さわやか易

人生も歴史もドラマとして描いております。易の法則とともに考えると現代がかかえる難問題の解決法が見えてきます。(猶興)

プーチンの挑戦(6)ーメドベージェフとオバマー

2018-09-27 | 20世紀からの世界史

メドベージェフ(1965~)

プーチン大統領の8年間を振り返ると、2000年から2004年までの1期目はエリチェン政権で腐敗したロシア経済を立て直した。ベレゾフスキー、グシンスキー、ホドロコフスキーたちオリガルヒたちを粛清した。ホドロコフスキー逮捕のユコス事件により、ブッシュ政権の怒りを買い、旧ソ連圏にて「カラー革命」を起こされる。2004年からの2期目ではブッシュ政権と対決するため中国と手を結び「上海協力機構」を強化、「反米の砦」を築いた。
 
プーチンにとって何より幸運だったことは原油高だったことである。ロシア経済は一気に改善、泥沼の債務国が借金ゼロの政権国になった。8年間の実績により圧倒的支持率を誇るプーチンが望めば憲法を改正して3期目も続投は可能だった。しかしプーチンは独裁となることをさけ、一旦退くことにした。2008年3月、大統領選挙では与党「統一ロシア」から42歳のメドベージェフを選出し後継とした。プーチンは首相の立場でメドベージェフを支えることにした。
 
 
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バラク・オバマ(1961~)
 
一方、2008年はアメリカ大統領選挙の年であった。ブッシュの人気低下で共和党大統領候補のマケインは「私はブッシュとは違う。」と演説するが共和党の支持率は回復しない。民主党内ではヒラリー・クリントンとバラク・オバマの激しい選挙戦が繰り広げられた結果、オバマが民主党の大統領候補となり、大統領選挙でも圧勝、黒人初の大統領となった。選挙戦の最中に発生した「リーマンショック」は全世界にアメリカ1極時代が終焉し、多極時代が始まることを印象づけた。
 
オバマ大統領は就任演説で、「アメリカはキリスト教徒、イスラム教徒、ユダヤ教徒、ヒンズー教徒、そして無宗教の人たちの国だ。」また、「アメリカは白人の、黒人の、黄色人種の、ヒスパニックの国だ。」と唱えた。一極支配のアメリカから多極支配のアメリカへ、強いアメリカから平和を求めるアメリカへ「チェンジ」したのだ。「アメリカは世界の警察ではない。」とも語り、「イラク戦争からも撤退する。」と宣言し、2011年には撤退した。オバマは経済の立て直しに専念することになる。
 
 
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鳩山由紀夫(1947~)

アメリカが後退する一方で超大国への道を着々と歩んでいたのは中国だった。1990年代から日本と入れ替わるように経済成長を続け躍進していた。2008年のリーマンショック後にアメリカは約60兆円の財政出動をつぎこんだが、ほぼ同額を景気対策に使うと発表し世界を驚かせた。中国は経済成長とともに軍事力も増大させ、アメリカと並ぶ世界2極時代を築こうとしていた。
 
2012年には東シナ海の尖閣諸島沖で中国漁船を使い海上保安庁の巡視船に衝突させるという事件を起こした。目的は日本の民主党政権を試し、日米同盟を試す為である。菅直人総理大臣以下、民主党幹部はどう対処して良いか解らず、逮捕した中国人船長を不起訴として帰国させた。また南シナ海のサンゴ礁を埋め立てた人工島に滑走路を建設した。ベトナム、フィリピン政府の批判にも中国は自分の領土だからと耳をかさない。オバマは莫大な米国債を引き受けている中国には黙認するしかない。
 
 
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スティーブ・ジョブス(1955~2011)
 オバマの外交は巧みだった。2009年7月、モスクワを訪問、メドベージェフから「イラン制裁」の協力を取り付ける。さらに中国、ロシアから「イラン制裁」への合意をとりつけイランを上海協力機構から除外する。元来メドベージェフは欧米志向が強く、2010年訪米するとシリコンバレーを訪問した。アップル創業者スティーブ・ジョブスから「iphone」をプレゼントされ、興奮して喜んだという。メドベージェフはすっかりオバマ政権に取り込まれてしまった。
 
プーチンは米ロが対立から融和に進んだことには不信感をもっていた。アメリカには表の政府とは別の勢力、ユダヤ系金融グループが外交を支配していることを知っていた。チェニジア、エジプト、リビア、そしてシリアで次々始まる「アラブの春」はその勢力が黒幕だと確信していた。次のロシア大統領選挙の前年からプーチン外しが始まる。20011年12月、ロシア下院選挙後に「不正選挙」の10万人デモが起こる。デモには莫大な資金が必要だ。黒幕はユダヤ系金融グループだとプーチンは見抜いた。
 
~~さわやか易の見方~~
 
******** 上卦は天
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******** 下卦は山
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「天山遯」の卦。遯(とん)は逃れ退くこと。豚は逃げ足が早い動物だそうだ。身の危険を察した時、運が自分に味方しないと知った時、さっさと退くのも賢明な選択である。身を隠している間に、再び好機が巡ってくることもある。
 
プーチンは大統領を退いて院政を敷いた訳ではない。メドベージェフの政策に不満はあっても、メドベージェフの裁量に任せた。メドジェーエフも欧米の応援を得れば大統領の続投も可能だったかも知れない。そうなればアメリカの一極支配は復活したかも知れない。しかしプーチンとメドベージェフのリーダーとしての能力の差は歴然であり、ロシアの今日の安定はなくなってしまったことだろう。
 
国のリーダーで考えさせるのは、同時代の民主党政権である。「友愛」をスローガンに集まった集団だったが、元自民党出身者も元社会党出身者も同居していた民主党は後半にはバラバラになり、泥仕合を繰り返して喧嘩別れを演じた。政権を放棄して6年になるが、国民は2度と騙されないだろう。新しい時代が始まろうとする今、国民はしっかりと日本と世界を考えねばいけない。