さわやか易

人生も歴史もドラマとして描いております。易の法則とともに考えると現代がかかえる難問題の解決法が見えてきます。(猶興)

冷戦後の米中関係と日本(7)ー中国の大軍拡ー

2019-01-16 | 20世紀からの世界史
村山富市(1924~)

アメリカは1極覇権戦略に突き進み、中東支配に失敗して泥沼に嵌ってしまった。国際勢力はパワーバランスで成り立っており、情勢は常に流動、停滞を許さないものである。その失敗を横目に軍備を拡張していたのが、ロシアであり中国であり北朝鮮であった。ロシアは勢力圏の再構築を強化し、北朝鮮は核弾頭とミサイルの増産を加速させた。そして中国は毎年10%を越える軍事費で着々と大軍拡を続けていた。

冷戦後の日本はバブル崩壊後にリクルート事件で長く政権を担っていた自民党の大物たちが相次いで失脚した。政局は混乱し、1994年には自民党と日本社会党が連立するという奇妙な村山内閣が誕生する。村山首相は第二次世界大戦は軍国主義の日本が暴走したもので近隣諸国に迷惑をかけたと謝罪外交を行った。「自虐史観」に囚われ「失われた20年」などと経済のデフレ現象だけを心配していた。中朝露が着々と軍拡を進める中で、日本は国防をアメリカに依存したままだった。


菅直人(1946~)
 
2009年に日本に民主党政権が誕生すると、中国は日本の弱体化を見透かしたように外交能力を試した。2010年9月、日本の領海である尖閣諸島付近で操業する中国漁船が退去を命じた日本の巡視船に衝突する事件を起こした。海上保安庁は漁船の船長を公務執行妨害罪で逮捕し、取り調べを始める。すると中国政府は尖閣諸島は中国固有の領土であると主張し船長の即時釈放を求めた。
 
日本政府は国内法に基づいて起訴する方針だったが、中国側は強く反発し日本に対し様々な報復措置を実施する。「日本との閣僚級の往来を停止」「航空路線増便の交渉中止」「石炭関係会議の延期」および「日本への中国人観光団の規模縮小」を決定した。またレアアースの輸出を止めることも発表する。すると、菅直人内閣は日中関係を考慮した結果、船長を裁判もせずに釈放する。
 
 
 朱成虎(1952~)
 
中国は2003年、息子ブッシュ大統領がイラク戦争を開始すると中国はフランスとともに反対した。しかも胡錦濤国家主席はロシアのプーチン大統領とともに「上海協力機構」を発展させることに合意する。中国がアメリカの一極支配を完全に終わらせた外交であった。2005年に中国国防大学教授の朱成虎は各国報道機関を前に驚くべき発言をし、中国の存在を世界に示した。アメリカの威信に挑戦する目的があったことは明白である。
 
「アメリカが台湾海峡の武力紛争に介入した場合、中国は核戦争も辞さない。」「米国の数百の都市と引き換えに西安より東の都市すべてが壊滅することも厭わない。」「世界の人口増加には際限がなく敏速である。この爆発的増加が資源限界に達する前に、もっとも良い解決方法は、核戦争による人口抑制こそが最も快速の方法である。」この発言にはアメリカから罷免を求める抗議があった。しかし中国政府は軽い罰則を科しただけで、朱成虎はその後も教鞭をとっている。
 
 
 
 
習近平(1953~)
 
2008年のリーマンショック後に発足したオバマ政権は中国に毎年1.4兆ドルの国債を買ってもらうことになる。そのせいかオバマ政権は中国の軍拡に対しては何の発言もしなくなった。2012年に習近平政権になった中国は堂々と軍拡を進める。2014年には南シナ海のスプラトリー諸島海域にある暗礁を埋め立て人工島の建設に取り掛かる。戦艦の寄港と戦闘機の滑走路に使うためである。南シナ海は日本にとっては中東からの石油輸送には欠くことが出来ない重要なシーレーンである。
 
2016年になるとベトナム、フィリピンの申し立てによりオランダ・ハーグ常設仲裁裁判所は中国には違法とする判断を示した。12月にはトランプ次期大統領が中国を批判した。2017年になるとトランプ政権からの勧告を聞き流して軍用機24機が収容できる格納庫が建設された。2018年、人口島にミサイルを搬入した中国に撤去を要求したベトナムに「中国の領海であり、議論の余地なく主権を持つ。」と主張した。
 
~~さわやか易の見方~~
 
***   *** 上卦は雷
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******** 下卦は天
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「雷天大壮」の卦。大壮とは大(陽)が盛んであること。陽の気が満ち満ちて自信にあふれているとも言える。事業を拡張するには最も適している。力を頼んで突き進んで良いが、甘い気持ちでいると大失敗を招くこともある。礼を失することのないように行動しなければならない。
 
歴史を振り返ってみると、アメリカが強引に進めたイラク戦争が大失敗だったといえる。ナポレオンが世界を支配するために最後の仕上げをするつもりでロシアを攻めた。ところがこれが命取りになる大失敗だった。イラク戦争のアメリカもナポレオンのロシア攻めに似ている。フランスが以後、世界のトップから遠ざかって行ったようにアメリカも同じ轍を踏むのだろうか。
 
中国の朱成虎教授の爆弾発言にはぞっとする。これは中国政府が言わせたものに間違いはない。昨年10月にペンス副大統領が中国を盗人であると非難した演説と同じである。米ソの冷戦時代が終わって30年、早くも次の米中の冷戦時代が始まったといえる。その激動の時代に日本だけが安穏としていて良いのか。目を覚ませ、日本人!
 

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