朝日新聞 アスパラクラブのモニターアンケート、今回の回答テーマは「年賀状」でした。(このアンケート回答発表は2週間後です)
設問の一つに「年賀状の数が減った理由は?」とあり、その選択肢に中に「虚礼と思うようになった」というのがありました。言わずもがな、『マークスの山』での加納さんの最初の手紙を思い浮かべたのは、私だけではあるまい。
ちなみに私は、この選択肢にチェック入れました(笑) ここでチェックしなきゃ、義兄ファンではない(そういう問題か?)
***
2007年10月17日(水)の単行本版(改訂前)『マークスの山』 は、四 開花のp298から五 結実のp340まで読了。
今回のタイトル、ものすごく悩みました。深刻な内容が続いているし、合田さん関連で笑えそうなところが、あんまりなかったのでね・・・。困った時の義兄頼み。
ところで皆さまは、「義兄」を何と読んでらっしゃいます? 「ぎけい」? 「あに」?
私は、ごっちゃです。オフで喋る時は「加納さん」以外に、「ぎけい」 「あに」、ちょっとおちゃらけて「おにいちゃん」(←相撲取りかよ)とごちゃまぜ。
ところが本を読んでいる時は、ほぼ100%「あに」です。今回のタイトルの場合、「ぎけいどの」よりは「あにどの」の方が、しっくりしません?
どうでもいいことかもしれませんが、皆さまはどう読まれて、あるいはどう呼んでいるのか、ふと気になったのでした。
それにしても『マークスの山』での、「加納」と「加納祐介」の表記の度合いは、かなり高い。「義兄」よりも多い。
『照柿』 『レディ・ジョーカー』と進むにつれ「義兄」の表記が増えていく・・・。特に『レディ・ジョーカー』なんて、9割は「義兄」表記ですもん。
【今回の名文・名台詞・名場面】
【お願い】 ピックアップした部分で「私の持っている『マークスの山』には、こんな文章は無かった」と気づかれた方。それは「改訂後」の可能性が高いです。よろしければ、ご一報下さいませ。私に、比較している余裕が無いものでして。よろしく願いいたします。
★そこでしばらく保留音になり、また別の声が《今、どこだ》と穏やかに尋ねた。同僚検事の手前もはばからない、いつもと同じ加納祐介の声だった。噴き出しかけていた罵声が引っ込み、我ながら呆れ返って受話器を取り落とすところだった。 (p303)
・・・ここの合田さんには、微苦笑を誘われる。
★自分行動はよく分からなかった。同僚の前で平然と電話に出る可能の神経も神経も分からなかった。 (中略) 怖くてたまらないときに、電話を入れるところはどこでもよかったのだが、よもや身内の警察にはかけられなかっただけだった。加納の声は聞きたくなかったと、勝手なことを考えた。 (p303)
合田さんへのツッコミ・その1。そりゃあ自分で自分の行動が分からないんだったら、加納さんのことも分からないでしょうよ。
その2。「身内」でない検察へ電話かけたら、最も近い「身内」が電話に出てしまったわけですもんね。ご愁傷さま。
・・・その2はツッコミになってへん。
★佐伯の死は、半分は自分が招いたのだと、合田は唯自分に対して認めた。他人に対して認める気はなかった。 (p305)
この合田さんを「誇り高い」ととるか、「頑固」ととるかで、あなたの合田さんへの感情の度合いが量れます(ホンマかいな)
★加納祐介の姿があった。合田の足が自動的に回れ右をするより早く、加納の声が「雄一郎!」と呼んだ。
加納は手招きをし、悠然と合田の袖を引いて、同僚検事たちの前に引き出すやいなや、「俺の義弟だ」と言った。「合田雄一郎。捜査一課の固い石だ。今後ともよろしく頼む」 (p305)
常識的に考えたら、普通は紹介しないでしょう。「検事」である男が、「刑事」でかつての「義弟」であった関係の男を。・・・どうも義兄の思考は良く分からない。
★加納は、《またな》と片手を挙げた。合田も片手を挙げた。《俺も正しいし、お前も正しい》そう言いたげな毅然とした目をよこして、加納は背を向けた。 (p306)
「正しい」というのは、難しい言葉ですよね。「検事として正しい」加納さんと、「刑事として正しい」合田さんと。どちらの立場であっても「正しい」のでしょうけど、相対する立場であっては、公に認めにくい。「正しい」の反対は「間違っている」のだから。両方「正」ということは、まずありえないのだから。
あれ? ・・・どこかの哲学者の思想にあったっけ、これ?
★合田は、周囲のざわめきをものともせず、欲も得もなくさらに半時間ほどうとうとした。何があっても寝られるのは、いっときの眠りで不快な思いを流すために自然に身につけた特技だった。 (p313)
そうだったんだ! そんな特技があったなんて、すっかり忘れてましたよ! ・・・というより、覚えていない(笑)
★合田は、自分の頭が鈍かったのだとは思わなかった。 (中略) もし、何かがあるとしたら、それは三年前に合田が代官山で見落としたかも知れない何かだった。 (中略)
自分の胸のうちで、合田はそれだけは認めた。 (中略)
そうは思ったが、それはすべて自分の胸の腹の底におさめた。問いただし、責めるべきが自分であることは嫌というほど分かっていたから、あえて沈黙を通した。 (p329)
中略ばっかりで申し訳ないのですが、ねたばれになってしまう部分があるので省きました。
ここの合田さんの貫き通した沈黙。ここも「誇り高い」ととるか「頑固」ととるか、あるいは両方なのか。・・・両方だろうな、うん。
★真知子のいるところに行きたかった。 (p340)
この時点でのマークスくんの唯一といっていい望み。うるるん・・・。
しかしこの場面の前の彼の行動が、かなり残酷だったのでね・・・。辛いね・・・。
設問の一つに「年賀状の数が減った理由は?」とあり、その選択肢に中に「虚礼と思うようになった」というのがありました。言わずもがな、『マークスの山』での加納さんの最初の手紙を思い浮かべたのは、私だけではあるまい。
ちなみに私は、この選択肢にチェック入れました(笑) ここでチェックしなきゃ、義兄ファンではない(そういう問題か?)
***
2007年10月17日(水)の単行本版(改訂前)『マークスの山』 は、四 開花のp298から五 結実のp340まで読了。
今回のタイトル、ものすごく悩みました。深刻な内容が続いているし、合田さん関連で笑えそうなところが、あんまりなかったのでね・・・。困った時の義兄頼み。
ところで皆さまは、「義兄」を何と読んでらっしゃいます? 「ぎけい」? 「あに」?
私は、ごっちゃです。オフで喋る時は「加納さん」以外に、「ぎけい」 「あに」、ちょっとおちゃらけて「おにいちゃん」(←相撲取りかよ)とごちゃまぜ。
ところが本を読んでいる時は、ほぼ100%「あに」です。今回のタイトルの場合、「ぎけいどの」よりは「あにどの」の方が、しっくりしません?
どうでもいいことかもしれませんが、皆さまはどう読まれて、あるいはどう呼んでいるのか、ふと気になったのでした。
それにしても『マークスの山』での、「加納」と「加納祐介」の表記の度合いは、かなり高い。「義兄」よりも多い。
『照柿』 『レディ・ジョーカー』と進むにつれ「義兄」の表記が増えていく・・・。特に『レディ・ジョーカー』なんて、9割は「義兄」表記ですもん。
【今回の名文・名台詞・名場面】
【お願い】 ピックアップした部分で「私の持っている『マークスの山』には、こんな文章は無かった」と気づかれた方。それは「改訂後」の可能性が高いです。よろしければ、ご一報下さいませ。私に、比較している余裕が無いものでして。よろしく願いいたします。
★そこでしばらく保留音になり、また別の声が《今、どこだ》と穏やかに尋ねた。同僚検事の手前もはばからない、いつもと同じ加納祐介の声だった。噴き出しかけていた罵声が引っ込み、我ながら呆れ返って受話器を取り落とすところだった。 (p303)
・・・ここの合田さんには、微苦笑を誘われる。
★自分行動はよく分からなかった。同僚の前で平然と電話に出る可能の神経も神経も分からなかった。 (中略) 怖くてたまらないときに、電話を入れるところはどこでもよかったのだが、よもや身内の警察にはかけられなかっただけだった。加納の声は聞きたくなかったと、勝手なことを考えた。 (p303)
合田さんへのツッコミ・その1。そりゃあ自分で自分の行動が分からないんだったら、加納さんのことも分からないでしょうよ。
その2。「身内」でない検察へ電話かけたら、最も近い「身内」が電話に出てしまったわけですもんね。ご愁傷さま。
・・・その2はツッコミになってへん。
★佐伯の死は、半分は自分が招いたのだと、合田は唯自分に対して認めた。他人に対して認める気はなかった。 (p305)
この合田さんを「誇り高い」ととるか、「頑固」ととるかで、あなたの合田さんへの感情の度合いが量れます(ホンマかいな)
★加納祐介の姿があった。合田の足が自動的に回れ右をするより早く、加納の声が「雄一郎!」と呼んだ。
加納は手招きをし、悠然と合田の袖を引いて、同僚検事たちの前に引き出すやいなや、「俺の義弟だ」と言った。「合田雄一郎。捜査一課の固い石だ。今後ともよろしく頼む」 (p305)
常識的に考えたら、普通は紹介しないでしょう。「検事」である男が、「刑事」でかつての「義弟」であった関係の男を。・・・どうも義兄の思考は良く分からない。
★加納は、《またな》と片手を挙げた。合田も片手を挙げた。《俺も正しいし、お前も正しい》そう言いたげな毅然とした目をよこして、加納は背を向けた。 (p306)
「正しい」というのは、難しい言葉ですよね。「検事として正しい」加納さんと、「刑事として正しい」合田さんと。どちらの立場であっても「正しい」のでしょうけど、相対する立場であっては、公に認めにくい。「正しい」の反対は「間違っている」のだから。両方「正」ということは、まずありえないのだから。
あれ? ・・・どこかの哲学者の思想にあったっけ、これ?
★合田は、周囲のざわめきをものともせず、欲も得もなくさらに半時間ほどうとうとした。何があっても寝られるのは、いっときの眠りで不快な思いを流すために自然に身につけた特技だった。 (p313)
そうだったんだ! そんな特技があったなんて、すっかり忘れてましたよ! ・・・というより、覚えていない(笑)
★合田は、自分の頭が鈍かったのだとは思わなかった。 (中略) もし、何かがあるとしたら、それは三年前に合田が代官山で見落としたかも知れない何かだった。 (中略)
自分の胸のうちで、合田はそれだけは認めた。 (中略)
そうは思ったが、それはすべて自分の胸の腹の底におさめた。問いただし、責めるべきが自分であることは嫌というほど分かっていたから、あえて沈黙を通した。 (p329)
中略ばっかりで申し訳ないのですが、ねたばれになってしまう部分があるので省きました。
ここの合田さんの貫き通した沈黙。ここも「誇り高い」ととるか「頑固」ととるか、あるいは両方なのか。・・・両方だろうな、うん。
★真知子のいるところに行きたかった。 (p340)
この時点でのマークスくんの唯一といっていい望み。うるるん・・・。
しかしこの場面の前の彼の行動が、かなり残酷だったのでね・・・。辛いね・・・。
「義兄」もただの「兄」も読むときは同じ「あに」です。というより、加納祐介を離れても「ぎけい」という読みかたは私の頭には存在しない、と言っていいくらいです。
それなのに「義弟」は「ぎてい」と硬い読みかたをしてしまうことがあるんですよね…この差は何なんでしょう。
叔父が私の母を「ねえさん」と呼ぶとき、明らかに「義姉さん」と文字が浮かぶ口調だったことを、懐かしく思い出しました。
頂戴したメールの返信しなくてはと思いつつも、Ki.Sさんの体調のすぐれない時に送っても迷惑では・・・と思い、例の更新の邪魔になってはいけないし・・・とも思い、二の足踏んでます。申し訳ございません。
>加納祐介を離れても「ぎけい」という読みかたは私の頭には存在しない
「義兄」という別称を持つキャラクターは全て「あに」と読んでいるわけですね? なるほど。
では「元義兄」も「もとあに」でしょうか? それとも無理矢理、「あに」と?
>それなのに「義弟」は「ぎてい」と硬い読みかたをしてしまう
そうなんですか!
私はなぜか「ぎてい」としか読みません。読めません。合田さん視点でも、「義弟」「元義弟」の表記があっても、そのまま「ぎてい」「もとぎてい」ですね。
とはいえ例外があって、上記で引用した、
「俺の義弟だ」と言った。
この加納さんの発言は、「ぎてい」でも「おとうと」でも、どちらでもいいかな、と。
個人的には、「おとうと」はかなり近しい感じ、「ぎてい」は一線を引いた感じがします。
加納さんにとっては、どちらがいいんでしょうね? 「身内」を強調するのと、「身内だけど実は違う」という曖昧さを保持するのと・・・。
私は後者の方が好きです。こんなふうに揺らいでいる義兄が、彼らしいかなあ、と。