会保障費の削減しかないだろう。他に妙案は思い付かない。



<資料1>


(出所:衆議院ホームページ


<資料2>

(出所:参議院ホームページ


<資料3>

(出所:財務省ホームページ

ガソリン価格157~158円/L (19週連続値下げ) 

2014-11-28 21:09:00 | 日記
経済産業省が昨日発表したところによると、今月25日時点のガソリンの店頭現金小売価格は、レギュラーガソリンで1リットル当たり158.3円で、前週の159.1円と比べ▲0.8円値下がり、19週連続の値下げとのこと。直近1ヶ月の動きは、資料1の通り。

総務省統計局が今日発表した「自動車ガソリンの東京都区部小売価格」は、下の資料2の通り。概ねの傾向として、ここ5年間はガソリン価格は上昇基調で推移してきていることがわかる。自動車は経済活動でも社会生活でも必需なものであり、ガソリン価格の高下は『車社会』を良くも悪くも直撃する。

エネルギー資源のほぼ全量を海外からの輸入に依存せざるを得ない日本では、電気、ガス、ガソリンなどエネルギーコストを主体的に抑制する手法としては、電力部門における原子力発電の稼働率向上の他には、徹底した省エネに取り組むしかない。ガソリン費用の節減であれば、冬場ではカーエアコン需要の節約が必須となるはずだ。



<資料1>

(出所:資源エネルギー庁HP


<資料2>

(出所:総務省統計局資料

介護保険サービス需要は増加傾向を継続中 ~ 介護給付費実態調査月報(平成26年9月審査分)

2014-11-25 20:57:37 | 日記
先のブログ記事の続編。厚生労働省が今日発表した『介護給付費実態調査月報(平成26年9月審査分)』によると、直近の動きは次のようなもので、最近の受給者数の月次推移は下の資料の通り。

1)受給者数:介護予防サービ1,094.5千人、介護サービスで3,866.0千人
2)受給者1人当たり費用額:介護予防サービス40.7千円、介護サービス191.0千円

今は来月14日の衆院選を控え、各政党が公約を発表しつつある。介護に関しては、それほど細かなことが書かれているわけではない。もちろん、耳障りなことは書かれていない。それは、年金・医療も同様。これらの高齢者向けの公的資金の配分を、徐々に子ども子育てに転用していく必要があるが、それを語る候補者がいるとは聞いたことがない。

介護サービス受給者数については今後とも増加傾向が続く見込み。介護保険財政の持続可能性を慮れば、「受給者1人当たりの費用額」の上昇をいかにして削減していくかが最大の課題であり、今後ともそれは変わらない。

受給者数は今後とも漸増していくと見込まれ、そういう中で介護保険財政の持続性を維持するには、「受給者1人当たりの費用額」の漸減は必須となる。医療給付にも通じることだが、介護給付について『総額規制』を強行するための素地が敷かれ始めるのは、そう遠くないような気がする。

本当は、今すぐにでも介護サービスの『総量規制』を実施すべきである。医療はとっくに切羽詰まっている。医療サービスに先行的に『総量規制』を導入するか、又は医療サービスと同時に『総量規制』を導入するか、いずれにせよその実施は遅きに失しかねない状況にある。今は選挙戦が始まったばかりだが、こうした「痛み」に関する話は選挙後でないと語られ始めることはない。



<資料>

(出所:厚生労働省『介護給付費実態調査月報(平成26年9月審査分)』)

6月1日の総人口:1億2711万人(前年比21万人減)、うち65歳以上3265万人(前年比109万人増) 

2014-11-22 18:44:06 | 日記
総務省統計局が今日発表した『人口推計(平成26年11月報)』によると、今月1日現在の概算値と去る6月1日現在の確定値は、それぞれ次の通り。


【平成26年11月1日現在(概算値)】
○総人口:1億2708万人(前年同月比22万人減(0.17%減)

【平成26年6月1日現在(確定値)】
○総人口:1億2711万3千人(前年同月比21万3千人減(0.17%減))
 ・ 0~14歳人口 1628万6千人(前年同月比16万7千人減(1.01%減))
 ・15~64歳人口 7817万7千人(前年同月比113万3千人減(1.43%減))
 ・65歳以上人口 3265万人(前年同月比108万7千人増(3.44%増))
○日本人総人口:1億2548万1千人(前年同月比25万8千人減(0.21%減))


総人口の推移は下の資料にあるように、ミクロでは多少の増減はあるが、マクロでは減少傾向の真っ只中にある。今後長期的にも、この傾向が続くであろ。既にわかっていることではあるが、65歳以上は増え、65歳未満は減っている。今後更に少子高齢化が進むことになるが、「65歳」という区切りを「70歳」にまで上げていくべきだ。

先のブログ記事でも健康寿命について書いたが、健康寿命が延伸していくようであれば、「65歳」は引き上げざるを得なくなる。退役年齢が高くなれば、現役での出世速度はその分だけ遅くなる。現役期間の長期化とは、そういうものであろう。



<資料>

(出所:総務省統計局『人口推計(平成26年11月報)』)

【論風】介護報酬引き下げ問題 ~ 黒字経営のための制度改正を

2014-11-21 00:12:58 | 日記
昨日付け FujiSankei Business i. の【論風】欄で拙稿「介護報酬引き下げ問題 ~ 黒字経営のための制度改正を」が掲載されました。全文は次の通り。

【論風】介護報酬引き下げ問題 ~ 黒字経営のための制度改正を

 高齢者介護の小規模デイサービスや訪問介護、居宅介護支援事業所などを全国展開している株式会社日本介護福祉グループの藤田英明会長と話をした。その際、介護報酬引き下げ(歳出削減効果6000億円)という政府の来年度予算編成方針に関して藤田氏から興味深い問題提起があった。いわく「介護報酬について、同一時間・同一賃金を検討してみるべきではないか」
 少子高齢化の進展により年間1兆円の自然増が見込まれる社会保障費。来年度は介護報酬が改定されるが、その全体を引き下げる方針が示されている。

◆民間の参入意欲そぐ
 介護は社会福祉法人、株式会社、NPOなど多様な法人形態によって担われている。だが、株式会社に比べて税制優遇されている社会福祉法人は、いわゆる“内部留保問題”を抱える。内部留保は特別養護老人ホームで1施設当たり平均3億1373万円、1床当たり平均381万円に上っている(2011年度)。全国での総額は「2兆円規模」。特養を経営する社会福祉法人の収益率は中小企業に比べて約6%も高く、介護報酬を6%引き下げれば6000億円の歳出削減になると試算される。
 特養の内部留保問題に対しては、出過ぎた利益を還元させるだけでなく、今後の介護報酬を引き下げることで利益が出にくいようにするように見える。しかし、これを特養の運営主体である社会福祉法人だけでなく、株式会社やNPO法人など他の事業形態にまで広げるとなると、民間事業者の介護産業への参入意欲を著しく低下させてしまうのではなかろうか。藤田氏は、こうした“ディスインセンティブ手法”ではなく、介護保険サービスの『時間当たり共通単価』を作ってはどうかと提案する。すなわち、「同一時間・同一賃金」だ。
 介護保険サービスに係る介護職は、まさに介護報酬で規定された範疇(はんちゅう)で給与が支給される。介護保険サービスの種類は、あまりにも多くの細目ごとに事細かに決められている。介護保険サービスの種類によって単価が異なる。これでは、介護職を雇う介護事業経営者からしてみると、事業面で創意工夫をしようというインセンティブは湧きにくい。
 そこで、介護報酬システムの根本的な部分に焦点を当て、介護事業経営者の賃金面での創意工夫を誘発すべきだとの発想だ。介護報酬全体は引き下げるが、その中の介護職に関する部分は報酬を引き上げるということは十分あり得る。

◆産業平均の3分の2の給与
 介護人材を確保していく観点から、介護職の報酬を引き上げることは非常に有用であろう。その原資として、特養に積み上がった内部留保を活用すべきだとの考え方も多分にある。
 介護職の給与水準が全産業平均の3分の2程度でしかない。だから、公的資金の追加投入による介護報酬引き上げを検討する前に、介護産業界内で所要資金を捻出すべきだとの思考になるのは当然のことだ。
 しかし、現存する特養の内部留保を全て現金化して介護職に還元することになっても、それ自体には持続性はない。特養は他に類なき税制優遇措置を施されている社会福祉法人の運営。制約条件はあるが、株式会社やNPOに比べて資金的には相当の余裕が発生する仕組み。現にそうなっている。
 特養の内部留保問題に端を発した社会福祉法人改革は重要だが、より本質的な課題は、介護職に対する処遇の改善と向上だ。せめて、全産業平均の賃金水準を目指していくべきだ。これは特養問題を解決するだけでは到底追い付かない。社会福祉法人、株式会社、NPOなど事業形態にかかわらず、介護職への資金循環量を増やす制度に改正していくべきだ。それはつまり、介護サービス事業を『普通の黒字経営』にするための制度改正が必要だということに他ならない。     

『認知症ピラミッド』 ~ 認知症の有病者462万人・MCI400万人で計862万人

2014-11-20 11:48:37 | 日記
厚生労働省によると、認知症とは、次のようなことを指す。

≪「認知症とはどういうものか?」より抜粋≫
 脳は、私たちのほとんどあらゆる活動をコントロールしている司令塔です。それがうまく働かなければ、精神活動も身体活動もスムーズに運ばなくなります。
 認知症とは、いろいろな原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったためにさまざまな障害が起こり、生活するうえで支障が出ている状態(およそ6ヵ月以上継続)を指します。
 認知症を引き起こす病気のうち、もっとも多いのは、脳の神経細胞がゆっくりと死んでいく「変性疾患」と呼ばれる病気です。アルツハイマー病、前頭・側頭型認知症、レビー小体病などがこの「変性疾患」にあたります。
 続いて多いのが、脳梗塞、脳出血、脳動脈硬化などのために、神経の細胞に栄養や酸素が行き渡らなくなり、その結果その部分の神経細胞が死んだり、神経のネットワークが壊れてしまう脳血管性認知症です。


では、日本に認知症高齢者はどの程度いるのかというと、厚労省が昨日提示した下の資料を参照されたい。この『認知症ピラミッド』の頂角の黄色い部分(約462万人)が「認知症有病者数」。MCIも含めて広めに捉えると、認知症又はその予備軍は862万人となる。

もっとも、先のブログ記事にあるように、諸説いろいろでもある。

先のブログ記事に貼付した人口ピラミッドの推移とともに、『認知症ピラミッド』の形も変化していくだろう。この『認知症ピラミッド』においてこそ、上の部分の層を下の部分の層が支えるようにしていく必要がある。現状既に、認知症高齢者数は百万人の単位で存在しているのだ。



<資料>

(出所:厚生労働省資料

総選挙後のニッポン ~ 2012年度の社会保障給付費は109兆円で過去最高を更新

2014-11-19 23:18:50 | 日記
総選挙後のニッポン ~ 2012年度の社会保障給付費は109兆円で過去最高を更新


ライブドア・ニュース
http://news.livedoor.com/article/detail/9483536/

夕刊アメーバニュース
http://yukan-news.ameba.jp/20141119-23/

ビッグローブ・ニュース
http://news.biglobe.ne.jp/economy/1119/gdw_141119_6446920309.html

Gadgetwear
http://www.gadgetwear.net/2014/11/2012109.html

消費増税の“政治判断”の材料 ~ 7-9月のGDPは悪化の予想、他の指標は好不調まちまち

2014-11-12 16:24:41 | 日記
今日の日本経済新聞ネット記事にもあるが、消費増税の是非については、今の時点では「11月、12月の2度に渡って発表される7~9月期の国内総生産(GDP)速報値」を見てから安倍首相が判断するとしている。消費増税の判断材料に短期的な経済指標を用いること自体がそもそもおかしいのだが、根拠となる税制抜本改革法にその旨が規定されているので仕方ない。

その経済指標として、「7~9月期の国内総生産(GDP)速報値」を参酌するとのことである。しかし、経済指標はこれだけではない。直近での公式統計としては、例えば今日発表された『個人企業経済調査(動向編)平成26年7~9月期結果(速報)』(総務省統計局)もあれば、『労働力調査、消費者物価指数、家計調査』(総務省統計局)もある。先のブログ記事で書いた『毎月勤労統計調査 平成26年9月分結果速報及び平成26年夏季賞与の結果』なども然りだ。

これらでさえほんの一例群に過ぎない。こうした経済指標の全てを総合的に勘案して景気動向・経済情勢を判定するのは非常に難しい。全体の底上げは、実際にはあり得ない。必ず勝ち組と負け組に分かれてしまう。個人企業の業況判断DIや労働力調査を見ると、決して悪い数字ではない。ところが、消費者物価指数や家計調査を見ると、決して良い数字ではない。給与水準は上がっているが、実質賃金は下がっている。

解散風が出てくるということは、消費増税との関係では「7~9月期の国内総生産(GDP)速報値」の数字が悪化していると予想できる。だが、他の指標は好調・不調がそれぞれ違う。当然と言えば当然である。仮に解散総選挙となった場合には、消費増税の可否判断基準から短期経済動向を除外する法改正をすべきである。そうでないと、いつまで経っても社会保障のための安定財源を創ることは叶わない。



<資料1>

(出所:総務省統計局資料


<資料2>

(出所:総務省統計局資料

2012年度 「社会支出」113 兆円、「社会保障給付費」109 兆円 ~ ともに過去最高を更新

2014-11-11 17:12:09 | 日記
国立社会保障・人口問題研究所が本日発表した『平成24年度 社会保障費用統計』によると、平成24年度(2012年度)において、社会支出112.7兆円、社会保障給付費108.6兆円と、いずれも過去最高を更新したとのこと。これらを含めた概要は次の通り。


○「社会支出」総額:112兆7,475億円(対前年度7,274億円増(+0.6%))
○「社会保障給付費」総額:108兆5,568億円(対前年度1.1兆円(+1.0%))
○国民1人当たり「社会支出」:88万4,200円
○国民1人当たり「社会保障給付費」:85万1,300円
○社会支出:「高齢」53.6兆億円、「保健」36.9兆円で、この2分野で総額の約8割
○社会保障給付費:「医療」34.6兆円(31.9%)、「年金」54.0兆円(49.7%)、「福祉その他」19.9兆円(18.4%)
◎社会保障給付費に対応する社会保障財源:総額127.1兆円(対前年度比11.4兆円増(+9.9%))


この平成24年度 社会保障費用統計には、現在の置かれた日本の状況だけでなく、今後の社会保障政策のあるべき方向性を見据えるために有用なデータが多数散りばめられている。その中で一つだけ抽出しろと言われたら、私としては「部門別社会保障給付費の推移」を選び出す(資料1)。

このブログでも何度か掲載している「社会保障に係る費用の将来推計」(資料2)と合わせて考えると、やはり社会保障費の財源論が最大の課題であることがわかる。社会支出も、社会保障給付費も、今後当面は毎年度で“過去最高”を更新し続けることになる。財源を確保する手段は、次のようなことが考えられる。


①経済成長による税収増からの収入増
②増税による税収増からの収入増
③社会保障費の削減
④他の政策経費の削減
⑤国債発行による収入増

このうち、①は不確実なもの、④はこれ以上は困難、⑤は財政の観点から困難。だから、②と③を包括的に実施するということで、『社会保障と税の一体改革』が法制化されたと解することができる。今は、②が難色を示されつつあり、③も事実上困難な情勢になっている。となると、①、④、⑤の一部又は全部はどうかというふうに話は戻る。

そして、結局のところ、⑤に落ち着くであろう。これも毎度のことで、またぞろ先送りの連鎖から脱却できないことになる。会計の原点は、支出に見合った収入の確保ではなく、収入に見合った支出の実施である。増税ができなければ、社会保障費の削減しかない。自明のことだ。

尚、本日午後の日本経済新聞ネット記事が簡潔にまとまっているので、以下に概略を掲載しておく。


<記事概略>
・社会保障給付が2012年度108兆5568億円。前年度から1%増、過去最高更新。
・国民1人当たり85万円で前年より1.2%増。年金が5割、医療が3割、介護などが2割。
・社会保障のために国などが集めた費用は127兆555億円と9.9%増。
・株高と円安で年金積立金の運用収益が大幅増、資産収入が15兆9968億円と4.4倍に増。
・厚生年金保険料など社会保険料も61兆4156億円と2.2%増。


<資料1>

(出所:平成24年度 社会保障費用統計


<資料2>

(出所:厚生労働省資料

学童保育(H26.5.1現在) ~ 登録児童数とクラブ数は過去最高、待機児童数は継続増加中

2014-11-07 21:11:10 | 日記
先のブログ記事の続編。厚生労働省が今日発表した「平成26年 放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況」によると、本年5月1日現在の状況として概要は次の通り。これは、いわゆる『学童保育』のこと。

○登録児童数:93万6,452人(前年比47,247人増)
○放課後児童クラブ数:2万2,084か所(前年比602か所増)
○利用できなかった児童数(待機児童数):9,945人(前年比1,256人増)
○18時を超えて開所しているクラブ:1万4,457か所(65.5%)
○小学校内で実施するクラブ:1万1,653か所(52.8%)
○小学校内で実施するクラブのうち、同一の小学校内に放課後子供教室があるか所数:4,392か所(37.7%)

これまでの推移について、下の資料を参照されたい。待機児童数は平成19年をピークに23年までは減少したが、翌24年から再び増加に転じている。今回の調査では、放課後児童クラブ(学童保育)の数は2万2,084か所、登録児童数が93万6,452人で、いずれも過去最高。ただ、待機児童数は前年比1,256人増の9,945人。

先のブログ記事で書いたが、政府は学童保育について来年度から平成31年度末まで、新たに30万人分の定員を増やす方針。しかし、この調査結果を見ると、目標達成はとても期待できるものではない。来年10月に予定されている消費増税(税率8%→10%)の話でも、学童保育への配分論はおよそ聞こえてこない。

親が共働きの場合における学童保育の希望者は増えている。小学校入学後に放課後の預け先が見つからない“小1の壁”は大きな問題になっている。今回の消費増税収は社会保障財源に充てられるが、その内容は高齢者向け対策に偏重していることに加え、配分の少ない子ども子育て対策にあっては、未就学児童の保育政策には若干配分されるものの、学童保育への配慮は殆ど期待されていない。

未就学児に係る待機児童数にも言えることだが、学童保育に係る待機児童数についても潜在的な人数把握が必要だ。同時に、この分野への予算配分を今後は手厚くしていく必要がある。膨れ上がり続ける高齢者向け対策予算のほんの幾ばくかを振り分けるだけでも、『2つの待機児童』への対策となり得る。

当面の政治の役割は、高齢者一人当たりの利権を現役世代の子ども子育てに徐々に転用していくことだ。少子高齢社会における福利厚生の配分のあるべき姿とは、そういうものであるはずだ。



<資料>

(出所:厚生労働省資料

消費増税の“政治判断”の材料 ~ 給与額は上昇、実質賃金は下降(平成26年9月 毎月勤労統計調査)

2014-11-06 15:32:21 | 日記
厚生労働省が昨日発表した『毎月勤労統計調査 平成26年9月分結果速報及び平成26年夏季賞与の結果』によると、今年9月の給与水準と賞与水準について報告がなされている。安倍政権は、来秋の消費増税(税率8%→10%)の判断について、今もまだ今年7~9月の経済指標を基にすることにしているようだ。

今回の消費増税は、社会保障システムを維持するのに必要な安定財源を確保するためのものだ。その消費増税の可否判定について、短期的な経済動向を以て行おうとすることはそもそも奇妙だ。しかし、政治的にそう決まっているので仕方ない面はある。経済動向を示す指標は様々だが、賃金水準はその最たるものになるだろう。そういう意味では、この9月分の結果による効果や影響も相当なものになるはずだ。

月間現金給与額はごく一部の業種を除いて、前年比でプラスになっている(資料1)。これは、これだけを見ると決して悪い数字ではない。むしろ、実態を反映していると思われる。しかし、名目賃金指数を消費者物価指数で除して算出した実質賃金の動きを見ると、ここ1年で明らかに下降傾向にある(資料2)。

これは、消費増税に対しては大きなマイナス材料だ。他方で、消費増税の回避を悦ぶべきとは思えない。今後の社会保障財源が確定しないということだけではない。そのように判断しなければならないほど、経済事情が改善していない結果が数字で出ていることを憂慮すべきだ。そこで景気対策の大判振る舞いをするとしても、それは確実に短期的な税収減をもたらす諸刃の剣となる。

いずれにせよ政治判断に委ねられるわけだが、短期的経済指標だけで長期的財源確保策を決する愚挙から早々に脱しないと、いつまで経っても将来不安は解消されない。増税は大手を振って歓迎されるようなものではない。はっきり言えば、嫌な事。だが、それをしないことによるリスクを数字で再度現していくこともまた重要である。あくまでも、税と社会保障の一体改革なのだ。



<資料1>

(出所:厚生労働省資料


<資料2>

(出所:厚生労働省資料

アベノミクスは生活保護改善に効果効能なし ~ 被保護世帯数161万超で過去最多・被保護実人員216万人超

2014-11-05 22:00:39 | 日記
厚生労働省が今日発表した『被保護者調査(平成26年8月分概数)』によると、被保護世帯数は約161万、被保護実人員は約216万。全体としては近年、横這いないし漸増で推移してきている(資料1)。

より詳しくは、今日の日本経済新聞ネット記事にあるように、被保護世帯今年8月時点で前月比836世帯増の160万9830世帯で、過去最多を更新。被保護実人員数は前月日564人減の216万3152人。世帯別では、65歳以上の高齢者世帯が75万7118世帯で全体の47%と半数近くに上る。今後、この傾向は更に進むと見込まれている。

被保護世帯数や被保護実人員数の増減の理由は政府の景気・経済対策と結果的に関連がないことは、これまでもこのブログで何回か書いてきた(資料2)。同様に、アベノミクスも生活保護分野の改善に効果も効能も及ぼしているとはとても言えない。そもそも、景気対策と生活保護には相関関係は見られてこなかった。

生活保護には、生活扶助、医療扶助、住宅扶助、介護扶助などがある。いずれの扶助も抑制していくことを迫られてるだろうが、個々の受給ごとに事情が異なるので、マクロ財政の視点から優先・劣後の順位付けをすることは難しい。最終的には、例えば一人当たり受給額の総額規制など上限を設定するといった手法しかないのではなかろうか。これは、高齢者向け社会保障費にも適用されるべきことでもある。



<資料1>

(出所:厚生労働省資料


<資料2>

(出所:厚生労働省資料