さわやか易

人生も歴史もドラマとして描いております。易の法則とともに考えると現代がかかえる難問題の解決法が見えてきます。(猶興)

プーチンの挑戦(4)ープーチン対ブッシュー

2018-09-19 | 20世紀からの世界史

ジョージ・W・ブッシュ(1946~)

 
2000年5月にロシアの大統領になったプーチンとその年11月の大統領選挙を制し、2001年1月にアメリカ大統領になったブッシュは同時代を競ったライバルと言えるだろう。ただしスタートした国の環境はまるで違う。ブッシュのアメリカは唯一の超大国として世界の頂点に立っている。プーチンのロシアは1991年にソ連崩壊、その後エリチェン政権で国内大混乱、ハイパーインフレを起こし最貧国状態までなった。両者のスタートは横綱と十両と言ったところだろう。
 
ブッシュはアメリカを東西冷戦に替わる新世界秩序として「テロとの戦い」を掲げて世界の先頭を走ろうとした。9・11同時多発テロ事件を受けて、アフガン戦争、そしてイラク戦争でフセイン体制を倒し、中東を支配しようとした。プーチンの3年間は国内のオリガルヒたちを粛清し、新しい経済基盤を再生することだった。順調なスピードで成し遂げたが、2003年10月、「ユコス事件」でホドロコフスキーを逮捕したことは、プーチンにとっても大きな決断だった。相手は超大国アメリカであり、ユダヤ系金融グループである。
 

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ホドロコフスキー(1963~)
 
ホドロコフスキー逮捕は、ブッシュを激怒させたばかりではなく、ブッシュ政権を支えるユダヤ系金融グループを激怒させた。イラク戦争の目的は石油であり、アメリカはまだまだ石油を確保したかった。そこにホドロコフスキーが持ってきたロシアの石油には願ったり叶ったりの権益だった。ユコスが手に入れば、スピード復活のロシアにダメージを与えられ一石二鳥のビッグチャンスだった。逃がした魚は余りに大きかった。
 
 
「プーチンめ!なめるなよ!」激怒したブッシュは、復興途上の旧ソ連圏に手を伸ばすことにした。旧ソ連圏には石油など資源がたっぷり眠っている国が沢山ある。中央アジアのカスピ海は資源の宝庫と言われる。黒海に接するウクライナも今のうちにロシアから離しておきたい。復興途上の国はどうしても独裁政権なので、そこが狙い目である。民主化革命とすれば世界から非難されることはない。次々とアメリカの傀儡政権にしていくことにした。
 
 
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シュワルナゼ(1928~2014)
 
早速取り掛かったのがカスピ海の西にあるジョージアだった。ジョージアには既にヘッジファンドで名高いユダヤ人ジョージ・ソロスが反政府組織「オープン・ソサエティ財団」を作っていた。大統領はジョージア出身でゴルバチョフ時代にソ連の外相を勤めていたシュワルナゼだった。2003年11月に大統領選挙が行われた。選挙結果は現職のシュワルナゼが再選される。ところが反政府勢力は「不正だ!」「選挙やり直し!」と騒ぎ出した。議会ビルを占拠、乱入する。
 
シュワルナゼは辞任せざるを得なかった。シュワルナゼは選挙後にロシア公共テレビで「選挙は米国の著名な投資家、ジョージ・ソロスによって仕組まれていた。」と名指しで非難した。野党勢力は「やり直し選挙はアメリカに監視してもらおう。」と主張、2004年1月に野党のサアカシビリが勝利する。これを「バラ革命」という。傀儡政権を作ったアメリカはカスピ海の石油をジョージアを通過する「BTCライン」を建設させ、ロシアに経済的打撃を与えた。
 
 

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ヤヌコヴィッチ(1950~)
 2004年3月にプーチンはロシア大統領選挙に71%の支持で圧勝した。1期目の敵はオリガルヒだったが、2期目の敵はブッシュ政権だった。アメリカはジョージアの次にウクライナを狙っている。ウクライナはロシアの西国境に接し、南は黒海に面する最重要国である。2004年11月の大統領選挙で親ロシアのヤヌコヴィッチが勝った。しかし、ジョージアと同じパターンで「選挙に不正があった!」と親米ユシチェンコ陣営がデモを起こし再選挙を要求した。再選挙はユシチェンコが勝利。「オレンジ革命」という。
 
腕を組むプーチン。ガッツポーズのブッシュ。ブッシュは畳みかけるように次に中央アジアのキルギスを攻める。莫大な石油が眠るカザフスタンに足掛かりを作りたい。2005年3月、準備を整えた野党勢力は、現職のアカエフが圧勝した大統領選挙で「不正!やり直し!」とデモを起こした。バックにアメリカがいることを知ったアカエフはロシアに亡命した。「チューリップ革命」と呼ばれた。3連敗である。このままだとロシアは四面楚歌だ。
 
 
~~さわやか易の見方~~
 
***   *** 上卦は沢
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***   *** 下卦は水
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「沢水困」の卦。困は困難。困の字は木が囲いの中にある状態を表している。四面楚歌の状態とも言える。資金難に陥っている。誰からも信じてもらえない。前にも進めない。後ろにも下がれない。しかし、これが試練である。臥薪嘗胆に耐えた者こそ志を果たすことが出来るものである。
 
ハンガリー生まれのユダヤ人ジョージ・ソロスはアメリカでヘッジファンドとして成功し個人資産227億ドルの大富豪、CFR(外交問題評議会)のメンバーである。イギリスの為替介入でポンドを空売りし莫大な利益を得、イングランド銀行を潰した男として有名である。ジョージアの国民のことを何一つ考えないヘッジファンドが政権を変え、そこでも大儲けを図る。
 
日本では最近までグルジアと称したジョージアは大関になった栃ノ心の故郷である。ブドウの産地でワインの発祥の地と言われる。昔、そのワインは楊貴妃やクレオパトラにも愛されたという。「バラ革命」によりロシア教育から英語教育となり、反ロシア、親米の国になりつつある。共産主義にされたり、親米にされたりしながらも、国民は真面目にコツコツ働くしかない。
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