社会保障給付費見通し ~ 2006年(小泉政権時)と2012年(野田政権時)の比較

2013-11-30 12:22:02 | 日記
先のブログ記事で掲載したように、将来の社会保障給付費について現時点では2025年まで見通されている。こうした見通しが変更されることはよくある話だが、社会保障給付費に関しても同じことが言える。

現時点での社会保障給付費の見通しは先のブログ記事のものが直近であるが、これは2012年10月(野田政権時)のものだ。

では、それ以前はどのようなものであったのか。2006年5月(小泉政権時)のものは下の資料のようなものだ。野田政権時の見通しは小泉政権時の見通しと比べて、年金は減っているが、医療・介護は増えている。子ども・子育ては新たに項目として掲載されているが、これは大きな進歩だ。総額は増えている。

こうした政府見通しについて、過去のものと現在のものを比較することは案外重要だ。その時々の政権の意思が透けて見えることがある。旧自民党政権であったら、年金の減額や子ども・子育ての増額は望めなかったと思う。今から思うと、民主党政権は確かに何かを変えようとしていたし、実際に徐々にではあるが変えた部分も相当あった。

現自民党政権が民主党政権時から学ぶべき点は全然ないということはない。少なくとも、子ども・子育てを増額することに着目すれば、これは民主党政権の業績であったと考えるべきだ。



<資料>


(出所:厚生労働省資料

『2025年 地域包括ケアシステム確立』という目標 ~ 実は10年遅れ

2013-11-29 23:38:05 | 日記
先のブログ記事で書いたが、国の介護政策が目指しているものは、2025年に「地域包括ケアシステム」を確立することだ。この考え方は、実は2003年に厚生労働省・高齢者介護研究会が提起したもので、当時の目標年次は2015年とされていた。既に10年遅れとなっている。

国の政策に関して、当初目標年次と達成年次を比べてみると、達成年次は当初目標年次よりも相当遅れるか、達成できないまま政策転換がなされるか、という場合が多い。多くの政策の実行には、相応の財源が必要となるし、政治状況や経済社会情勢などで左右されることも少なくない。

下の資料は、2003年に2015年の実現目標が掲げられた地域包括ケアシステムの概念図。先のブログ記事の資料1〔=介護の将来像(地域包括ケアシステム)〕と見比べるとわかるが、資料がわかりやすくなった以上に、内容的にも進展が見られる。2003年で2015年目標というのは、2013年で2025年目標というのと、目標までの設定期間は同じだ。

今後も介護保険制度が逐次見直されていく中で、介護ニーズも更に多種多様化していく可能性がある。そうなると、地域包括ケアシステムの内容も同様に進化していくだろう。政策目標は、それを策定した当初のものは達成せず、あくまでも制度が進化していくための道具であると考えておくのが無難だ。国民皆年金も、国民皆保険も、実際には未だ達成していない。。



<資料>

(出所:厚生労働省資料












年金担保貸付事業廃止計画について(2)

2013-11-26 21:25:43 | 日記
先のブログ記事の続編で、年金担保貸付事業廃止計画を細かく見ていく。

「1.廃止計画策定の経緯」の冒頭には、年金担保貸付制度の必要性などについて、以下の通り書かれている。



「老後の貴重な生活原資として、年金給付を受ける権利を担保に供することは禁止される必要があるとしても、医療・介護、冠婚葬祭等、年金受給者に一時的な資金需要が生じうる」というのは、昔も今も同じだ。年金受給者に一時的な資金需要が生じ得ないほどに年金受給額が充分であるならば別だが、今後はますます厳しくなると見込まれる。昔よりも今、そして今よりも将来の方が、資金需要に応えられる環境は悪化していく可能性が高い。

「昭和40年代に年金受給者が高利貸しから年金証書を担保にし、高利の資金を借り入れたことが社会問題化した」とあるが、これも今に通じる話だ。違法年金担保融資の事案は後を絶たない。資金需要はどのような時代にもどのような世代にも旺盛だということだ。だからこそ、公庫などの公的機関に対して独占的に貸付・回収業務を担わせることとしたわけだ。

「公務員には既に同様の制度(現在の恩給・共済担保貸付)が存在しており、官民格差是正が求められたこと」とあるが、これは制度発足により解消された形となっている。この点に関して問題視されたことは近年見当たらない。


「公費の負担なく利用者の資金需要の拡大に応え」ながら「年間21.3万人の年金受給者に対し、約1,868億円の新規貸付額に達する規模となった(平成21年度末)」ことは、様々な批判があろうとも、相当に高い評価を受けて然るべきだ。年金受給者であって資金を借り入れる必要のある人には、年金受給権以外の信用力がないのが普通であろう。何よりも、公費の負担なく信用力の低い高齢者など年金受給者が急場の資金需要に対応できる制度だ。

これを廃止するということは、今後も旺盛と見込まれる資金需要に対して公費を負担しなければならなくなるということに他ならない。社会保障財政を改善すべき時代に、それに逆行するかのような制度変更は不相応であると言わざるを得ない。

年金担保貸付事業廃止計画について(1)

2013-11-25 21:33:44 | 日記
「年金担保融資制度」というのがある。公的年金受給権を担保とした資金の貸付については、金融機関や貸金業者など民間の金融事業者が行うことは禁止されているが、独立行政法人福祉医療機構日本政策金融公庫が行うことは例外的に認められている。

この制度には従来から批判が多いこともあって、廃止の方向が決定している。具体的には、年金担保貸付事業廃止計画を参照されたい。これに対しては、筆者は強い異論・反論を持っている。先ずはこの制度の源流から紐解いていく。

年金担保融資制度の源流は恩給担保貸付制度である。これを最初に実施した旧恩給金庫の設立時の政策思想には学ぶべき点が多い。昭和13年に制定された恩給金庫法の制定に携わった高木三郎氏は著書「恩給金庫法解説」において、次のように述べている。(旧漢字・仮名遣いは新漢字・仮名遣いに改めるなど原文から一部修正を施した。)


>>

恩給金庫の目的とする所はいずれにあるか。恩給金庫法には別段恩給金庫の設立目的につき定むる所がない。主たる業務は恩給扶助料乃至勲章年金の受給者に対し恩給年金を担保として金融を行うと云う事にあるは明かである。然し自分は恩給金庫の本来の使命は単に従来の高利貸に代って恩給年金担保の金融を行うと云う事を以てその目的の全部とする所ではないと思う。此の点は恩給金庫法案の趣旨並に第七十三議会に於ける政府委員の法案提出理由の演説に依りても明瞭であると思う。今その船田政府委員の演説の要旨を摘出すると次の通である。
 
恩給ハ元来一身ニ専属スベキモノデアリマシテ、之ニ依ツテ受給者及ビ其家族ガ生活ノ資ニ供スベキ性質ノモノデアリマス、故ニ之ヲ他人ニ譲渡シ又ハ担保ニ供スルコトヲ法律ヲ以テ禁止シテ居ルノデアリマスガ、受給者ハ現在ノ給与ニ依ツテハ生活ノ余裕ト云フヤウナモノヲ持ツ程度ニ至ツテ居リマセヌノデ、一朝不慮ノ災厄ニ遭遇シ、又ハ疾病ニ罹ルト云ウヤウナ、不時ノ失費ヲ必要トスル場合ニ於キマシテハ、已ムヲ得ズ之ヲ担保ニ供シテ金融ヲ受ケルト云フ者モ少ナカラザル実状デアルノデアリマス、而シテ従来一般金融業者ノ行ヒツヽアル金融ノ方法ハ、金利ガ非常ニ高イノミナラズ、時ニハ恩給証書ハ金融業者間ヲ転々致シマシテ、負債完了後ニ於テモ、遂ニ其所在スラ知ルコトガ出来ナイヤウナ場合モアリマシテ、其弊害甚シク、何トカ恩給受給者ノ生活安定上、適当ナル方策ヲ講ゼラレタシトノ要望ガ少クナイノデアリマス、加之、老幼者及ビ廃疾者等、最モ救済ヲ必要トスル者ハ、金融ノ途ヲ杜絶サレテ居ル実状デアリマス、是等ノ点ニ付キマシテハ、大正十二年恩給法制定当時ノ当院ノ附帯決議ニモドザイマスシ、又近クハ昭和八年恩給法中一部改正ノ際ニモ、当院ノ希望条項ノ一トシテ「政府ハ恩給金融ニ関シ速ニ適当ナル方法ヲ講ゼラレ度」トノ決議ガアリマシタル如ク、度々問題トナツタ所デアリマス、以上恩給金融ニ付キ申述ベマシタコトハ、多少ノ事情ヲ異ニ致シマスルガ、勲章年金ニ付テモ同様デアリマシテ、折角殊勲者優遇ノ為メ与ヘラレタル年金ガ、徒ニ金融業者ヲ利スルト云フ実例ハ非常ニ多イノデアリマス、政府ハ之ニ対シ種々適当ナル方策ヲ攻究致シマシタ所、政府自身積極的ニ金融機関設立ヲ企画シ、従来ノ弊害ヲ除去スルヲ以テ、最善ノ方策ヲ認メタノデアリマスガ、政府自ラ全部ノ資金ヲ支出シ融通ヲ行ヒマスコトハ、今日ノ財政状態ヨリ見テ困難ナル事情モアリマスノデ、資金ノ一部ヲ政府負担トシ、更ニ民間ノ資力ヲモ取入レ、政府ハ之ニ十分ナル保護監督ヲ加ヘテ、政府自ラスルト略同様ノ効果ヲ収ムルコトヲ目標トシ、茲ニ恩給金庫ナル一金融機関ヲ法律ヲ以テ特置シ、之ヲシテ公正妥当ナル条件ノ下ニ、恩給年金受給者ノ為ニ金融ヲ行ハシメントスルニ至ツタノデアリマス、恩給金庫ハ以上ノ目的ノ外附帯決議ト致シマシテ、受給者ノ福祉増進ニ貢献スベキ事業ヲモ営ム予定デアリマシテ、其性質ハ公益的ノモノデゴザイマス

以上提案理由に説明せられたる如く、恩給金庫の使命は寧ろ恩給年金受給者の福祉増進にあるのであって、担保金融はその手段の一部であると考えてもよろしいのではないかと思う。即ち恩給金庫は担保金融に依って営利を計るものではない。金庫自体の自給自足が出来れば成るべく低利に簡易に金融を行い、以て恩給年金受給者の経済的圧迫からの救済を行うと共に、余力があれば積極的に受給者の福利増進に乗出して初めて恩給金庫本来の目的を達成するのではないかと思う。

>>

年金担保融資制度の黎明期も現在も、年金世代への与信に係る金融環境の根本的な在り様に大きな変化はないように思える。信用リスクの高い資金需要者に対しては、単に貸し付けるだけではなく、資金需要者に係っている「経済的圧迫からの救済」のために「余力があれば積極的に」福利増進に乗り出すべきだ。信用リスクの高い資金需要者に呼応できるような合法金融の領域を用意しておかなければ、ともすれば彼らは違法金融に走ってしまう可能性が高い。いつの時代にもいる違法金融業者は、そこを虎視眈々と狙っている。こうした与信政策に関する基本思想にも大きな変化を求める必要はないだろう。戦前の話なので忘れられがちではあるが、先達が示してくれた思考から学び取ることも時には重要である。『貸す親切』か、『貸さない親切』か。答えは自明だ。

どの時代にも普遍的な政策思想はある。健全な与信サービスとは、契約前であれば与信する相手(受信する者)を真剣に調査・審査し、契約後には定期的にフォローやケアをするというものであるはずだ。それが年金受給者のような高齢者であれば尚更である。与信サービス責任の範囲は、貸付実行だけで済むものでなく、返済完了までに至らなければ一段落しない。

福祉医療機構であれ日本政策金融公庫であれ、年金担保融資制度の単なる執行機関に止まってはいけない。年金担保融資制度を利用する年金受給者の福利増進のためにも、「年金担保融資サービス責任」を果たす体制を構築していくべきだ。福祉行政経験者の登用による年金受給者のケアなどに大々的に取る組み始める時期に来ている。行政や政府系機関の徒な肥大化は決して許されない。だが、知識や経験を豊富に持った人材をして世の中に裨益させていくことは、結局は国民の福利厚生を向上させることになる。

こうした年金担保融資制度の廃止は、融資財源問題に帰着する。具体的には次の機会に譲るが、巨額の資金ニーズを自分が将来受給する年金に求めるのか、税金を財源とする公的資金に求めるのか、という政策哲学の選択となる。本制度の廃止ということは、後者が選択されようとしていることに他ならない。

特別養護老人ホーム ~ 入所基準の厳格化は当然の流れ

2013-11-24 13:46:40 | 日記
一昨日の日本経済新聞ネット記事によると、厚生労働省は特別養護老人ホームに入る高齢者補助を一定以上の金融資産があれば打ち切る新基準案を固めたとのこと。記事概要は以下の通り。

○補足給付の判断基準に預貯金や株式などの金融資産を加える。
○補助対象世帯の約1割は単身で1千万円以上、夫婦で2千万円以上の金融資産があるとみられ、これらの人への補助を打ち切る。
○金融資産額は市町村が入所者の自己申告により把握。
○現在補助を受けている約100万人にも新基準適用。給付費を年700億円減。

現行基準は下の資料1〔=特定入所者介護サービス費(補足給付)の概要〕と資料2〔=補足給付(低所得者の食費・居住費の負担軽減)の仕組み〕の通りだが、金融資産を比較的多く保有する高齢者に対しては、この補足給付を施さないようにするということだ。

高齢者世帯の貯蓄等の状況としては、下の資料3〔=夫婦高齢者世帯の収入階級別の貯蓄等保有状況〕と資料4〔=高齢者単身世帯の収入階級別の貯蓄等保有状況〕のような結果が提示されている。自己申告や金融機関への照会だけで完全に把握し切ることは難しいだろうが、試行錯誤の中でノウハウを蓄積していくしかない。

先のブログ記事で書いた介護保険制度改革案との整合性は今後明らかになっていくと思われるが、年金・医療も含めて高齢者向け社会保障費を抑制していくには、最終的には政治による高齢者への真摯な説得しかないだろう。

いずれにせよ、少子高齢社会に入り、高齢者向け社会保障に要する費用を同世代間で賄い合う仕組みに徐々に移行していくことは、当然の流れである。特養入所基準の厳格化も仕方ないことだ。



<資料1>

(出所:厚生労働省資料


<資料2>

(出所:厚生労働省資料


<資料3>

(出所:厚生労働省資料


<資料4>

(出所:厚生労働省資料

診療報酬引上げに説得力がないのは何故か?

2013-11-23 16:03:49 | 日記
今日の朝日新聞ネット記事によると、診療報酬改定について、田村憲久厚生労働相が薬価部分を除いた診療報酬本体を引き上げる考えとのこと。これに関しては、去る11月15日の経済財政諮問会議の俎上に載った。厚生労働省財務省民間議員の主張は真っ向から対立しているが、説得力という点では財務省側が遥かに強いと思われる。

特に、下の資料1〔=診療報酬改定率の推移〕と資料2〔=診療報酬と賃金・物価の推移〕を見ると、診療報酬率の引上げに対する賛同は、ただでさえ得られ難いのが更に難しくなるだろう。これに対する明快な反論が厚生労働省側からなされていないというのもある。先のブログ記事にも掲載した後発医薬品シェアに関する内外比較からも、厚労省側の主張の旗色は芳しくない。

これだけで全てが決まる訳ではないだろうが、少なくとも、診療報酬本体を引き上げることに係る説得性が希薄な中では、それに対する国民の納得感も得られようがない。医療保険財政の中での財源移転だけではなく、診療報酬単価を引き下げることを明示していかないといけないのではないか。合理化努力が見えなければ、説得力を持つことはできない。



<資料1:診療報酬改定率の推移>

(出所:経済財政諮問会議資料


<資料2:診療報酬と賃金・物価の推移>

(出所:経済財政諮問会議資料

女性・高齢者の就業状況 ~ 「大都市圏の保育機能」と「地方圏の祖父母機能」

2013-11-22 22:24:03 | 日記
総務省が今日発表した「女性・高齢者の就業状況」からは様々なことを読み取ることができる。『15~64歳人口(生産年齢人口)の就業状況』、『女性の就業状況』、『高齢者の就業状況』に大別されている。

特に興味深いのは、『女性の就業状況』のうち『都道府県別育児をしている女性(25~44歳)の有業率』で、下の資料の通り。未就学児(小学校入学前の幼児)を対象とした育児をしている25~44歳の女性の有業率を都道府県別にみると、島根県(74.8%)、山形県(72.5%)、福井県(72.1%)、鳥取県(71.8%)、富山県(68.3%)などの順となっている。

先のブログ記事別の寄稿で掲載した「全国待機児童マップ(都道府県別)」と対比すると、育児女性有業率と待機児童数は明らかに負の相関関係があることがわかる。「3世代同居は、祖父母の助けを得られるから女性が出産後に仕事を続けられる、共働き子育てがしやすくなる」との通説もあるようだが、その善し悪しは人それぞれだとしても、地方圏の方が祖父母の支援を受けやすい環境にあることは感覚的には理解できるところだ。

そう考えると、大都市圏の保育機能は地方圏における祖父母機能である。大都市圏での保育機能強化のために、祖父母世代から若年親世代への所得移転が今以上にあるべきだ。これは、自然に任せておいてもなかなか進まないので、制度化するしかない。それを数字で示すと、現在も将来見通しでもGDPの1%程度しかない。こうした社会保障財政の不均衡を是正するのも、社会保障制度改革の柱であるべきだ。



<資料>

(出所:厚生労働省資料


仕事したい人の数より仕事の数が少ない20年 少子高齢社会における就職難と離職率

2013-11-20 15:42:14 | 日記
以下は各ポータルサイトの記事URLです。

Gadgetwear
http://www.gadgetwear.net/2013/11/20.html

ライブドアニュース
http://news.livedoor.com/article/detail/8268307/

アメーバニュース
http://yukan-news.ameba.jp/20131120-15/

ビッグローブニュース
http://news.biglobe.ne.jp/economy/1120/gdw_131120_7333964682.html

医療費抑制は誰の意思で行うべきか ~ 経済財政諮問会議資料の斜め読み

2013-11-19 23:48:08 | 日記
今や、政府・経済財政諮問会議の主要テーマの一つは社会保障制度改革である。周知の通り、日本の財政支出の大宗を占めるのは社会保障費であり、その中でも医療関係費用は比較的大きな支出項目だ。

去る11月15日の同会議に『持続可能な社会保障に向けて』と題する4民間議員連名の資料(本文説明資料)が配布された。民間議員が自分たちで作った資料とはとても思えないが、それはさておき、その中の診療報酬と薬価に関するものを下に掲載する。

これを一気に見せられると、医療費抑制のための手法として思い付くのは、診療報酬の物価連動化、後発医薬品(ジェネリック医薬品)の利用促進などであろう。これを効果的に行うには、国会や政府のやる気と腕力次第だが、規制するのが一番手っ取り早い。

医師や製薬会社にとってはたいそう耳障りな話だろうが、ごく一部の例外を除いて患者が自分の意思で医療費を抑えることができない以上、それ以外に方法が思い浮かばない。それぞれの医師の良心に期待する云々の類の美辞麗句は全く通用しない。医療費抑制手法としては、診療機会を公的に制限する以外に妙案が思い付かない。冷たい言い方だが、他にない。



<資料>




(出所:経済財政諮問会議資料

気になる指標 ~ 毎月勤労統計調査(平成25年9月分結果確報)

2013-11-18 23:27:43 | 日記
厚生労働省の毎月勤労統計調査(平成25年9月分結果確報)によると、賃金・実質賃金ともに3ヶ月連続で対前年比マイナスとなった。先月分については他のブログ記事で消費者物価指数(CPI)との関係で論じたが、今年初頭の経済対策の効果が末端にまで行き渡っていないことが数字でわかる。

下の資料〔=資料:月間現金給与額(平成25年9月)〕は、上記の厚労省資料からの抜粋。調査産業計では対前年比-0.2%だが、業種ごとに明暗は分かれる。アベノミクスなどのいわゆる経済対策は、最終的には末端経済の活性化による雇用増や賃金増が結果的にもたらされることを期待している。現時点では、賃金増には至っていないことになる。

この経済対策で謳われている実質GDP押上げ効果2%と60万人雇用創出効果についても、引き続き注視しておく必要がある。政治も行政も経済界も、こうしたフォローアップに関する熱心さが足りない。経済対策の度に雇用創出効果目標を掲げているのに、雇用情勢が改善していることが体感できない。雇用増は経済対策によって最も期待される結果の一つ。退役世代への配慮ではなく、現役世代向け施策を拡充すべきである。経済対策とは、それができる有力な手段なのだ。



<資料:月間現金給与額(平成25年9月)>

(出所:厚生労働省資料

生活保護 ~ 政権交代前後の比較

2013-11-17 23:54:53 | 日記
厚生労働省が発表した直近の生活保護・被保護者調査(平成25年8月)によると、被保護実人員数は対前月比でやや減少したものの、被保護世帯数は過去最多を更新し続けている。

下の資料がここ数年の推移を示している。前政権から現政権に移行した平成24年12月の前後を比較すると、政権交代の効果は全く見られない。アベノミクスに関する本格的な評価はまだまだ先の話になるだろう。政権交代直後に一時的にせよ株高や円安となったが、その効果は未だ生活保護層には裨益していない。

この傾向が消費増税(5%→8%、8%→10%)に対して悪影響を及ぼすとは思えないが、少なくとも最近の景気対策や予算執行の効能が生活保護層に及んだという結果にはなっていない。経済指標には様々なものがあるが、生活保護に係る指標の推移を低所得層へのアベノミクス効果を計る尺度の一つにするかどうかは、政治判断に依る。

むしろ、生活保護制度改革の観点から、先のブログ記事の資料2〔=生活保護費負担金実績額の推移〕・資料3〔=年齢階層別被保護人員の年次推移〕を見ると明らかなように、保護費の半分を占める医療扶助の抑制策や被保護人員の半数を占める60歳以上の者に対する高齢者向け雇用支援策に注力するのが合理的だ。



<資料>

(出所:厚生労働省資料

介護保険制度改革の難しさ ~ 年1400億円の減額 vs 年9600億円の増額

2013-11-16 17:21:11 | 日記
昨日の朝日新聞ネット記事でも報じられている通り、厚生労働省・社会保障審議会介護保険部会では、介護保険から支払う額を年1400億円ほど減らせる介護保険制度改革案が示された。具体的には下の資料の通りだ。

利用者負担増と補足給付削減の両建てにより、介護保険財政支出を年1410~1450億円ほど減額、65歳上(1号被保険者)の保険料で75~77円ほどの減額となる。この改革案は利用者負担増を軸とし、即ち世代間扶助ではなく世代内扶助としているので、若年層の負担増回避という点でも望ましい方向だ。一方、先のブログ記事で掲げた資料2〔=介護給付と保険料の推移〕に今後の介護給付額の見通しも示されているが、13~25年度の介護給付額は年平均で9667億円に上る。

端数を切り捨てても、1400億円の財政効果と9600億円の支出増では、全く話にならない。この記事だけの改革案では、介護保険財政支出の増額分を抑制することは到底できない。今後の介護保険制度の持続性を維持していくには、これ以上の介護保険財政支出の抑制策が必須である。

今は第5期介護保険事業計画(2012~14年度)の中にある。今検討されている改革案は、介護保険法改正案として次期通常国会に提出が予定されており、第6期介護保険事業計画(15~17年度)に反映される。介護保険財政健全化への道程は遠い。



<資料>

(出所:厚生労働省資料