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諍臣と日本学術会議任命拒否問題

2021-03-24 15:36:43 | より良き我国のために

 3月7日放送のNHK大河ドラマ「晴天を衝く」で後に将軍となる徳川慶喜が幕臣平岡円四郎に「諍臣になって欲しい」と頼みました。このソウシンとは主君に驕りや過ちがあった時はこれを諫める役の家臣です。如何に英明な主君でも所詮は人、その権力の大きさに目が眩んで時に驕り、時に過ちを犯すものです。そんな時に諍臣は己の命に代えても主君を諫めて正しい道に導くのでした。

 話は一気に現代に飛びます。2006年の第一次安倍政権は「お友達内閣」と揶揄されました。閣僚を適格性よりも身近さで選んだ結果、何人もの閣僚が不祥事で更迭されました。加えて安倍氏自身の健康問題もあって1年足らずで退陣したのです。組閣に於いて自身の判断で選び、あまり諍臣の意見を聞かなかったのではないでしょうか。

第二次以降の安倍政権では2014年に内閣人事局を創設しました。それまで官僚人事は各省庁内部で決めていましたが、審議官以上の約600名を内閣官房で決めることにしたのです。その弊害は同年即現れました。当時の官房長官菅氏が主導したふるさと納税制度の問題点を指摘した総務省幹部が左遷されたのです。菅氏はその幹部を諍臣として尊重し、その問題点を総務省内で議論すべきだったのです。事実現在高所得者優遇というその問題点は本制度の最大の欠陥の一つとなっています。

菅氏は「内閣の意向に沿わない官僚は交代させる」と明言しました。これでは諍臣は絶滅します。森友問題では安倍氏が「私や妻が(直接)関係していたら首相も国会議員もやめる」と答弁しました。この(直接)は後日間接的関与が問われる段になってから安倍氏が付け加えた文言です。この首相答弁に忖度した財務省理財局長は国会で嘘答弁を繰り返し、証拠となる決算文書の書き換えや隠蔽を指示しました。その功により局長は栄転して国税局長官になりました。一方局長の指示により決算文書改竄を実行した近畿財務局職員は国民の負託に反する意識との間で苦悩した挙句、自死を選びました。この職員こそ命を賭して権力者を諫めた諍臣と言うべきでしょう。

 権力者が諍臣を遠ざけるのは菅政権も同様です。昨年9月、発足直後の菅政権は日本学術会議から提出されていた候補者105名のうち6名を排除しました。同会議の会員任命制度が改まった2004年以降の歴代政権はこれまで同会議から推薦された候補をそのまま任命してきました。しかしこれは安倍政権から変わりました。2回の補充推薦で難色を示して結局欠員とし、更には交代数105人を超える数の推薦を要求して選択する姿勢を見せたのです。そして後継の菅政権でとうとう6名の任命拒否にまで至りました。

 この6人の学者に共通するのは安倍政権での安全保障関連法、特定秘密保護法、普天間基地移設問題などで政府方針に反対したことです。菅政権は国会で排除の理由を何度問われてもまともな説明をしていませんが、これがその理由と見てまず間違いは無いでしょう。同会議は総理大臣の所轄の下、政府から独立して職務を行う「特別の機関」に位置付けられています。その第一の任務は科学的な見地から政府に政策提言することです。当然ながら政府方針に反する提言もあり得ます。今回菅政権は同会議人事に介入してその独立性を犯し、6人の諍臣を排除したのです。

 菅政権のこの暴挙を決して黙認してはなりません。同政権は今、大学の研究機関に対して軍事研究に参加するよう仕向けていますが、同会議は1950年、67年そして2017年と一貫してこれを拒否する声明を出し続けてきました。この度の人事介入の目的は同会議を骨抜きにして政権に靡かせるためです。同会議が軍事研究を拒否するのは科学者が太平洋戦争に加担した過ちに対する深い反省に基づいています。菅政権は再び同じ過ちを犯すよう同会議に強いているのです。

 思えば2013年以降の安倍・菅政権は民主政治という観点で完全に失格です。彼らはそれまで守られて来た法解釈を無理やり捻じ曲げました。例えば憲法9条の条文からは決して導くことのできない集団的自衛権行使をこじ付けで容認に変えました。それは諍臣中の諍臣で「法の番人」たる内閣法制局長官を挿げ替えてまでの暴挙でした。また2017年には野党の要請による国会召集という憲法53条に規定された義務を無視して3か月間放置した挙句、やっと招集したその日に衆議院を解散させました。「モリ・カケ問題」で野党の追及を受けたくないばかりに、野党の要求に答えて審議するという憲法の精神を踏みにじった暴挙でした。

 彼らは現憲法の改定を目指しています。その目指す方向は戦前・戦中の社会、つまり明治憲法下に近い社会です。天皇を国民の上に置こうとしています。基本的人権は「公」の制限を大きく受けます。そして交戦権のある軍隊を持ちます。国民がこの改憲を受け入れないと見た彼らは正面切っての改憲でなく、事実上の改憲を重ねてきました。集団的自衛権行使容認と安全保障関連法、国民の「知る権利」を制限する特定秘密保護法、戦中の治安維持法に近い共謀罪法、自衛隊の敵基地攻撃能力保持方針などです。

彼らの目標は「武力で世界平和に貢献する日本」です。しかし決して武力で平和は得られません。世界を一つに纏めて国毎の武力を排し、対話に依るしか真の平和を実現できないのです。その意味で彼らは間違っています。我々は国際連合を改革し、対話で平和を保てる世界を目指すべきではないでしょうか。我々国民は主権者であり、投票で政権を選ぶことができます。この秋までに予定されている衆議院議員選挙では是非とも自公連立に代わる新しい政権を選択しましょう。その政権は諍臣を大事にし、議論を尽くさなければなりません。その分手間暇はかかりますが、それが正しい民主政治です。そしてその新政権に国連改革を託すのです。前民主党政権を我々は3年で見切りましたが、早まりました。あのまま続けさせていれば今よりは良い日本であったと思われます。より長い目で見て新政権を育てなければなりません。皆さんのご賛同をお願いする次第です。



2 コメント

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民主党が支持を失った理由 (三浦 宏紀)
2021-04-25 13:46:22
 この記事の内容を概ね支持します。
 ただ最後の部分に若干違和感を感じました。「悪魔の民主党政権」というのは安倍晋三の一方的な造語であり、3年間の民主党政権の評価はまだ十分に検証されていないと思います。しかし民主党が支持を失った最大の理由は、選挙時の最大公約の1つであった「任期中に消費税増税をやらない」ということを平気で破ったことです。これによって信用を取り返しの効かぬほど失いました。このことの責任を明確にし、どう考えているかを明確にすることが野党としての信頼を得るために必要と考えます。
三浦宏紀様への返信 (Kanohta)
2021-04-25 15:37:25
<この記事の内容を概ね支持します>有難うございます。
<悪魔の民主党政権>確か「悪夢の…」でした。
「消費税増税をしない」というマニュフェストを違えたことの責任は明確にする必要があると同意いたします。

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