交付金事業の基準 ~ 介護サービス需要予測を厳格化すべし

2013-10-23 19:12:23 | 日記

昨夜の日本経済新聞ネット記事によると、厚生労働省の交付金を使って整備された地域密着型の介護サービス施設について会計検査院が調べたところ、8割で利用率が50%を下回っていたとのこと。主な記事内容は以下の通り。


○調査対象は「小規模多機能型居宅介護施設」と「認知症対応型デイサービスセンター」。11年度は小規模多機能型で上限3千万円、認知症対応型で同1千万円が市町村を通じて事業者に交付。

○06~11年度に25都道府県326施設のうち、255施設で平均利用率が50%を下回っていた。94施設は利用率30%未満、8施設は昨年度末時点で休廃止。一度も利用がない事業所も8施設。

○交付金約43億円が有効に活用されていない。


介護サービス事業主体は、社会福祉法人、株式会社、NPOなど多種多様だ。言わば民間事業としての側面もあり、事業を展開する上で介護サービス需要の的確な観測は介護サービス事業の行方を左右する

この記事では、「利用が低調な理由」として、「主に通所の利用を想定していた小規模多機能型では、実際は宿泊を中心とした利用を望む声が多く、需要に関する事前の調査が不十分だった」と書いている。 交付金は税金を財源とする公的資金であり、それによって整備した介護サービス施設の稼働率が非常に低調であることは、いかにも具合が悪い

10兆円に達しようとする規模の介護保険財政全体から見れば、有効活用されていない交付金額が「43億円」というのは、割合としては微々たるものかもしれない。だが、今後の予算配分において徒らな削減に向けた揚げ足取りの材料になり得る金額水準でもあろう。交付決定の基準として、厳格化された需要予測を盛り込ませるべきだ。

厚労省は「再発防止に努めたい」としているが、そのために最善の手法は、交付金規模を相当圧縮できるような事業内容(例:新設促進から既設活用へ)に転向していくことだ。介護保険制度は株式会社やNPOの参入を当初から許容しているわけだが、その制度的な趣旨を勘案すれば、介護保険制度以外の制度による予算配分は極力なくしていくべきである。

先のブログ記事にも書いたが、小規模多機能型居宅介護や認知症対応型通所介護は、比較的新しい業態である一方で、全体としての費用対効果は決して高い方ではない。介護サービス事業には国や自治体から資金が自動的に降りて来るわけではない。緊縮財政の中で、各々の介護サービス事業がいかにして生き残っていくかという発想が大事だ。