昨日の朝日新聞夕刊(関西版)で、今週も「大峯伸之のまちダネ」の<住友村の変容>で、三井住友銀行大阪本店ビルが紹介されています。
東京の三井住友銀行も紹介されてましたが、これってドラマ「ハゲタカ」の三葉銀行・・・ですか?
第三章 一九九五年春――事件 (2) その4 (「サンデー毎日」 '96.3.17~'96.3.31)
☆立っている地平の違いは、互いの誠意や気配りの有無にもかかわらず、いつどんなときでも波長の違いになり、その差が埋まることは決してない。そこに、新聞記者とネタ元の永遠の距離を感じるのだが、同時に、ネタ元から入る電話には無条件に心身が反応し、気体で心臓がちくりと飛び跳ねもする。 (「サンデー毎日」'96.3.17 p71)
☆記者には、この段階ではとりあえず、ネタ元の情報の中身を云々する余裕も権利もない。地平の違いは、往々にして焦点の差にもなるが、中身は手にしてから判断すればいいことで、それ以前の段階では電話一本、目配せ一つ、呼吸一つ、何でも食らいついてとにかく手にすることが先決だった。そして手にした後は、価値があってもなくても決して失望はしないこと。 (「サンデー毎日」'96.3.17 p71)
☆この二日半、十人ほどいるネタ元に電話をかけ続け、本社の遊軍や支局の同期からちょこちょこ入ってくる話に耳を尖らせてきた結果、自分の手に入った情報の山は、ほとんど閉店間際のスーパーマーケットだった。一応いろいろ並んでいるのでどんな料理でも作れそうだが、よく見ると、材料が少しずつ売り切れている。それでも、何か一つぐらいは作れるはずだと陳列棚を眺めて思案しているうちに、どんどん閉店時刻は迫ってきて、結局料理をあきらめ、出来合いの弁当を買ってすませたというのが、自分の書いた記事だ。半分は筋の原稿に付きものの、官報もどきの言い回しで埋め合わせ、残りは記者発表の文言をつなぎ合わせただけの、幕の内弁当。 (「サンデー毎日」'96.3.17 p72)
☆徒歩で十数秒の記者会見場へ向かう間、久保は、今さらながらに自分がふわふわと興奮しているのを感じ、少し居心地の悪さに浸った。ネタがないならないで、焦りながら興奮し、閉店間際のスーパー状態でもそれなりに興奮し、あっちへ走りこっちへ走りしている自分に興奮して、最後には自分で何をやっているのか分からなくなってくる。しかしすぐに、ふうとため息一つでごまかして、《反省するなら取材しろ》と自分を叱咤し、いつもの通り、それでおしまいだ。 (「サンデー毎日」'96.3.24 p114)
☆『そんなふうに物事を悪く悪く考えるから、あなたは女房のことも信じられないのよ、そんなに人が信じられないんなら、結婚なんかしなきゃよかったのに』
そう皮肉る女の声が脳裏をかすめたところで、根来は手帳をしまった。十年前に別居するまで、週に一回は聞かされた女房の台詞だったが、当時は耳を貸す余裕がなく、外へ出て気晴らしをしてこいと言うのが精一杯だった。今は耳を貸す余裕はあるが、どちらが正しいのかほんとうに分からない。人を信じられない自分が悪いのか、あるいは、信じるに値しない人間がいるのが悪いのか。 (「サンデー毎日」'96.3.31 p91~p92)
☆直感だとは言うが、人一倍の努力を重ねて警察内に多くの人脈を築いてきた久保は、かなりの部分、捜査側の感覚を身につけてしまっている。久保に関する限り、そのために判断を誤るような心配はないが、日之出ビール社長誘拐をこの段階でプロの手口だと断定するその頭は、市井の感覚からは少し距離があるのだということを、機会があれば話してみてもいいかなと根来は思った。 (「サンデー毎日」'96.3.31 p93)
【雑感】
その4は、久保晴久さん視点、根来史彰さん視点。
久保っち視点は、「サン毎版だけにあって、書籍でカットされた」のがいろいろあって、そのうちの1つが今回出てきました。
簡単に記しますと、
「警視庁クラブの久保たちの元に、「警視庁に駆け込んだ刑事部の木島という検事が<やられた>と発言」という情報が入る。つまり「日之出側が裏取引をしたのではないか」と検事は見ている、ということか? とウラを取ろうとする久保たち」
という内容でした。
他に特筆すべきは、根来さんの別れた奥さんの台詞があるところ。書籍では
<人を信じられないのなら、女房も信じられないのだろうと、十年前に別居した妻によく皮肉られたが、>
と、地の文に変更されました。
入力中に気付きましたが、
「ふうとため息一つでごまかして、」が、サン毎版では、
「ふうとため息一つでごまして、」 と脱字がありました。
東京の三井住友銀行も紹介されてましたが、これってドラマ「ハゲタカ」の三葉銀行・・・ですか?
第三章 一九九五年春――事件 (2) その4 (「サンデー毎日」 '96.3.17~'96.3.31)
☆立っている地平の違いは、互いの誠意や気配りの有無にもかかわらず、いつどんなときでも波長の違いになり、その差が埋まることは決してない。そこに、新聞記者とネタ元の永遠の距離を感じるのだが、同時に、ネタ元から入る電話には無条件に心身が反応し、気体で心臓がちくりと飛び跳ねもする。 (「サンデー毎日」'96.3.17 p71)
☆記者には、この段階ではとりあえず、ネタ元の情報の中身を云々する余裕も権利もない。地平の違いは、往々にして焦点の差にもなるが、中身は手にしてから判断すればいいことで、それ以前の段階では電話一本、目配せ一つ、呼吸一つ、何でも食らいついてとにかく手にすることが先決だった。そして手にした後は、価値があってもなくても決して失望はしないこと。 (「サンデー毎日」'96.3.17 p71)
☆この二日半、十人ほどいるネタ元に電話をかけ続け、本社の遊軍や支局の同期からちょこちょこ入ってくる話に耳を尖らせてきた結果、自分の手に入った情報の山は、ほとんど閉店間際のスーパーマーケットだった。一応いろいろ並んでいるのでどんな料理でも作れそうだが、よく見ると、材料が少しずつ売り切れている。それでも、何か一つぐらいは作れるはずだと陳列棚を眺めて思案しているうちに、どんどん閉店時刻は迫ってきて、結局料理をあきらめ、出来合いの弁当を買ってすませたというのが、自分の書いた記事だ。半分は筋の原稿に付きものの、官報もどきの言い回しで埋め合わせ、残りは記者発表の文言をつなぎ合わせただけの、幕の内弁当。 (「サンデー毎日」'96.3.17 p72)
☆徒歩で十数秒の記者会見場へ向かう間、久保は、今さらながらに自分がふわふわと興奮しているのを感じ、少し居心地の悪さに浸った。ネタがないならないで、焦りながら興奮し、閉店間際のスーパー状態でもそれなりに興奮し、あっちへ走りこっちへ走りしている自分に興奮して、最後には自分で何をやっているのか分からなくなってくる。しかしすぐに、ふうとため息一つでごまかして、《反省するなら取材しろ》と自分を叱咤し、いつもの通り、それでおしまいだ。 (「サンデー毎日」'96.3.24 p114)
☆『そんなふうに物事を悪く悪く考えるから、あなたは女房のことも信じられないのよ、そんなに人が信じられないんなら、結婚なんかしなきゃよかったのに』
そう皮肉る女の声が脳裏をかすめたところで、根来は手帳をしまった。十年前に別居するまで、週に一回は聞かされた女房の台詞だったが、当時は耳を貸す余裕がなく、外へ出て気晴らしをしてこいと言うのが精一杯だった。今は耳を貸す余裕はあるが、どちらが正しいのかほんとうに分からない。人を信じられない自分が悪いのか、あるいは、信じるに値しない人間がいるのが悪いのか。 (「サンデー毎日」'96.3.31 p91~p92)
☆直感だとは言うが、人一倍の努力を重ねて警察内に多くの人脈を築いてきた久保は、かなりの部分、捜査側の感覚を身につけてしまっている。久保に関する限り、そのために判断を誤るような心配はないが、日之出ビール社長誘拐をこの段階でプロの手口だと断定するその頭は、市井の感覚からは少し距離があるのだということを、機会があれば話してみてもいいかなと根来は思った。 (「サンデー毎日」'96.3.31 p93)
【雑感】
その4は、久保晴久さん視点、根来史彰さん視点。
久保っち視点は、「サン毎版だけにあって、書籍でカットされた」のがいろいろあって、そのうちの1つが今回出てきました。
簡単に記しますと、
「警視庁クラブの久保たちの元に、「警視庁に駆け込んだ刑事部の木島という検事が<やられた>と発言」という情報が入る。つまり「日之出側が裏取引をしたのではないか」と検事は見ている、ということか? とウラを取ろうとする久保たち」
という内容でした。
他に特筆すべきは、根来さんの別れた奥さんの台詞があるところ。書籍では
<人を信じられないのなら、女房も信じられないのだろうと、十年前に別居した妻によく皮肉られたが、>
と、地の文に変更されました。
入力中に気付きましたが、
「ふうとため息一つでごまかして、」が、サン毎版では、
「ふうとため息一つでごまして、」 と脱字がありました。