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歐亞茶房(ユーラシアのチャイハナ) <ЕВРАЗИЙСКАЯ ЧАЙХАНА> 

「チャイハナ」=中央ユーラシアの町や村の情報交換の場でもある茶店。それらの地域を含む旧ソ連圏各地の掲示板を翻訳。

再び生存報告+新疆の情報封鎖が未だに続いている件(3)

2010-05-11 21:28:13 | 東トルキスタン関係
→(2)からの続き

でも、だからと言って、あちらに住んでいる一般ウイグル人の多くが、現実的な問題として直ちに独立すべきだと考えているかというと、必ずしもそうではないかもしれません。

漢人なんか大嫌いだ!

共産党も最悪だ!!

じゃあ独立だ!!!


…..となるほど、話は単純ではないようで。

昨年7月の暴動の原因となったウルムチでのデモも、別に独立を要求する内容ではなかった(若い参加者らは、五星旗を振っていたという説もあり)というし、ラビヤ女史らの運動も、当初は中国の枠内で自治の改善を求めるものであったことを、忘れるべきでは無いでしょう。

もちろん、心情的に独立を望んでいる人は多いでしょう。しかしながら、彼の地の経済は完全に中国本土に依存しているのが現状なのです。もし今後も中国での経済成長が続いたとしたら、そうした傾向はさらに強まるに違いない。

そんな状況の中、もし仮に新疆の南部(天山山脈以南)辺りが“東トルキスタン”とし分離独立を果たした所で、その新たな国が(いかに天然資源に恵まれているとはいえ)過剰な人口を抱えた貧しい農業国となるのは必至です。中国本土の周縁地域の一つとして、沿岸部の発展した地域に出稼ぎを送り出すような立場に、それほど変化は無いのではないか。

それについては、ここ10年くらいのロシアとウズベキスタンの関係が、ある程度参考になるかもしれません。

というのも、つい最近まで経済の調子がよかったロシアでは、いわゆる“3K労働”(死語?)の需要に国内の労働力が追いつかず、その分を中央アジアのウズベキスタンやタジキスタン、クルグズタン(キルギス共和国)といった、旧ソ連圏でも特に平均所得の低い国々から出稼ぎにやってくる人々の、安い労働力に頼るようになっていたのです。

ロシアでは、彼ら旧ソ連諸国(但しバルト三国を除く)の外国人は“近い外国人”として他の外国人とは区別されており、外国人の出入りには何かと厳しいあのロシアで、唯一“ビザ無しで2ヶ月もの滞在”が認められています。

彼ら出稼ぎ労働者たちは、とりあえずロシアに入国した後で職に就き、それから内務省に正式に“居住登録”を行った上で2ヶ月以上の滞在許可を得る、という場合がほとんどなわけです。

ところが、この“居住登録”というのが曲者なのですよ。

日本の市町村の住民登録のようなものだと思ったら、甘いです。何せこの制度は、元々はソ連時代に、コルホーズ(集団農場)の農民らが生活水準のより高い都市部に逃げるのを防ぐため、生み出されたものだと言いますから。

ロシアでは、今なお国民各自が“国内パスポート”と呼ばれる身分証明書の所持を義務付けられており、そのパスポートにはしっかり生まれた土地の“居住登録印”が記されています。別の土地に住む場合は、その都度、現地の内務省関係の役所に出向き、また別の“居住登録印”をパスポートに押してもらわねばならない。

何だか、今の中国の戸籍制度に似ていると思われるかもしれませんが、当然のことです。元ネタはこちらなので。

ともかくも、基本的に人をあまり移動させない目的で作られたものである上に、あちらの役所の効率の悪さも手伝って、その手続きには膨大な手間と時間がかかります。よく分からない理由で却下されることも多い。

ロシア国民ですらこの有様ですから、外国人なんて推して知るべしでしょう。ことこれに関しては、“近い外国人”に対する恩恵的な措置などありません。たいていの出稼ぎ労働者が2ヶ月以内に登録ができずに“不法滞在者”になってしまう。

それがロシア国籍者であれば、バレてもせいぜい警官から賄賂をたかられるくらいですみますが、外国人であれば賄賂のみならず、最悪、国外退去の危険に晒されることになります。

彼らはそうした不安定な立場を利用され、雇用者から賃金をピンハネされたり、警官や入管の役人からは頻繁に絡まれて賄賂をむしりとられたり(=国外退去が嫌だったら、黙っててやるから金よこせ!)と、二重、三重の搾取を受けて大変なのだとか。

しかも、彼らは最近あちらの都市部で増えている、ネオナチによる外国人襲撃の主要なターゲットにもなっているわけですが、それで怪我をしたり死んだりしても、警察も自国の大使館も何もしてくれない(まあ、あっちの警察は、自国民が犯罪被害にあっても大して動いてくれないけど….)とのことで…

※この辺の事情については、日本語だと中村逸郎著“虚栄の帝国 ロシア”が詳しい。

こちらの知り合いにも、ロシアでの出稼ぎ経験のある中央アジア人が何人かいますが、ほぼ全員が“あんな国にはもう二度と行きたくない”と言っていますね。

一旦“外国人”となったウイグル人出稼ぎ労働者には今一応存在するようなアファーマティヴ・アクションも適用されなくなるはずで、やはり同じような苦難に直面するのではないでしょうか。

それどころか、独立東トルキスタンと中国の関係に置き換えた場合、人口が毎年減り続け、しばしば労働人口を外部に求めねばならないロシアとは違って、中国本土の方は内陸部なんかだと、むしろ労働力が余っているわけです。となると、そもそも“外国人”であるウイグル人の出稼ぎ自体が不可能になるかもしれない

少し話がずれましたが、経済のみならず、社会全体についても同じことが言えるでしょう。統合の過程がいかに彼らにとって不本意なものであったとしても、彼の地域が新中国の一部となってから既に60年(ちなみに、清朝が直轄統治を始めてから約130年)もの歳月が経っています。

60年といったら短いようですが、考えてみれば、日本の“戦後”と長さはそんなに変わらない。一つのシステムがある程度根付くに十分な時間であり、その間に社会機構の各要所に漢人エリート及び漢化した(幼稚園から漢語で教育を受けてきたような)ウイグル人エリートが配置され、彼らが居ないと社会が回らないような構造が既に出来上がっているわけで。

つまり、分離独立によって中国本土との関係が一旦途絶したり、漢人エリートが一挙に流出するようなことになれば、彼らの全体的な生活水準は、当分の間は今よりも下がることになるでしょう。その後もどうなるかは分からない。あまりに悲観的に過ぎると思われるかもしれませんが、これらは全てソ連崩壊後の中央アジア諸国(但しカザフスタンを除く)で実際に起こっていることです。

あと、ウイグル人の生活水準は今でも十分に低いではないか?という人もいるかもしれません。確かに新疆の南部は貧しいですが、それはあくまで、北部の裕福な層の漢人(彼の地の漢人社会の中でも格差は大きく、都市部の下層労働者や農民なんかはやはり貧しい)と比べた場合の話でしょう。中国領内の他の地域と同じく、“改革開放”前よりも物質的に豊かになっているのは確かなわけで。

例えば、ほんの十数年前まで南部の町や村では地元人の移動手段として使われていた“ロバ車”も、今ではほとんど電動バイクやオート三輪に取って代わられています。

それに、新疆の人口と言うと、何かと漢人の比率が高くなっている点ばかりが注目されがちですが、ウイグル人自体の人口も、この60年間で実はそれなりに増えていたりします(1945年の人口307万)

いずれにしても、海外に生活基盤があるでもない普通の生活者には、一旦当たり前になってしまった便利さや快適さを犠牲にするのは、中々覚悟のいることではないですかね。いかに大義はあるにせよ。

彼らの置かれた境遇に比べるべくも無いですが、自分自身、今の新疆みたいな、ネット環境のまったくない世界で何ヶ月も過ごすというのはほとんど十数年ぶりの経験でした。ほとんど水や空気と同じ感覚で何にでもネットを使うような生活から、ネット抜きのそれに戻るのがいかに厳しいか、つくづく思い知った次第で......。

こんなことばかり書いていると、気の短い人から“だったら今のままで良いってことか?この中共の工作員め!”と怒られそうなのですがw、こちらには別に“五毛”で雇われるほど生活に困っている訳でもないですしw、“独立”の困難さを指摘するのと、彼らの愚劣な民族政策を肯定することは、そもそも別の話です。

そうではなく、こちらが言いたいのは、ウイグル人国家の独立なんて現実には極めて難しいからこそ、敢えて強権で統治する必要はないのではないか、ということです。

独立運動を抑えたいのであれば、妥協できる限り“内在的な問題”の存在を認めた上で、(生産建設兵団ではなく)自治区政府の裁量権を拡大、独立派内の穏健な部分を取り込む努力をした方が、少なくとも今のように警察+軍事力の強権に頼ったやり方に比べれば、包摂コスト上はるかに安上がりではないかという話
で。

同様に、一般ウイグル人に対しても“中華民族主義”なんていう、一部の漢人主義者以外の誰にも説得力の無いような空疎なイデオロギーを押し付けたり、その下で同化政策を進めたりするよりも、

“漢人とウイグル人が同じ国民であるべき歴史的必然性なんて実はあんまり無いし、他にも色々と問題はあるけれど、数ある選択肢の中でも、結局は中国の枠内に残るのが最良の選択なんだ。ほら、なまじ独立なんかしたばかりに貧乏になってしまって、最近ではオリンピック並みの頻度で革命が起きている、あの隣国をごらんよ!”

みたいな感じにプロパガンダの方向を転化した方が、より人心も掴めるし、国際社会での心象も良くなるでしょう。彼らの嫌いな“列強”も、ちょっかいが出しにくくなるのではないかと思われます。

↓ウルムチの北バスターミナルの近くで見かけた横断幕。まあ、わざわざウイグル語の方を読まなくても、漢字の字面だけで大体の見当はつくんだけど。

 “新疆は、古より我らが祖国の不可分の一部である。”

※この場合は、もちろん祖国=“中華人民共和国”。だとしたら、“古より”というのは“たかだか60年前から”と言い換えても可なのだろう。


↓ウルムチの南バスターミナルの近くにあった看板

“党の優しさを、祖国の温もりを、各民族の人民が一致団結して戦ってきた道のりを忘れまじ!”

※“一致団結して戦ってきた”って......一体誰と?


↓昨年の秋ごろ、新疆の至る所でみかけた共産党の宣伝ポスター。スローガンは、上からウイグル語、漢語、カザフ語の三言語で書いてある。

“(民族)団結は、各民族人民の生命源である”

いずれも撮影者は管理人。2009年秋に撮影。

これに対しては、一部の漢人から、

“何でそこまでウイグル人に気を使わないといけないんだ!将来的に、彼らがみな同化されてしまえば、それで問題は解決するではないか!嫌な奴は出て行けばいいんだ!”

というジャイアニズム的な反論もあるかもしれません。

これはこれで一つの意見でしょう。

しかしながら、それだと今後も暴動や反政府テロは頻発するであろうし、その度に彼らが言うところの“反中勢力”からプロパガンダのネタとして使われることになるでしょうね。

何よりも深刻なのは、

“中国の勢力圏に入ったら、人口800万の大民族でも容易に同化されてしまうのだ”

という記憶が、周辺諸国の人々の心に強く刻み込まれてしまうことかもしれません。

漢人の移民に対する目はより厳しくなるだろうし、商売もよりしづらくなるに違いない。もし将来、世界において中米の2大国が対立する事態になれば、そうした国々はこぞって米側につくことでしょう。もちろん日本もw。

そうした意味で、今のような強権支配や同化政策は、長期的に見れば中国の国益に反するように思えます。

まあ、某西楚の覇王のように“文句のある国は皆滅ぼしてしまえ!ガハハ...”と損得を度外視して覇道を突き進むwとか、文革時代のようにまた鎖国するというのであれば、話は別ですけどね。

こんな簡単な道理が分からない中共の中の人たちの頭の中では、やはり継続革命wが今なお続いているとしか思えない。

こんな↓感じで......。











※いずれもカシュガルのバザールで買った古本、“革命現代京劇「ドゥージュエン山」”(新疆人民出版 1974年刊)より抜粋。文革の時代、ウイグル語の読み書きには改良ラテン文字が使われていたが、この本も全てラテン文字表記だった。

再び生存報告+新疆の情報封鎖が未だに続いている件(2)

2010-05-03 21:53:54 | 東トルキスタン関係

→(1)からの続き

あちらのお上は、何故ここまでして新疆の一般人民(特にウイグル人)を国外の情報から遮断したがっているのか?彼ら自身の言い分によれば、新疆における一連の民族問題は全て“外在的な”要因に基づくから、なのだそうです。

要は、

“何か、ウイグル人がたまに訳の分からないことを言って暴れてるけど、そういうのは全部、外国の怪しい宗教結社の奴らや、ラビヤとかいう米国のスパイに唆されてるからなんだよね。で、そいつらを操っているのは中国の解体と再植民地化を狙う悪の列強ってわけ。怖いね。うちらは何にも悪くないんだよ

ってことで。

カシュガル旧市街、オステンボイ通り(吾斯塘博依巷)の住宅の壁に貼ってあった標語

“民族分裂を試みる者どもは、必ずや敗北する!”

2009年10月頃、管理人撮影

※ 中共用語。彼らの理屈では、中国の領域内に住む全ての民族は人口の圧倒的多数を占める漢人と共に“中華民族”という大きなまとまりを成している。故に、ウイグル人やチベット人等で中国からの分離独立を主張するような思想は“民族分裂主義”、それを唱える人間は“民族分裂主義者”ということになるらしい。日本語だと“分離主義”とか“分離主義者”に置き換えた方がより自然かも。なお、これの反意語は“民族団結”。この場合の“民族”も同じく“中華民族”のことを指す。


↓ウルムチのウイグル人地区の中心、ドン・キョウリュック(漢語名:二道橋)旧ラビヤ=カーディル商業ビル(通称“ラビヤ・ビル”)そばにあった看板

 “各民族共通の敵が、ラビヤ率いる三種の勢力(分離主義者、テロリスト、イスラーム原理主義者)であることを、はっきりと認識しよう!”

2009年10月頃、管理人撮影


↓同じくウルムチのドン・キョウリュック(漢語名:二道橋)地区の裏通りで見かけた横断幕(多分、一つの長いスローガンの後半部分だと思われるが、前半の方は周囲には見あたらなかった。)

“....行動を起こし、民族分裂主義との断固たる戦いを遂行しよう!” 

2009年10月頃、管理人撮影


ふと思ったのですが、“中国”を“日本”に、“列強”を“死ね死ね団”に、“怪しい宗教結社”を“御多福教団”、“ラビヤ女史”を“魔女イグアナ”に置き換えれば、まんま“レインボーマン”ではありませんかw。

まあ、“死ね死ね団”には、“日本民族を皆殺しにする”という実に明確な最終目標がありましたけどねw。

“列強”のそれは一体何なのでしょう?漢民族の殲滅か?世界的な景気回復が中国頼みというこの御時世に、その中国の内政が不安定になって喜ぶ“列強”なんてあるのかね?

というか、もし仮に彼らの言い分が正しかったとして、国外の“悪い情報”を完全に遮断することなど出来るのでしょうか?

文革時代みたいに今に比べて通信手段が未発達で、中国が世界から孤立していた頃なら、それも可能だったのかもしれません。

でも、ベルリンの壁が崩壊してから、もう20年も経つのですよ。

何よりも、中国はその間に事実上、資本主義の方向に舵を切り、今では世界経済と密接に繋がっている。

このような状況下では、いかにネットや電話に制限を加えようが、人々の移動(とそれに伴う口コミの情報)までも完全に止めるのは不可能でしょう。

昨年来、色んな地域のウイグル人と話した限りでは、彼らは昨年の7.5事件の顛末や在外ウイグル人の動向について、意外と正確に把握しているように思えました。“ああ、誰々なら今、日本に居るんでしょ?”みたいな感じで。

ネットや国際電話が使えなくても、口コミのネットワークで情報が回っているらしい。

その一方で、南部の田舎の方では

“どっかの漢人がウイグル人の赤ん坊を料理して、食っている動画がYoutubeにアップされてる!”

みたいな、とんでもないデマもまた、流れていたんですけどね。

あの、ただでさえエロ+グロに厳しいYoutubeがその手の動画を野放しにするなんて有り得ない話であり、少し考えれば嘘だって分かりそうなものですが、そういうことは、多分、我々が普通にネットを使える環境で暮らしているからこそ、言えることなんでしょう。

あちらでは、ネットが禁止される大分前から、(中国領の他の地域と同じく)Youtubeなんてものは見れなくなっており、確認のしようが無いわけで。

デマと言えば、漢人の側でも昨年の9月頃、ウルムチで“ウイグル人が、HIVのウィルスのついた針で漢人を無差別に刺しまくっている”等の噂が広まり、不安に駆られた漢人系住民が治安の強化を求めて大規模なデモを起こす、といった騒動がありました。

彼らが必要以上に不安を増大させ、そうした噂を信じるに至った原因の一端もまた、ネットを始めとする通信規制にあったといわれています。

 今回の情報統制の目的は“外部からの<悪しき情報>を遮断”すると同時に、“民族間の対立を煽るような言説が拡がるのを阻止”することにあった、というのがあちらのお上の言い分なわけですが、現実には、そうした規制はかくの如く人々の間に疑心暗鬼を生じさせ、却って民族対立を悪化させただけなのですよ。

でもって、“外部からの<悪しき情報>”なんかも彼らが思っているほどには遮断なんてできてないはずで....。

全然ダメじゃないですか。

この10ヶ月の間、ネットが使えなかったことで大きな打撃を受けたのは、町のネット屋だけではないでしょう。旅行会社なんかも大変だったらしい。その手の経済的な損失がどれほどの額に登るか、詳しいことはよく分かりませんが、結局のところ、それらは、単なる“ムダ”だったということになります。

↓ウルムチのウイグル人地区、ドン・キョウリュック(漢語名:二道橋)で見かけた政府広報。

“3つの不可分性 - 漢人を少数民族から分かつことはできない。少数民族を漢人から分かつことはできない。それぞれの少数民族を互いに分かつことはできない”

※中共の中の人たちは、本当に“三”という数字が好きらしい。“三光作戦”とか“三種の敵対勢力”とか“サンバルカン”とかね。あ、最後のはちょっと違うかw。

ちなみに、約800万というウイグル人の人口は、中央アジアの主要民族の中ではウイグル人、カザフ人に次いで3番目。この辺では立派に“大民族”の部類に入る。それが、どうして漢人と一くくりにされて“少数民族”なんて呼ばれねばならないのか?

すぐ隣にあるクルグズスタン(キルギス共和国)の基幹民族であるクルグズ人なんて、新疆側で暮らす同族を合わせても400万に満たないにも拘わらず、独立国家を持っている。その2倍以上の人口を有するウイグル人がどうしてダメなのか?

そうした素朴な疑問にきちんと答えられない限り、この手のスローガンは意味を持たないだろう。

いや、ムダですよ。本当に。 今回のネットの件に限らず、新疆に関する中共のやり口を見ていて感じるのは、道義的に善いとか悪いとかいった以前に、とにかく無駄が多いということです。

国際情勢の変化も、自国の社会構造の変動も理解できない、“頭の中が完全に文革時代で止まってしまったような”党官僚が、自ら問題をこじらせて、ひたすら統治というか包摂コストを上昇させている。お陰でウイグル人も漢人も、たまに彼の地に出入りする外国人も迷惑を被っている。そんな感じですか。

最近の、彼の地でのゴタゴタの根底にあるものが、決してお上が言っているよな“外在的な要因”なんかではなく、

“高等教育からのウイグル語の排除など、民意を無視した強引な同化政策”

だとか、

“漢人移民の増加により、従来の生活圏が破壊されることへの原住民族の不満”

だとか、

何よりも

“自治区政府とは別個に存在する、<国家の中の国家>のような党直結の屯田兵組織(=生産建設兵団)が利権を独占するような歪な経済構造と、それに基づく南北間の大きな経済格差”

といった、ことごとく“内在的”な問題であることは、もはや誰の目にも明らかな訳です。

→(3)に続く


再び生存報告+新疆の情報封鎖が未だに続いている件(1)

2010-04-29 23:27:44 | 東トルキスタン関係

前回の更新から1ヶ月近くも間が空いてしまいました。管理人はまた死んだのではないか?と思っている人もいるかもしれませんが、一応まだ生きています。

で、長らく更新ができなかった理由なのですが、実はちょっと用事があって、今月の初めごろから新疆のウルムチの方に行っていました。あちらでは、何ヶ月か前の日記にも書いたような“ネット鎖国”状態が今なお続いており、ブログの更新どころか、ネットへのアクセスすら不可能だったのです。

というか、元々あちらでの滞在予定は一週間くらいであり、用が済んだらとっとと管理人が現在住んでいる国=クルグズスタン(キルギス共和国)に引き揚げるつもりだったんですけどね。

それが、ちょうどウルムチを出ようと思っていた矢先に、何とその国で5年ぶりの“革命”が勃発してしまったわけで...。

“5年ぶり”というと地震か何かの話をしているようですが、一応“革命”です。“IT革命”みたいなモノの喩えでもないし、“脳内革命”や“人間革命”のような怪しい革命でもない。ガチに政治的な“革命”ですよ。

これによって前体制は文字通り一夜にして雲散霧消。治安機関が麻痺した首都ビシュケクでは群集による略奪、政府関係の施設に対する襲撃が相次ぎ、国内は一時的に無政府状態に陥ってしまいました。

クルグズスタンは中国(新疆)と直に国境を接しているのですが、混乱が波及するのを恐れてか、中国政府は国境を完全に閉鎖。まあ、そちらのルートを通るには南部のカシュガルを経由せねばならず、ウルムチからだと第三国のカザフスタンを経由した方が便利なので、その辺は別に大した問題ではなかったのですが....

参考:クルグズスタン(キルギス共和国)の位置。なお、首都のビシュケクはこの地図には載っていないが、大体カザフスタンのアルマトゥの左下辺りだと考えればよい。

出展:“東トルキスタン情報センター”のサイトから引用

困ったことに、そのカザフスタンまでもが似たような理由でクルグズスタンとの国境を閉じてしまったのです。

ギャフン。

陸路 は全部ダメ。

となると、残るは空路です。ウルムチからビシュケク(クルグズスタンの首都)への直行便は、あちらの反対派(=現政権)勢力が比較的早い時期に空港を押さえたということもあって、この革命騒ぎの中でも一応、飛んでいるとの話でした。

でも、チケットが予想以上に高かったのと、あと、荷物の量が多くて莫大な超過料金を取られそうな雰囲気だったので、結局、これもパス。

そんなこんなで、それから一週間くらい後(4/16前後)にカザフスタン当局が第三国の人間に国境を開放するまで、ウルムチでしばらく足止めを食う羽目になったわけです。

まあ、こちらに戻ってきたら戻ってきたで、(一頃の無政府状態に比べればマ シだとはいえ)政情不安はまだまだ続いており、色々と面倒だったんですけどね。

それについてはまた後ほど書くことになるでしょう。

ところで、産経新聞のこの↓記事を読むと、新疆における情報規制は徐々に緩和されつつあるように思えるわけですが、

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 「約8カ月半ぶりにメール規制解除 監視は続く 新疆ウイグル自治区」   2010年3月22日
http://sankei.jp.msn.com/world/china/100322/chn1003222037004-n1.htm  
 
【北京=川越一】中国国営新華社通信などによると、昨年7月5日の大規模暴動以来、中国新疆ウイグル自治区で続いていた電子メールの送受信停止措置が、22日までに解除された。昨年末から徐々にウェブサイトの閲覧などが解禁されてきたが、暴動発生から約8カ月半を経て、ようやく市民の通信環境は正常化に近づいた。

中国政府は暴動発生後間もなく、国外の独立派勢力がインターネットや携帯電話を利用して、暴動を扇動し連絡を取っていたとして、自治区内でのインターネットや携帯電話、国際長距離電話などの通信サービスを停止した。

(中略)

昨年末に官製メディアのウェブサイトの閲覧を解禁。1月には利用者の多い2つのポータルサイトの閲覧も可能になった。その後、長距離電話やショートメールの規制を段階的に緩和。今回は電子メールの停止措置と、1日20件までとされていたショートメールの送受信制限も解除された。 

暴動後、漢族の流出に伴い下落した不動産価格も回復傾向にあるという。規制解除は中国政府の自信の表れともとれるが、閲覧可能なウェブサイト数はいまだ32に制限されている。今年2月には自治区の公共治安法が改正され、違法犯罪行為を防止するためにインターネットの監視が強化されたとの情報もあり、住民は今後も規制の輪の中での生活を強いられそうだ。

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これには多少カラクリがあります。

確かに規制が緩和されているのは事実なのでしょう。 でも、既に昨年の秋の段階で、地元民や現地在住の外国人の間では、大企業や政府機関、党関係の組織やそれと強いコネを持っている個人は、自由にネットにアクセスできているらしい、というのが専らの噂でした。

地元民の中には,

“党関係のツテがあるから、これこれの金額(=かなりの大金)を払えば、ネットやメールが使えるぞ!”

と話を持ちかけてきた怪しい奴もいましたね。それには乗らなかったので、今となっては真偽のほどはよく分かりませんが....。

今回の規制解除というのは“元々(党に近い)一部の人々のみが使えていた”という状況を公に追認するか、あるいは使える人間の範囲を“上の方”でほんの少し拡げただけの話ではないか、という気がするわけです。

その一方で、かねてよりネット屋に通っていた人たち、つまり大多数の人民にとっての通信事情には、3/22以降も何ら変化はありません。

あちらのネット屋をちょっと覘いてみれば分かりますが、どの店でも閑古鳥が鳴いていますよ。この10ヶ月の間に、潰れた店も多いらしい。たまに繁盛しているところもありますが、ネットを使っている客は皆無。目に付くのは(非オンラインの)ゲームをやっている子供ばかりという....。

どうしてこうなったか?

理由は簡単です。

上の記事の中で

>閲覧可能なウェブサイト数はいまだ32に制限されている。

とありますが、

ネット屋で見れるサイトの大半は、自治区政府の公的サイトか、その息のかかったものばかりなのですよ。

要するに、ネット屋からアクセスできるのは、言わば“インターネット”ではなく、質の悪い新疆限定の“イントラネット”だというわけです。

あまり有用な情報は得られない上に、yahooやgoogleはもちろんのこと、ほとんどのwebメールも使えない。ネットゲームなんかも当然無理。見れるのは役所のサイトだけ。

こんなネット屋に誰が行くでしょうか?

海外への長距離電話についても、事情はほぼ同じですね。

新疆では、基本的に今でも国際電話は不可です。

但し例外が2つあって、一つはウルムチの“中国電信(China telecom)”に直接出向いてパスポートなどの身分証明書を提示。バカ高い通話料を支払うと言う方法。これも昨年秋の段階で可能でしたが、外国人と地元民では大分事情が違うのではないかと思われます。
 
もう一つは、中国でも新疆以外の地で登録されている携帯電話を使うこと。

今回、クルグズスタンで革命が起きたことをTVのニュースで知り、ビシュケクの知人に電話をかけようとバタバタしていたら、北京から来ていた知人が携帯を貸してくれまし た。

昨年の秋にはいかなる携帯も海外通話なんてできなかったことを思いだし、どうせ無理だろうと タカをくくっていたのですが、意外にすんなりと通話ができて驚きましたね。これも“緩和”の賜物なのでしょう。 

いずれにしても、普通の新疆の地元民、特に地方の人々には無理ですね。ネットと同じです。一部の人間には使えるようになっても、大多数の住民はアクセス不可という。

そう言えば、グルジャ(伊寧市)からウルムチに行く夜行バスの中で会った中国籍のクルグズ人も、“昨年の7月以来、あっち(=クルグズスタン)に住む親戚とずっと連 絡が取れなくて困ってる”みたいなことを言っていたような...。
                
→(2)に続く


ラビア=カーディル来日に対するトルコ人の反応

2009-07-30 08:01:18 | 東トルキスタン関係

“世界ウイグル会議”のラビア=カーディル議長が来日しましたね。まあ、この人の発言はしばしば誇張気味だ、とか、あと“世界ウイグル会議”も“全米民主主義基金”から支援を受けている以上、米国のヒモ付きではないか?”とか、色んなことを言われているわけですが、いかにそれが事実だとしても、自派を有利にするためのプロパガンダや“敵の敵”と結ぶ戦術は政治のイロハです。ある程度は仕方がないでしょう。徒手空拳では、圧倒的に強大な圧制者と喧嘩などできないわけで。しかも相手はあの中共ですw。

ラビア議長というのは、元は中国有数の大富豪でした。改革・開放時代に洗濯屋からのし上がったという模範的な“少数民族”の成功者であり、富にも名誉にも十分に恵まれていたわけです。彼の地の社会的な矛盾や苦しむ同胞には目もくれず、余計なことを言わずにただ体制に従っていれば、一族の未来は安泰だったはずなんですよ。それらを全て放擲して同胞の為に尽くしているという点だけをとっても、尊敬に値する人物ではないかと思うのです。

中央アジアとかあの辺のエラい人は、自分の一族と知り合いさえ富めば社会も国もどうなってもいいや”みたいなのが普通なので、余計にそう感じるのかもしれませんが。

そのラビア議長が日本に来たということで、中共の連中がえらく怒っているらしい。2日前の産経の記事で、こんなの↓がありました。

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 【ウイグル暴動】世界ウイグル会議議長来日で中国内に反発広がる 2009.7.27 19:52
http://sankei.jp.msn.com/world/china/090727/chn0907271954004-n1.htm

【北京=野口東秀】世界の亡命ウイグル人組織を束ねる「世界ウイグル会議」のラビア・カーディル議長(62)=米国在住=の28日からの日本訪問をめぐり、中国外務省は27日、「日本政府は中国が何度も申し入れたことを顧みず、カーディル(氏)が日本を訪問し反中分裂活動を許したことに強烈な不満を表明する」とする報道官談話を発表した。

中国政府は新疆ウイグル自治区で5日に起きた暴動でカーディル議長を「扇動の黒幕」と名指しで非難、各国のビザ(査証)発給に神経をとがらせているが、この件で反日感情が広がることも懸念しており、激しい批判は控えている。

中国共産党機関紙・人民日報傘下の「環球時報」は27日、インドの地元紙の報道を引用する形で、ウイグル暴動前にカーディル議長がインドにビザ(査証)を申請したが、「インド領土内で反中的政治活動は許可できない」(インド外交筋)として「拒絶」されていた事実を挙げ、日本の対応は「非常に非友好的だ」との学者の声を紹介した。

記事には外交学院アジア太平洋研究センターの蘇浩主任の「(日本政府が)ビザを発給したのは、中国の台頭を抑えるためであり、西側諸国への追従でもある。中日関係に大きな障害をもたらすことになる」との批判も掲載された。

この報道を受け、インターネット上の掲示板には「日本を地球上から抹殺せよ」「日本製品の不買運動をしよう。中国は強大になった。打倒、小日本(日本への蔑称)」「日本の野心は永遠に変わらない。核兵器でつぶせ」などの書き込みがあふれた。


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「非常に非友好的」だとさw。大笑いですね。日本政府は単にビザを出しただけであって、ラビア議長を招いたわけでも、亡命を受け入れたわけでもないのにね。

この程度で大騒ぎするのであれば、まずは議長の亡命を受け入れて、これに支援までしている米国に噛み付くのが先でしょう。大勢のチベット人“民族分裂主義者w”とその亡命政府を何十年も抱え込んでいる、インドもお忘れなく

大体、“世界ウイグル会議”は彼の地で一から暴動を起こせるほど大がかりな組織ではありません。そのことは、“チベット亡命政府”やダライ・ラマのことは熱心に監視していた中国当局が、つい最近まで、そちらには大して関心を払っていなかったことでも分かるでしょう。自分自身の経験でも、数年前、カシュガルのネット屋でチベット独立派関係のサイトにアクセスできるか試してみたら、軒並み表示されなかったのに対し、東トルキスタン関係のは普通に見れましたから

で、中共の中の人たちは民族政策の失敗と統治能力の低下を自国の人民らに悟られないよう、ラビア議長やウイグル会議を巨大な“藁人形”に仕立てて大騒ぎしているわけです。それに日本も絡めれば、ナショナリズムを刺激してさらに人民の注意をそちらに向けることができる。それに、相手が米国だとあれだけど、日本であれば少し強い態度に出ても大丈夫だというわけで。

共産党の思惑はそんな感じかもしれませんが、あちらのネット人民たちの反応は本当にそんな具合なのでしょうか?産経の記事だからちょっと色をつけてるんじゃないかと思って、こちらの↓翻訳サイトを覗いてみたところ、

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「ansan's楽しい中国新聞(中国ニュース)」
http://ansan01.blog121.fc2.com/blog-entry-222.html

干涉他国内政,不会有好下场。全中国人民万処ル一心杀鬼子暑x!
(他国の内政に干渉する連中にはロクな運命は待ち受けてねえよ。全中国人は気持ちを一つにして日本鬼子を殺そうぜ!)

死鬼子,没看印度没敢发!
(死鬼子め。インドでさえビビってビザ発給できなかったのによ。)

充分说明了我们的敌人不是印度是日本。
 (中国の敵はインドではなく日本だったってことだな。)

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実際、こう↑らしい。ダメすぎるw。これも“愛国教育”の成果なのか?一体どっちが”内政干渉”なんだか。いい加減、自国民のガス抜きに他所の国を巻き込むのはやめて欲しいものですが。

しかし、こういうダメな愛国心の昂揚を見ていると、彼の地の民族問題はいかに体制が変わっても、解決しなさそうな気がして何だかうんざりしますね。

ところで、ラビア議長来日のニュースはトルコでも報道されました。これ↓は7/27日の日刊紙“ヒュリエット”の記事です。コメントは意外と沢山付いていました。
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「日中間に“カーディル”危機」  2009/7/27
原文:Çin'le Japonya arasında 'Kadir' krizi

http://www.hurriyet.com.tr/dunya/12154909.asp

中国は、予定されているウイグル人独立派の指導者ラビア=カーディル氏による日本の首都・東京への訪問を、激しく非難した。

※ 中国領のウイグル人の間では、“姓”は存在せず、普通は名前+父親名。つまり、ラビア=カーディルのラビアが名前、カーディル(男性名)は彼女の父親の名である。オスマン帝国時代のトルコでも同じく姓の概念は存在しなかったが、革命後は各々固定した“姓”を持たされることになった。そういうわけで、この記者も“カーディル”を姓とみなし、文中では彼女を指して“カーディル(氏)”という名を使っているが、何となく妙な感じなので訳文では全て“ラビア”と改めた。

日本の共同通信の報道によれば、在日中国大使のスイ=ティエンカイ(崔天凱)氏は記者会見の場で“日本である重大犯罪が起こり、その首謀者を第三国が招聘したとしたら、日本の人民はどう感じるだろうか?”との表現を用いて語ったとのこと。

スイ(催)大使はまた、ラビア氏の訪日が、近年好転しつつあった日中関係に害をもたらすのは許されるべきではない、と警告しつつ、“共同で取り組む必要のある案件が一人の犯罪者により損なわれたり、もしくは共通の利益に向けられている注意が他の件にそれてしまうのは防がねばならない”と言った。

中国は、今月、新疆ウイグル自治区に於いて発生し、200人に近い犠牲を出した騒憂事件を計画したとして亡命中の世界ウイグル会議の指導者、ラビア氏を訴追。一方のラビア氏は、こうした主張を否定している。

来日はシンポジウム出席のため

ラビア氏は、日本の首都・東京で7月29日に開かれるシンポジウムで講演を行ったり、またメディア向けに記者会見を開くことになっている。来日が待望されているのはそのためだ。

中国ウオッチャーらが注目しているのは、中国政府が、昨年発生した民族紛争を扇動したとして訴追しているチベット亡命政府の指導者ダライ・ラマの外遊については常々非難してきたのに対し、ラビア氏の外遊を声高に批判することなんて、これまでほとんどなかったという点である。

<ハルクのコメント>

論評ハルク1号
どの国にも同じ脅しをかけてるんだな。どう関係が悪化したとしても、日本は世界の技術大国なんだよ。お前らのガラクタなんざ要るもんか!


論評ハルク2号
>1号
いくら日本が技術大国だといっても、中国には最安の労働力がある。日本人たちは技術を発展させてはいるが、その製品は中国で生産されてるんだ。残念なことに、どの国も同じく中国に縛られるか、あるいは近いうちに縛られる運命にあるわけだ。


論評ハルク3号
日本人たちはラビアのことを心配してくれるんだな。あのAKP(公正発展党)が中国にびびってビザを出さず、入国もさせず、アラブ人じゃないから支援もしないあのウイグル人のことを….。

※ この人は世俗派で公正発展党が嫌いらしい。現在の公正発展党政権は、何年か前にラビア=カーディルがトルコを訪れようとした際、ビザの発給を断っている。また、アラブ人云々というのは、ガザ紛争の際に派手な反イスラエルのパフォーマンスで支持率を向上させた公正発展党とエルドアン首相が、今回は相手が中国と言うことで引き気味になっていることに対する皮肉かと思われる。


論評ハルク4号
中国はもちろん嫌がるだろうよ。あいつらがやった虐殺や、拷問や、諸々の汚いことを喋ってしまうだろうからな。あいつらはそれが話題になることすら我慢できないわけだ。奴らの目的は、東トルキスタンに住むテュルクを絶滅することにある。


論評ハルク5号
漢人たちは、世界にテュルク系民族が一人も残らなくなるまで虐殺を続けるだろう….。奴らは俺たちに対し、歴史に根ざした敵意をもってるんだ。


論評ハルク6号
日本と言うのは反中の国なんだよ。中国人は日本人が嫌いだし、日本人も中国人のことを嫌ってる。


論評ハルク7号
昔、中国市場というのは世界でこれほど支配的じゃなかった。というか、中国って貧しかったんだよな。今では真の意味で強国化、富国化しつつある。10年後、奴らが空母を何隻も買い込んで、うちらの国境に迫ってきたとしても、全然驚かないだろうよ。もちろん、俺たちの側だって国民の9割は中国製品を手放せていない。中国の強国化は、俺らにも責任があるってことだ。


論評ハルク8号
うちは日本みたいにはなれなかったんだな….
※かつてラビア=カーディルがトルコのビザ発給を拒否されたことを言っている。


論評ハルク9号
分離主義は、どの国でも罪だ。そして、罰せられるものなんだ。俺たちの国がPKK(クルド人独立派の通称)に懲罰を与えようとして、長年果たせずにいるようにな。中国は強力な国で、分離主義は認めていない。俺たちもそういうことができればなあ

※ かつてのトルコ共和国は国内のクルド人に対しては徹底した同化政策をもって臨んできたが、近年ではEUに入るために、文化的な自治を認める方向に動きつつある。ただ、国内には他にも様々なエスニック集団があるものの、彼らにはその種の権利はほとんど認められていない。

論評ハルク10号
漢人たちがやらかした残虐行為は、外道の所業だな。


論評ハルク11号

我らがトルコ国家に、日本ほどの“漢の国”となるのを期待するのは、夢物語だろうか?


論評ハルク12号

俺に一つ考えがある。漢人らに腹が立つのであれば、中国で迫害されているテュルク系民族をトルコに受け入れて、みんなで助けてあげようじゃないか!

※ 既に1950年代にやっている。中共の支配を逃れて国外に流出したウイグル難民は、一時期アフガニスタンやパキスタン北部に住んでいたのだが、当時のトルコ政府はこれを大量に受け入れた。その中には、かつての東トルキスタン共和国の関係者も含まれていたという。ウイグル系トルコ人の数は、全国で現在3万ほど。なお、“世界ウイグル会議”は、これらウイグル系トルコ人たちの互助組織が母体となっている。


論評ハルク13号
中国はテュルク系民族が一人も残らなくなるまで虐殺を続けるだろう、とかいってる奴がい居るけど、確かに歴史的な敵意ってものはあるだろうな。かつてテュルク系遊牧民の南下を防ぐために造られた、万里の長城を見るまでもなく。でも、たかだか200人程度のテュルクを殺しただけでこれだけ騒ぎになるということは、中国当局はこれ以上度を越したことはしないんじゃないか?と俺は思うんだが……

※トルコのメディアの一部には、中国当局が発表した死者約200人はすべてウイグル人だと報道しているところがある。


論評ハルク14号

漢人たちはトルコ人を憎む余りに、ヨーグルトすら食えないんだ

※西欧諸語の“ヨーグルト”という言葉はトルコ語(あるいは別のテュルク系言語)に由来している。ブルガリア語ではないので誤解無きよう。ちなみに、あちらでのヨーグルトは日本で言えば味噌レベルの基本的な食材で、あらゆる料理に使われる。でも、普通の中国人はそんなこと知らないだろう........。

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この中で一番印象的なのは“9号”ですかね。クルド人について何か言われた時の普通のトルコ人の反応は、結構こんな感じだったりします。基本的に自己中な人たちなんですよ。でもって、それは何だか、チベットやウイグルに関して突っ込まれたときの漢人の反応を思わせるという……。

最近はお互いにあれこれ言ってますが、両者は意外とよく似ているのかもしれません。当人らが気づいていないだけで。



 


トルコのメディアは、東京のウイグル支援デモをどう報道したか?

2009-07-28 00:32:44 | 東トルキスタン関係

二週間ほど前、東京都内で在日ウイグル人らを中心に、ウルムチ事件への抗議デモが行われたとのこと。

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『ウイグルに自由を』 都内で700人デモ  2009年7月13日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2009071302000091.html

中国新疆ウイグル自治区で発生した暴動で、日本在住のウイグル人ら約七百人が十二日、東京都内でデモを行い、中国政府の少数民族政策に抗議した。

デモに先立ちあいさつした在外ウイグル人組織「世界ウイグル会議」の日本代表、イリハム・マハムティ氏は「今回の事件は突発的ではなく、六十年来の怒りが爆発したものだ」と主張。ウイグル人が差別的な待遇を受けてきたことが事件の伏線にあると訴えた。

この日は日本在住のチベット人やモンゴル人、台湾人らも参加。亡命チベット人で、桐蔭横浜大学のペマ・ギャルポ教授は「われわれの戦いは、民族の文化を守り抜くための正義の戦い。明日、あさってに終わるものではない」と諸民族が連帯し、中国政府に圧力をかけていくよう呼びかけた。

この後、渋谷駅周辺を約三キロ行進し、「ウイグルに自由を」などとシュプレヒコールを上げた。

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これ↓が実際のデモの模様らしいのですが、


時々“マスコミは真実を報道しろ!”とか“NHKは捏造をするな!”みたいな、ウイグルとはあまり関係の無さそうなシュプレヒコールが聞こえるのは気のせいでしょうか?

その辺が謎だったのですが、どうやら一部の参加者に対し、“チャンネル桜”界隈から以下のような↓通達が出回っていたらしい。なるほど。そういうことか。
http://blog.livedoor.jp/antijapanhunter/archives/51222406.html

■中国政府によるウイグル人虐殺 抗議デモ■

【日時と場所】 平成21年7月12日(日) 13時00分 中国大使館前抗議行動 (場所が分からない方は、六本木駅6番出口に12時50分に集合してください) 
         (中略)
 ※「NHKの大罪」Tシャツを「中共の大罪」に修正するシールをお分けしますので、是非、「NHKの大罪」Tシャツを着用してください。


「NHKの大罪」Tシャツというのはこういうもの↓だそうで….。


ちなみに、これ↓は何年か前に釜山の服屋で買った「竹島は韓国のものだ」Tシャツ。


どこか似ているのは、用途が同じだからか?

とりあえず、どちらを着ててもモテなさそうですがw。まあ、こういうのを着てる人たちは具体的にウイグル人の事がどうこうというよりも、とにかく中国を叩くための口実が欲しいんだろうなあ。

でも、今のようにウイグル問題をほぼ全世界がスルーしている状況下にあっては、いかなる支援デモであれ貴重なことは間違いありません。普通の人の参加は期待できないですしね。

このデモの模様は、トルコの複数のメディアでも報道されました。

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 「日本人たちがウイグル人を支援」   2009/7/14
原文:Japonlardan Uygurlara Destek
http://www.haberim.net/japonlardan-uygurlara-destek-haberi-328/

日本の首都東京に於いて、東トルキスタンで進行中の蛮行を非難するため、2000人余りの人々の参加による集会が催された。集会には日本の政治家たちをはじめとして、日本在住のチベット人、モンゴル人、台湾人らの参加者が多かった。このような動きは、在日トルコ人たちからも支持されている。

集会では日本、東トルキスタン、トルコ、チベット、それに台湾の国旗が掲げられたが、中でも、キョク・バイラック(青天新月旗=東トルキスタン共和国の旗)が東京の街角で翻るのが見られたのは、貴重なことだ。

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参加人数が倍以上に増えているような気もしますが、あちらの報道ではよくあることです。だからそれはいいとしても、問題は記事に添えられていた写真なんですよ。

どんな写真かと言うと、

↓コレなんですが......


えーと….。

“キョク・バイラック”でも日章旗でもなく、どう見ても太極旗ですw。ありがとうございました。

東京じゃないよな、これは。

くどいようですが、あちらの人間のほとんどは、東アジア諸民族の区別なんてついていません。それは一般人だけの話ではなく、メディアの人間でもこれほど豪快に写真を取り違えるほどなのです。

ただですね、最近ちょっと気になるのは、Youtubeでは現在トルコ人と中国人の間で動画の投稿合戦、罵倒合戦が続いているのですが、トルコ人のコメントで“中国製品をボイコットして、日本と韓国のものを買おう!”とか、“漢人は太古からの敵だが、日本民族と朝鮮民族は俺たちの味方だ”みたいなのがやたらと目につくことです。

何か”日本と韓国”で一セットなんですよ。あたかも”ボスニア・ヘルツェゴヴィナ”とか昔の”チェコスロヴァキア”みたいな感じで使われている。でもって、中国からはきっちりと区別されている、という。

これには、あちらの大衆の間で根強い人気を持つ極右的な民族主義思想の一つ、“汎トゥラン主義”トゥランはイランの対概念で、ほぼ現在の北・中央アジアを指す)も影響しているのかもしれません。この思想は、要するにトルコ語と近い関係にあるアルタイ系やウラル系の言語を話す諸民族を政治的に統合して一つの国を造ろうという考え方です。この思想を信奉する人たちは、モンゴル語や満洲語のみならず、朝鮮語や日本語もアルタイ系言語の中に入れてしまうのが普通ですね。つまり、日本人や朝鮮人は漢人とは区別して、同胞とみなすわけです。あくまで“観念的な”同胞ですけどね。

そういう土壌があるのは確かなんだけど、自分自身の経験から言っても、最大の転機はやはり2002年のワールドカップであるような気がします.。

なお、このニュースサイトではこの記事についてのコメントは未だ一つもありません。他のニュース系サイトの似たような記事でも同じ。ウイグルネタは、内容によっては何百も書き込みがあったりするんですけどね。日本での反応にはさほど興味がないということか?