まもなく 連続ドラマW「レディ・ジョーカー」 初回放送ですね。 どきどきしてきた。 ツッコミどころ満載でしょうが
だけどあたくし、本日はまともに観られません! 完璧に録画して観られるのは、来週日曜日昼の再放送まで待たないとダメなのです。
今回はHDDのB-CASで登録したので録画は出来るのですが、母と妹に頼まれた裏番組を録画しないと、半殺しの目にあう(苦笑)
初回は1時15分なので、午後11時からの「トンイ」の録画優先。(理由・母が起きていられない)
木曜日の再放送も、午後10時からの「最高の離婚」の録画優先。(理由・妹が仕事で海外にいるから)
どうして時間帯が重なるんじゃああー!
今日は1時間分だけ観ることが出来るので、今から放映ギリギリまで、『LJ』再読日記をひとまず仕上げます。
では、2/10(日)の読書分、相変わらずの義兄弟抜き、比較抜きですが。
***
【本日の名文・名台詞・名場面】
<第五章 一九九五年秋――崩壊>
★現実にやって来てみなければ分からないが、間もなく自分に訪れるのは、ほとんどめまいを覚えるほどの自由だと思うとき、たしかに倉田が言ったように、しばしの拘束も不名誉も何ほどのことはない、という気がした。倉田は一足先に、このぞくぞくするような自由への期待を味わっていたということだ。 (下巻p400)
★城山はたったいま、初めて自分の心身を呑み込む虚空に気づいた。自分はまるで音もない、重力もない、真空のようだと感じながら、城山はもう何を思うこともなく、しばらく眼下に広がる光の帯を眺めて過ごした。 (下巻p403~404)
この義兄弟の部分は後日に。
では、私が大好きな半田さんの最高の名場面。単行本よりは少し短くなってるんですが、今回は端折らずに。
★十一月六日夜、半田修平は合田雄一郎の四十通目の手紙を開き、歓喜に震えた。日を追う毎に、頭と身体が分かちがたくなってゆくかたちで愉悦は深まっていたが、いったい合田は人の腹が読める千里眼なのか、書きよこす内容といい、タイミングといい、自分とは最高に息が合っているのだった。
ソロソロ話ヲシヨウカ。
こいつは、まったく自分と同じリズムで呼吸をしている。隣で息をしている、と思うほどだった。半田は、自分の脳波や心臓の運動や体液の循環などの生理の振幅が、それにぴったりと息を合わせてくる号だの分を足して、いまやきっちり二倍に増幅しているのを感じた。そうして抑えがたく興奮しながら、半田は、定規とボールペンを使って便箋に一字一字線を引いている男の姿を額に張りつけ、それを自分の目で撫で回し、舐め回して堪能した。
社会にとって、組織にとって、事件にとって、とくに大きな意味を持つわけでもない合田という刑事は、だからこそこれ以上はない純粋な生贄と言えたが、この生贄は小羊や豚とは違い、じっくり愛でる愉しみがあった。せいぜい全自動洗濯機や高品位テレビ程度の話とはいえ、庶民に望みうる限りの高品質だと思っていた男が、実は、自分のほうから陰湿な挑発をくりかえしてすり寄ってくる変態だったのだ。それがいま、いかにも清潔そうな小さい頭に隠微な妄執を詰め込んで、寂しい一人暮らしのアパートで、この自分に宛てた手紙を毎夜書き続けている、この異様、この滑稽。先日は、生来の涼しげな目鼻だちにいくらかの放心の色を漂わせて、青物横丁駅のホームにぽつんと立っているのを見たが、半田にはその心臓の鬱々とした悩ましげな鼓動が聞こえるような気がし、倒錯した恍惚感に浸されたものだった。
ソロソロ話ヲシヨウカ。
そう囁く生贄の声は、いつぞや蒲田の教会で聴いたヴァイオリンの音色にも重なり、共鳴して震える楽器の振動は、ほとんど男の魂の震えのように感じられた。そうか。貴様、この俺と話がしたいか。ここまで来て、話の一つも出来なければ、その小さな胸が張り裂けるか。 (下巻p419~420)
★まず一言「俺がレディ・ジョーカーだ」と発した。
合田は、ほんの三十センチの距離でガラスを背にこちらを向いたまま、これも一言「ああ」と応えた。まったくなんの表情もない顔と声だった。その一瞬、半田また少し目の前の見知らぬ顔に見入り、これは誰だ、いまの「ああ」は何だと性急に自問して、わずかに混乱した。 (下巻p430)
★半田はもう一言、「俺はもう考えるのに飽きた」と口にした。すると谺のように「俺もだ」という言葉が返ってきたと同時に、その口許にふわりと笑みが滲んだ。
それを目の当たりにしながら、半田は最後のめくるめく物思いに頭を引き裂かれ、さらに自問したのだった。こいつもどうでもいい人間の一人に過ぎないくせに、この期に及んでまだ、この俺に謎を突きつけてくるか。まるで未だに何者かであるような面をして、俺の前に立ちはだかるか。その目は何だ。その笑みは何だ。こいつは、これでもまだ自信に満たされた順調な人生の途上にいるつもりか、それとも心底狂ってるのか。狂った頭で四十一通もこの俺に手紙を書いたのか。俺をからかったのか。 (下巻p430~431)
★そうして一瞬のうちに自問自答を繰り返した間、半田はまた、昨夜から増幅し続けてきた生理の振幅が一気に高波ほどに跳ね上がるのを感じながら、荒立ってくる自分の呼吸とともに、この自分についにほんとうの爆発が訪れること、こうして自分という人間はついに押し流されること、これが自分のほんとうの終わり方だったことなどを茫然と思ったのだった。 (下巻p431)
★「言いたいことはそれだけか」
「自首してくれ」
「ああ、するとも」
半田はそれだけ応えた後、ひと呼吸置くこともなく、ナイフを手に身体ごと飛び出し、目の前の柔らかい壁に体当たりした。一瞬軽く跳ね上がった相手の顎が、自分の頭の上に落ちてくるのが分かった。子どものような淡いため息一つと一緒だった。 (下巻p431)
★「俺はレディ・ジョーカーだ。すぐに粕谷駅バス停横の電話ボックスへ来い。救急車もよこせ。いま、刑事を刺した」
半田は受話器を置き、自分の身体とボックスのガラス壁にはさんで支えている男の耳元に、「聞こえたか?」と声をかけた。しかし、垂れた頭の下から漏れてきたのは「ゆうすけ――」という意味不明の吐息の声一つだった。
もういい。俺はほんとうに考えるのに飽きたのだと独りごちて、半田は暗い車道へ目を移し、警察はまだか、と思った。 (下巻p432)
そりゃあ半田さんには意味不明な「ゆうすけ――」。 半田さんとしては、「はんだ――」と口にして欲しかったんだろうか?
<終章>
この義兄弟の部分は後日に。
★このとき久保が見たのは、白日の下で人を吸い込むように虚ろな穴を開けている左目の白濁であり、健常な右目の、憎悪を湛えて震える黒い穴であり、その二つの穴の間に、この世の悪意と混沌の一切を呑み込む虚空が据わった、蒼白な鬼の顔だった。この薬局店主はいったい何者だったのか――。 (下巻p448)
だけどあたくし、本日はまともに観られません! 完璧に録画して観られるのは、来週日曜日昼の再放送まで待たないとダメなのです。
今回はHDDのB-CASで登録したので録画は出来るのですが、母と妹に頼まれた裏番組を録画しないと、半殺しの目にあう(苦笑)
初回は1時15分なので、午後11時からの「トンイ」の録画優先。(理由・母が起きていられない)
木曜日の再放送も、午後10時からの「最高の離婚」の録画優先。(理由・妹が仕事で海外にいるから)
どうして時間帯が重なるんじゃああー!
今日は1時間分だけ観ることが出来るので、今から放映ギリギリまで、『LJ』再読日記をひとまず仕上げます。
では、2/10(日)の読書分、相変わらずの義兄弟抜き、比較抜きですが。
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【本日の名文・名台詞・名場面】
<第五章 一九九五年秋――崩壊>
★現実にやって来てみなければ分からないが、間もなく自分に訪れるのは、ほとんどめまいを覚えるほどの自由だと思うとき、たしかに倉田が言ったように、しばしの拘束も不名誉も何ほどのことはない、という気がした。倉田は一足先に、このぞくぞくするような自由への期待を味わっていたということだ。 (下巻p400)
★城山はたったいま、初めて自分の心身を呑み込む虚空に気づいた。自分はまるで音もない、重力もない、真空のようだと感じながら、城山はもう何を思うこともなく、しばらく眼下に広がる光の帯を眺めて過ごした。 (下巻p403~404)
この義兄弟の部分は後日に。
では、私が大好きな半田さんの最高の名場面。単行本よりは少し短くなってるんですが、今回は端折らずに。
★十一月六日夜、半田修平は合田雄一郎の四十通目の手紙を開き、歓喜に震えた。日を追う毎に、頭と身体が分かちがたくなってゆくかたちで愉悦は深まっていたが、いったい合田は人の腹が読める千里眼なのか、書きよこす内容といい、タイミングといい、自分とは最高に息が合っているのだった。
ソロソロ話ヲシヨウカ。
こいつは、まったく自分と同じリズムで呼吸をしている。隣で息をしている、と思うほどだった。半田は、自分の脳波や心臓の運動や体液の循環などの生理の振幅が、それにぴったりと息を合わせてくる号だの分を足して、いまやきっちり二倍に増幅しているのを感じた。そうして抑えがたく興奮しながら、半田は、定規とボールペンを使って便箋に一字一字線を引いている男の姿を額に張りつけ、それを自分の目で撫で回し、舐め回して堪能した。
社会にとって、組織にとって、事件にとって、とくに大きな意味を持つわけでもない合田という刑事は、だからこそこれ以上はない純粋な生贄と言えたが、この生贄は小羊や豚とは違い、じっくり愛でる愉しみがあった。せいぜい全自動洗濯機や高品位テレビ程度の話とはいえ、庶民に望みうる限りの高品質だと思っていた男が、実は、自分のほうから陰湿な挑発をくりかえしてすり寄ってくる変態だったのだ。それがいま、いかにも清潔そうな小さい頭に隠微な妄執を詰め込んで、寂しい一人暮らしのアパートで、この自分に宛てた手紙を毎夜書き続けている、この異様、この滑稽。先日は、生来の涼しげな目鼻だちにいくらかの放心の色を漂わせて、青物横丁駅のホームにぽつんと立っているのを見たが、半田にはその心臓の鬱々とした悩ましげな鼓動が聞こえるような気がし、倒錯した恍惚感に浸されたものだった。
ソロソロ話ヲシヨウカ。
そう囁く生贄の声は、いつぞや蒲田の教会で聴いたヴァイオリンの音色にも重なり、共鳴して震える楽器の振動は、ほとんど男の魂の震えのように感じられた。そうか。貴様、この俺と話がしたいか。ここまで来て、話の一つも出来なければ、その小さな胸が張り裂けるか。 (下巻p419~420)
★まず一言「俺がレディ・ジョーカーだ」と発した。
合田は、ほんの三十センチの距離でガラスを背にこちらを向いたまま、これも一言「ああ」と応えた。まったくなんの表情もない顔と声だった。その一瞬、半田また少し目の前の見知らぬ顔に見入り、これは誰だ、いまの「ああ」は何だと性急に自問して、わずかに混乱した。 (下巻p430)
★半田はもう一言、「俺はもう考えるのに飽きた」と口にした。すると谺のように「俺もだ」という言葉が返ってきたと同時に、その口許にふわりと笑みが滲んだ。
それを目の当たりにしながら、半田は最後のめくるめく物思いに頭を引き裂かれ、さらに自問したのだった。こいつもどうでもいい人間の一人に過ぎないくせに、この期に及んでまだ、この俺に謎を突きつけてくるか。まるで未だに何者かであるような面をして、俺の前に立ちはだかるか。その目は何だ。その笑みは何だ。こいつは、これでもまだ自信に満たされた順調な人生の途上にいるつもりか、それとも心底狂ってるのか。狂った頭で四十一通もこの俺に手紙を書いたのか。俺をからかったのか。 (下巻p430~431)
★そうして一瞬のうちに自問自答を繰り返した間、半田はまた、昨夜から増幅し続けてきた生理の振幅が一気に高波ほどに跳ね上がるのを感じながら、荒立ってくる自分の呼吸とともに、この自分についにほんとうの爆発が訪れること、こうして自分という人間はついに押し流されること、これが自分のほんとうの終わり方だったことなどを茫然と思ったのだった。 (下巻p431)
★「言いたいことはそれだけか」
「自首してくれ」
「ああ、するとも」
半田はそれだけ応えた後、ひと呼吸置くこともなく、ナイフを手に身体ごと飛び出し、目の前の柔らかい壁に体当たりした。一瞬軽く跳ね上がった相手の顎が、自分の頭の上に落ちてくるのが分かった。子どものような淡いため息一つと一緒だった。 (下巻p431)
★「俺はレディ・ジョーカーだ。すぐに粕谷駅バス停横の電話ボックスへ来い。救急車もよこせ。いま、刑事を刺した」
半田は受話器を置き、自分の身体とボックスのガラス壁にはさんで支えている男の耳元に、「聞こえたか?」と声をかけた。しかし、垂れた頭の下から漏れてきたのは「ゆうすけ――」という意味不明の吐息の声一つだった。
もういい。俺はほんとうに考えるのに飽きたのだと独りごちて、半田は暗い車道へ目を移し、警察はまだか、と思った。 (下巻p432)
そりゃあ半田さんには意味不明な「ゆうすけ――」。 半田さんとしては、「はんだ――」と口にして欲しかったんだろうか?
<終章>
この義兄弟の部分は後日に。
★このとき久保が見たのは、白日の下で人を吸い込むように虚ろな穴を開けている左目の白濁であり、健常な右目の、憎悪を湛えて震える黒い穴であり、その二つの穴の間に、この世の悪意と混沌の一切を呑み込む虚空が据わった、蒼白な鬼の顔だった。この薬局店主はいったい何者だったのか――。 (下巻p448)