ドナルド・トランプ(1946~)
米ソの冷戦に勝利を収めたアメリカは一極時代を迎え、世界で唯一の超大国となる。では冷戦後のアメリカ国民は経済的に繫栄を謳歌し豊かさを享受してきたのだろうか。2年前のアメリカ大統領選挙でトランプ候補は「アメリカを取り戻そう」と訴えて選挙を勝ち抜いた。トランプ候補を応援したのは中部、南部の農業や製造業の労働者が中心だった。製造業ではリストラで職を追われた者やローンに苦しむ者、貧困化が進んでいたのだった。
日本は冷戦後はバブル崩壊から長いデフレ時代に入っている。ヨーロッパでも繫栄した国はない。唯一高度経済を成し遂げた中国とオイルマネーの産油国だけに富が集中したのだろうか。超大国アメリカには富が流れていかなかったのだろうか。そんな筈はない。有り余る富がアメリカには集まっている。ただ一般のアメリカ国民には富の分配はなかった。ではその富はいったい何処にいったのだろうか。今回はアメリカの富について考えてみたい。
ウォール街
日本ではもともと会社とは社長を筆頭に社員全員の働く場所として存在していた。ところがバブル崩壊を機にアメリカ型の市場主義が侵食し、企業とは株主のものであり、社員はただの労働者というシステムが始まった。それがグローバル・スタンダードだという。それまでは会社が儲かれば、社員にも利益は還元され、役員も社員も等しく恩恵があった。しかしアメリカ型の市場主義は儲かれば株主と経営者だけがその恩恵にありつけ、一般社員への恩恵はない。それがアメリカの株主資本主義である。
その結果、企業の業績が上がれば株が上がり、株式市場に金が集まる。株主の資産は増え、株の売り買いだけで儲ける人たちはもっと凄い収入を得ることになる。そのヘッジファンドたちの稼ぎは途方もない数字になっている。例えばアメリカの大企業の社長たちの年収は日本の10倍から20倍は当たり前で、10億円とか20億円は貰う。ところがヘッジファンドたちは年収250億円とか300億円を平気で稼いでいる。アメリカの大企業トップ500社(S&P500)の社長500人の合計年収よりもヘッジファンドのトップ25人の合計収入の方が多いという。
ブルッキングス研究所
アメリカの金融資産の50%はトップ1%が保有する。株式市場での取引利益だけみると50%がトップ0.1%が保有する。富の分配を考えると、冷戦後のアメリカは経済成長からして平均労働者の所得は2倍くらいになっているはずなのに、全く上がっていない。トップ10%の高額所得者は少し上がりはしたが、あとは全部トップ0.1%層がせしめているという構図である。つまりはアメリカの政治も経済もこの0.1%の大富豪たちが支配しているということなのだ。
このトップ0.1%の大富豪たちは何に金を使うのか。民主・共和両党の政治資金の90%はこのトップ0.1%から出ているという。そして大手マスコミ(CBC、CNN、ABC、NBC、FOX、ニューヨークタイムズ、ワシントンポスト、ウォールストリート・ジャーナルなど)は全て0.1%層が所有している。そして外交問題評議会(CFR)やブルッキングス研究所、国際戦略研究所といったシンクタンクもこの0.1%層が運営資金を出している。民主主義とか自由主義というのは言葉だけで、一般のアメリカ国民はただの労働者に過ぎないということを数字が証明している。
ジョージ・ソロス(1930~)
トップ0.1%の大富豪の一人であるジョージ・ソロスはハンガリー出身のユダヤ人、ホロコーストのナチス・ドイツから逃れ、単身ロンドンに渡り苦学する。哲学者を目指し26歳の時、ニューヨークのウォール街に出る。39歳で投資ファンドを設立、ソロスのファンドは1973年からの10年間で4200%のリターンを出してソロスの富の大部分を形成したという。イギリス通貨ポンドの空売りを行い莫大な利益をあげ「イングランド銀行を潰した男」の異名を得る。1998年、68歳のソロスは世界最大のヘッジファンドになった。
3兆円を超す大富豪となったソロスは途上国と新興国の「開かれた社会」のために使った。世界37か国に「オープン・ソサイエティ財団」を設立、民主化とグローバル資本主義を推進する。グルジアの「バラ革命」などの旧ソ連の東欧革命には積極的に資金援助している。しかし大義もなくイラク戦争を引き起こした息子・ブッシュには反対した。「命をかけてもブッシュの再選を阻止する。」と言って反対陣営に多額の寄付をしたことでも知られる。結果はブッシュが再選を果たした。サブプライムローンなどの問題を解決出来ず、リーマンショックを起こした。
~~さわやか易の見方~~
******** 上卦は天
********
********
*** *** 下卦は地
*** ***
*** ***
「天地否」の卦。否は否定。天地は自然のようだが、天はあくまでも上を目指すもの。地はあくまでも下を目指すもの。易では上下の和合がなく、閉塞状態を表す。上に立つ者が下にある者を考えない。下にある者もどうせ一生自分は下にいるままだと希望を持たない。民意が政治家に伝わらない。国家は亡びる。
アメリカのエリートたちは何を目指しているのだろうか。1960年代のハーバード大学の学生たちの中で金融業者を目指すものは8%位だったそうだが、最近は40%位が金融業者を目指しているという。そして世間がエリートだ、成功者だと思ってくれることばかりを望んでいるという。カネ、カネ、カネ、エリートたちの価値基準がカネになってしまったのだろう。これではアメリカも先が見えている。超大国アメリカの衰退もそう遠くないだろう。
ジョージ・ソロスはリーマン・ショック後に「米国から中国へのパワーの遷移があり、ちょうど第二次世界大戦後の英国の衰退と米国への覇権の移行に喩えられる。」と語ったが、2014年になると、「中国モデルはすでに力を失っている。」と指摘し、「近いうちに中国経済は完全に崩壊する。」と語った。そして、「米中両国は経済における協力関係を強化し、第三次世界大戦が発生する可能性を減らさねばならない。」とも語った。日本に対しては、「この荒涼たる世界秩序において、日本はキー・プレイヤーとなってはならない。」と忠告している。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます