さわやか易

人生も歴史もドラマとして描いております。易の法則とともに考えると現代がかかえる難問題の解決法が見えてきます。(猶興)

冷戦後の米中関係と日本(6)ーアメリカの1極覇権戦略ー

2019-01-09 | 20世紀からの世界史
 
ウォール街
 
冷戦終了後のアメリカが次の世界戦略として目標にしたのが「1極覇権戦略」である。国際構造を1極化して軍事覇権と経済覇権をアメリカだけが支配する戦略である。ソ連は崩壊し、生まれ変わったロシアは未だ力はない。ヨーロッパの強敵・ドイツは東西統一に手こずっている。中国はまだまだ発展途上国、日本は防衛をアメリカに頼っているのでどうにでもなる。人類史上かつてない1極覇権には千載一遇のチャンスであった。
 
「1極覇権戦略」に挑戦し推進したのはウォール街を支配して巨大なマネー力で民主、共和両党を動かす勢力になっているユダヤ系金融グループと彼らが率いるネオコン勢力である。「世界を一つにする」という基本原則を持って、政治外交をコントロールするシンクタンクと大メディアを傘下にしている。父ブッシュ、クリントン、息子ブッシュ、オバマ政権が取り組んだ「自由主義」「民主主義」という政治システムを発展途上国にまで浸透させる理想が成功しただろうか。
 
 
D・ロックフェラー(1915~2017)
 
そもそもアメリカが1極覇権戦略に走った動機は何なのか。それは建国から200年、世界一の経済、軍事大国になった自信からくる「アメリカこそ最も優れた国であり、他の諸国をアメリカ式民主主義の真似をさせ、異質な国を破壊し、矯正させ、作り替える権利がある。」と思い込んだことに始まる。その為には軍事介入も内政干渉も正当化され、それが解らない国は「邪悪な国家」として裁き、処罰しても構わない。例え原爆投下のような犯罪行為であったとしても、アメリカは例外的に許されるという身勝手な思い込みがあった。
 
アメリカには1極覇権への成功体験がある。第二次世界大戦の日本である。激闘の末、日本を降伏させたが、その後日本は見事にアメリカの従属国になった。世界中で日本ほどの強敵はないはずである。その日本を従属させたのだから、どんな国でも無条件降伏させれば、アメリカの思い通りになると考えた。その身勝手な思い込みを最も権力のある支配グループとそれを支持するエリート層が信じて疑わなかったことが最大の失敗の始まりだった。
 
 
9.11同時多発テロ事件

 アメリカは世界支配に最も重要なエネルギーの宝庫である中東を支配することにした。イラン、イラクを始めとする中東の産油国を支配すれば、ロシアやドイツが復活しても、中国が台頭しても問題はない。1991年、湾岸戦争を起こしそのスタートを成功させた。そして、満を持して中東支配に取り組むために「真珠湾攻撃」に匹敵する大義名分を仕掛ける。それが2001年9月11日の「ニューヨーク貿易センタービル突入」の同時多発テロ事件である。

 
「テロとの戦い」という大義名分を手にしたアメリカは多国籍軍を編成し、テロの主犯とされるオサマ・ビン・ラディンをかくまっているとしてアフガニスタン侵攻を開始した。「テロとの戦い」をスローガンに中央アジアに19か所の軍事基地を建設、「アラブの春」と称する民主化運動を起こし、着々と1極覇権戦略に取り掛かる。2003年、息子ブッシュ大統領は最大の標的であるイラクが大量破壊兵器を隠し持っていると、「イラク戦争」に突入した。民主主義に反する悪者の代表にされたフセイン大統領は逮捕され、処刑される。
 
 
 
ブレジンスキー(1928~2017)
 
ところがアメリカは既に大きな過ちを犯し、底知れない泥沼に嵌りつつあった。1極覇権が可能だと後押しした戦略家のキッシンジャーやブレジンスキーでさえ批判的になり撤退を勧告し始めた。アメリカの軍隊は正規には強いが非正規にはなすすべを持たなかった。イラク、アフガン、パキスタン、イエメン、ソマリアでは反米ゲリラ戦士が山岳に隠れ街中で自爆テロを起こした。思わぬ長期化、泥沼化を強いられ、莫大な戦費を浪費、経済損失はイラク戦争だけで3兆ドルに達したという。
 
加えて宗教対立の根深さと民族対立の複雑さはアメリカの単純な民主化イデオロギーの及ぶところではなかった。イラク戦争には信じていた中国やフランスまでが反対した。最も大きな誤算は2000年に誕生したロシアのプーチン政権があっという間にアメリカのライバルになったことである。プーチンはシリアと手を結んで反撃してきた。大失敗したアメリカはオバマ政権になると、2009年から毎年1.4兆ドルの赤字国債を中国に購入してもらうことになった。
 
~~さわやか易の見方~~
 
***   *** 上卦は水
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******** 下卦は火
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「水火既済」の卦。既済(きせい)とは完成。すべてが成就することである。全ての陽爻と陰爻が正しい位置にあり、理想の完成美を表している。しかし変化することを説く易では完成は崩壊の始めであり、完成状態に留まることはない。理想を手にした瞬間に理想ではなくなっている。しかし人間は理想を求めて又努力を始めるのである。
 
2004年、大統領に再選された息子ブッシュは就任式で「我々の最終目標は世界から圧政を追放することである。」と演説した。しかし発展途上国では圧政によって成り立っている国もある。全ての国が民主主義というかたちが相応しい訳ではない。無理やりに押し付けることは極めて危険な外交でもあり実現は不可能である。
 
9.11同時多発テロ事件がアメリカの自作自演であるという説は信じられない話だろうか。筆者はそれが真実だと疑っていない。アメリカにはJ・F・ケネディ暗殺事件とともに固く蓋をされた事件がいくつもある。ソ連が崩壊した後に明らかにされた事件のように、アメリカの時代が終わる時に真相が明らかになるだろう。次回に「9.11同時多発テロ事件の謎」というテーマで掲載します。

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