カリモフ大統領(1938~2016)
ジョージアの「バラ革命」、ウクライナの「オレンジ革命」、キルギスの「チューリップ革命」と旧ソ連圏での「カラー革命」はブッシュ政権の思惑通り進んだ。プーチンは窮地に立ちながらも、この革命シナリオが同じパターンであることを各国首脳にアドバイスする。「デモに屈するな、時間がかかればデモ隊への資金援助はなくなるはずだ。」 その後も案の定、「カラー革命」は同じパターンで各国を襲った。
2005年5月、キルギスの西隣ウズベキスタンを、2006年3月、ロシアの西ベラルーシを襲った。選挙で現職の大統領が圧倒的多数だったにもかかわらず、反政府デモは死者を伴う激しい反対運動を繰り返した。しかし両国ともプーチンから伝授された相手の作戦には屈しなかった。しかもウズベキスタンの大統領カリモフはアメリカに対し、2001年のアフガン戦争から駐留していた米軍基地の撤退を要求し実現させた。
天安門
プーチンはカラー革命を阻止すると同時にアメリカへの逆襲を考えた。かねてロシアと犬猿の仲であった中国との接近である。ソ連時代には同じ共産主義国同士だったが、1970年代のニクソンショックによりソ連と断交、アメリカと手を組んだ中国。ロシア人の感情は「憎きアメリカ、怖い中国」である。しかし、アメリカ一極支配を終わらせるには、どうしても中国と分断させねばならない。
中国はソ連崩壊後も着々と経済大国、軍事大国を目指し、GDPは日本を抜いてアメリカに次ぐ世界2位になった。アメリカと日本の大工場として発展してきた中国がロシアに振り向くだろうか。以前は兄貴面していたロシアも今ではGDPは中国の4分の1程度になっている。しかも日本の北方問題のように中露間には深刻な国境問題もある。しかし、このままアメリカに押されている訳にはいかない。プーチンはここ一番の腹を決めて中国に接近することにした。
胡錦濤国家主席(1942~)
「案ずるより産むがやすし。」中国も「大歓迎」だった。中国もアメリカに不安を抱いていた。ブッシュがイラク戦争を無理やり起こした時、「このままアメリカが中東を支配すれば完全にアメリカのいいなりになってしまう。」と心配した。中国は中東以外に資源の調達先を考えねばならない。そうするとロシアやカザフスタンが最適であった。このまま経済成長を続ければ、いずれはアメリカとの貿易摩擦が避けられないだろうとも考えていた。
ロシアと中国は2005年6月、お互いに譲歩して領土問題をスピード解決。2005年7月、中国の胡錦濤国家主席はモスクワを訪問、プーチンと会談した。さらに8月、中露の合同軍事演習を行い、2006年3月にはプーチンが北京を訪問、共同声明に署名した。イランの核問題、ロシア天然ガスのパイプライン建設、お互いの収穫は予想以上だった。ブッシュ政権にとって「新世界秩序」はイラク戦争から大きく後退してしまった。
ジョン・マケイン(1936~2018)
ロシアと中国が手を結んだことは旧ソ連の中央アジア諸国たちの方向を決めた。2001年に創設された「上海協力機構」があったが、プーチンと胡錦濤が手を結んで以来、「反米の砦」として周辺国が期待する組織になった。加盟国は中国、ロシア、カザフスタン、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタンだったが、インドとパキスタンが正式加盟、イラン、モンゴル、ベラルーシ、アフガニスタンがオブザーバーとして参加してきた。
ブッシュ政権は劣勢に立ってしまった。ブッシュの次の大統領を目論むマケインは「世界の3大問題は不安定なイラク、核兵器を持つイラン、プーチンのロシアだ。」と演説すると、プーチンは「彼はベトナム戦争で捕虜になっている。何年も穴倉に閉じ込められれば、頭がおかしくなるさ。」と応酬した。2008年、アメリカは「住宅バブル崩壊」「サブプライム問題」「リーマン・ショック」と続き、アメリカ一国帝国時代は終焉を迎えた。
~~さわやか易の見方~~
******** 上卦は天
******** 広い世間
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******** 下卦は火
*** *** 文化、文明、英知
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「天火同人」の卦。同人とは志を同じくする友人。「同人雑誌」の語源である。天の下にある文化があり、その文化に共感する人たちが集まってくる象である。人は一人では何もできない。志を同じくする友人が集まると大きな事業を成し遂げることが可能となる。友人は縁故のあるものに限らず、広く外に求めるのが良い。大事業も成就するだろう。
2000年から2008年、プーチンとブッシュがそれぞれの国で大統領を務めていた期間である。プーチンのロシアは借金だらけのどん底からの出発たが、8年間で借金は0に資産も増やした。着々と同盟国も増やしていった。一方、ブッシュのアメリカは有り余る経済を誇る唯一の超大国での出発だった。どこで誤算が生じたのか。無理やり突入したイラク戦争だろう。石油利権が欲しかったのだろうが、それで何を得たのだろうか。
私たち日本人はアメリカの傘の下にいると言わわれている。アメリカの核兵器で守られていることも確かだが、それ以上にアメリカの、政治、思想、文化が正しいものと洗脳されてしまってはいないだろうか。今でもアメリカに頼っていれば安心だと思ってはいないだろうか。日本人はどこの国にも支配されず、独自の文化を持ち独自の倫理道徳を大切にしてやってきたのだ。もう一度本来の日本人になろう。
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