あるタカムラーの墓碑銘

高村薫さんの作品とキャラクターたちをとことん愛し、こよなく愛してくっちゃべります
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お上の車をお堀へぶち込んでやろうか (単行本版p205)

2007-10-30 00:43:48 | マークスの山(単行本版改訂前) 再読日記
『作家的時評集2000-2007』(朝日文庫) は、先週の出勤日全て残業だったため、全然読めてません。あともう少しで、2001年度の分を読了できるってのに。
あと10分で日付が変わる頃に、家の玄関に辿り着くってどうよ!?  一日の半分以上も会社に居たくないわー!!  (心からの叫び)

・・・今週は、多分、ちょっとは残業が減ると思うので、1つでも更新したいです。

「AERA」2007年11月5日増大号の「平成雑記帳」は、車社会について。来月からガソリン代も値上げするそうですし、ますます車は売れにくくなると思いますが。

***

2007年10月14日(日)の単行本版(改訂前)『マークスの山』 は、三  成長のp167からp218まで読了。
珍しく日曜日に読んでいるのは、京都へ外出したからです。

今回のタイトルは、林係長の無駄話を聞かされた合田さんがキレて、考えたこと。もしも実行した場合、この時点で時速60キロのスピードらしいので、合田さんも無傷ではすまないだろうに・・・。


【今回の警察・刑事や、検察・検事に関する記述】

★あとから出てきたネタを振りかざして人の発言を正すのはルール違反だ。 (p169)

お蘭の「若さ」が出た部分ですね。指摘した相手が、同じ七係の肥後さんであっても、お蘭はまったく容赦なし。

★内部の不祥事があると、事の大小にかかわらず、どこかでそれとなく幹部の内部調査が始まり、それとなく終了するのが常だった。 (中略) だが情報の漏洩の場合は、疑惑の対象が広範囲に及ぶので、疑心暗鬼は深く、密告にしろ中傷にしろいっそう陰湿になる。 (p185)

いやーねー、もーう。
多分、合田さんは貴代子さんの一件で、前者の内部調査を受ける身になったことでしょう。

★刑事をやってて事件直後の時点で判断材料がなかったという弁解は通用しない。 (p189)

「疑わしきは全て疑え」・・・でしょうか? 怖い職業だなあ。

★内部ではいろいろあるが、外に対しては、よくも悪くも警官はみな一枚岩になる。 (p198)

うん、これは警官に限らないでしょうけどね。業界や組織、あるいはファンというのは、そういうものです。ファン同士であれこれと好きなこと嫌いなこと、良いこと悪いことを語り合うのは構わないのですが、ファンでない人に、主に悪口を言われるのって、イヤなもんですよね。


【今回の名文・名台詞・名場面】
【お願い】 ピックアップした部分で「私の持っている『マークスの山』には、こんな文章は無かった」と気づかれた方。それは「改訂後」の可能性が高いです。よろしければ、ご一報下さいませ。私に、比較している余裕が無いものでして。よろしく願いいたします。

★こと暴力団に関する限り、それを厚顔に弁護する人間に、合田は好意的な印象など持てなかった。 (p171)

でもって、四課の苦労も並大抵なもんじゃないんですよ、合田さん。もしもあなたも四課に配属されていたとしたら、その潔さを保っていられるかどうか・・・。

★ともかくその小さな出来事を経験した後、個人の生活がそうして目に見えないところに張り巡らされた情報網に捕らえられ、歪曲され、伝えられていく権力構造の内側に、合田は深い恐怖と失望を懐いた。それは貴重な勉強だった。 (p175)

小さな出来事とは、貴代子さんが発端のアレなんですが、「貴重な勉強」と割り切った合田さんも、しぶとい。
このことで「異端」(須崎さんを筆頭とする、合田さんを敵対視している面々は「アカ」と呼んでおりますが)と周囲から目されることになったというのも、辛いよなあ・・・。

★年月を経た今、合田は、権力のありのままの現状から目を逸らすことによって、得るものは何もないという考え方に変わってきていた。ここまで来るのは長い道のりだった。権力とは無縁のところで、日々社会の底辺で起こる惨めな犯罪を地道に防いでいくことが自分の努めだと思ったところで、その自分自身が警察官である限りは権力の一部であり、目に見えない情報網の一部であった。その中を巧みにかいくぐることなくして、警官としての生命も、実績も、捜査もあり得ないことを学んできた。そのための隠微な状況判断でどんなに身を削ろうが、犯人さえ捕まればそれで報われる。そういう気持ちは、須崎とて同じだろう。 (p175)

合田さんの「刑事」としての基本姿勢が、ここでも窺えますね。一つ一つ事件を片付けていかないと、「刑事」として生きてはいけないのだから。

★合田は最初から、勘違いにしろ物忘れにしろ、正しくない証言をする者は基本的に信用しない主義で、その林原なる弁護士との面接は重要だと考えていた。 (p181)

まあ、これも「刑事」なら当然の姿勢ですね。

★いつものことだった。二つの事件をつなぐ糸が見え、畠山に金を渡した何者かが浮かぶかも知れないというときに胸が躍らないのは、ただのアマノジャクだろう。過去の個人的な苦汁のわだかまりが、神経や血の中に瘤をつくっているのか、ときどき血の巡りが悪くなり、押しのけることのできない不穏な靄がかかってくる。そうでなくとも、みなが走るときに走れず、みなが笑うときに笑えないズレは、いつも意識していた。それにこのくそズック。 (p182~183)

最後は八つ当たりだな、合田さん!

★それ以上のことを考える忍耐も感性も、合田には持てなかった。とくに事件の最中には持てなかった。広田と一緒にいると、そうしていつも、逆に殺伐とした自分の心臓の内側を覗き見るような思いにさせられる。 (p192)

合田さんのような刑事さんもいれば、雪さんのような刑事さんもいるということ。タイプの違う刑事さんが傍にいれば、自身との相違点がイヤでも気づくもんです。

★だが、少なくとも、個人的な顔は決して見せない潔さと真面目さを、合田はこの男から学んだ。同時に、その無私な能面が、無意識の捌け口を求めて破れていく危うさも見てきた。評価すべきものを評価せず、認めるべきものを認めない。そのためにいくつか事件の解決を逃した悔しさは合田らが被り、本人には失点と孤独が残った。
硬直した精神は、こうして自家中毒から腐敗へと進んでいくのだろう。だが、それは林を育んできた警察そのものの道であり、また度分たち一人ひとりの道でもあるに違いなかった。
 (p204)

林係長は決して無能ではないでしょうが、いかんせん、部下たちがあれだけの個性豊かな面々では、係長としてまとめるのは本当に大変だろうなあと、同情を禁じえないのですよ・・・。
でもこの人のおかげで、現在連載中の「合田係長」の苦労も、少しは解るってもんです。

★「……そういえば、主任は登山をするんだったな。山のパーティというのは、何か特別なものですか」
「俺は人と行くのが好きやなかったから、パーティというのはよう知らん。大学の頃に山岳部の奴らと付き合った限りでは、何か特別な仲間意識のようなものがあるのは感じた。ほかのスポーツと違って命がかかっているから、エゴ剥き出しの醜い仲間の素顔も見るだろうしな。ほかのスポーツ仲間とはちょっと違うと思う」
「私らみたいだ」
 (p214)

お蘭と合田さんの会話。
念のため、「人と行くのが好きやなかった」の「人」には、加納さんは含まれていないでしょうね、合田さん?



2 コメント

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相違? (りんこ)
2007-11-01 15:39:21
からなさん、お疲れ様です。

たぶん、からなさんがはしょってるだけだとは思いますが。

P192 それ以上のことを考える忍耐も感性も、合田には持てなかった。
このあとに
「とくに事件の最中には持てなかった。」とあります。一応報告を・・・
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見逃してました! (からな)
2007-11-01 22:55:59
りんこさん、こんばんは。ご指摘ありがとうございます。
うひーん、完璧に見逃しておりました。後ほど訂正しますね。

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