六壁坂の伝説について、取材にやってきた杜王町に住む人気漫画家:岸辺露伴 - 高橋一生 と その取材に現地で同行することになった露伴の担当編集者:泉京香 - 飯豊まりえ 。
坂道の途中で彼らを追い越していった乗用車、その後部座席に乗る女性。
奥様って感じでしたねぇ~。と見送る泉。
すると、車の後ろから坂道を上がって来た子供たち。
2人を見つけると、いたぁぁ~っ!と声をあげて駆け寄ってくる。
泉は編集担当者らしく、自分が子供たちの対応をするので露伴には取材基地(集会所)へ戻ってもらうように伝える。
だが、好奇心旺盛な子どもたちは大人しくするはずもない。
あれ、岸辺露伴でしょ。サイン、サイン。サインくださいっ!
そう言って騒ぎ始める。
あぁ~、わかったわかった。
サインはまた今度。露伴先生、今日お仕事で来てるから。
その様子を、車の後部座席から降りてきた細いヒールを履いた女性が見ている。
うそだ、漫画描いてなかったじゃん。
漫画を描くための取材っ。そうだ、君たちも知らないかな。不思議な話。
学校の怪談とか?
そう、そういうの。もしかしたら露伴先生の漫画になるかもぉ~。
車を降りてその話をきいていた女性は、さきに集会所へ降りて行った露伴に興味を持ったようだ。
田舎の村らしく、村内放送 - ファイルーズあい の声が山に響いて聞こえてくる。
手掛かりはやはり、橋本陽馬 - 笠松将 と 乙雅三 - 市川猿之助 かぁ~。
走ることに取り憑かれた陽馬は、おそらく六壁坂に入った。
とすると恋人(早村ミカ - 真凛)が(死体で)発見された場所か?その近くが六壁坂の筈だが・・・。
石段に腰をあずけ、地図にペンで印をつけ始める。
乙雅三が交渉に行ったふもとの地主の家、陽馬が恋人の死体を捨てに行った場所とはルートが全く重ならない。
捨てる・・・。
乙雅三も何か・・・(ヘブンズドアで読んだ乙の本に記載された内容)交渉が難航している地主に、また挨拶に行ったら岸辺露伴と言う漫画家に全部売ってしまったという。
帰り道には迷うし、サイアク!(メロンを捨てていく)腹立って土産のメロンを投げ捨てた。(その時、後ろから乙に風が吹いた。)
乙雅三は迷ったんだ。地主の家から帰る途中、どこかに入り込んだとしたら・・・。
露伴は思いついたように地面に地図を置き、その写真からは分かりずらい山道のようなところを乙が歩いたのではないかと推察する。
そのアプローチはやはり曲がりくねりながら、あの大きな家へとたどり着いているのだ。
もし、この道が(本来の)六壁坂だとしたら・・・。
やっと子どもたちをなだめて降りてきたと思われた泉が
先生、ちょっとサインをお願いしたいって言う人が・・・。そんなことを言い出した。
泉君、キミなんのために・・・。
するとその人物が後ろからやってくる。それはあの車に乗っていた婦人 - 内田理央 だった。
さっきのお屋敷の人ですよね。アポ取らなくてもお話聞けそうじゃないですかっ!
じゃ、取材基地のほうで・・・。あたしは子どもたちから情報集めますね、結構いい情報持ってるんですよっ!
そう言うと、露伴とその女性を残して、泉は子供たちのいる方へ戻って行った。
坂の上で、つばの広い帽子とサングラスをとり、お辞儀をする女性。
露伴は彼女と集会所の二階の和室で話をすることになった。
改めまして私、大郷楠宝子(おおさとなおこ)と申します。不躾なお願いで、申し訳ありません。
子どもが本当に大ファンなもので、どうしてもと。
そう言って、用意させたのか色紙とペンを取り出す。
差し向かいに座った露伴が、その色紙を手に取りサインを描き始める。
先ほど、うちの近くで先生をお見掛けしました。
家・・・というと。
坂上の。
あぁ。
何か御用でしたでしょうか?
別に、たまたま通りかかって。
あぁ~。
この村で一番古い家柄だとか・・・。
古いだけの家だという彼女。それよりも村では、有名な漫画家である露伴が村周辺の山を購入したことで、ちょっとした騒ぎになったという。露伴が買った山は彼女の家のすぐ裏で、どうしてこのような辺鄙な土地を買ったのかと露伴に尋ねると、彼は気に入ったからだと答える。
こんな何もない処が?
漫画家にとっては、いろいろとあるかな。
色紙を描き続けながら楠宝子との会話を続ける露伴。
描きあがった色紙を彼女に渡して、受けとった楠宝子が色紙に視線を落としている間にヘブンズドアを発動させた。
ゆっくりと倒れ込む楠宝子を腕に抱え、辺りの様子を窺ってから彼女の本を読み始める。
大郷楠宝子(おおさとなおこ)
昭和60年(1985)
六壁坂井村生まれ。
享保3年創業の老舗味噌蔵11代目当主の一人娘として両親に溺愛されて育つ。〇〇丘女学院大学文学部卒業。趣味はガーデニング、読書。現在六壁小学校のPTA副会長~
六壁坂村で300年続く老舗の味噌づくりで成功した一族の一人娘であり、跡取り娘。
それまで本社のある東京にいた一家は、娘を空気のいい田舎で育てたいと、六壁坂村に戻る。
坂上にある屋敷からの通園通学は、常に運転手付きの車で送り迎い。
大学は片道2時間。それでも娘を溺愛する両親は一人暮らしを認めず、せめてもの自由は本宅向かいにある離れに住むことのみ。
彼女の本にある記憶により、露伴は屋敷の中を歩く。
離れに向かう庭の中を歩く楠宝子。その姿を庭師の男性の一人が目で追う。
離れで買ってきた百合を花瓶に生ける彼女に、先ほどいた庭師の男性:釜房郡平 - 渡辺大知 が家にあがり後ろから抱きついてくる。
な~おちゃん。
花を生けたまま、バイトは終わったの?と彼に声をかける楠宝子。
明日は休みだから一緒にゴロゴロしようという郡平に、人目があるからもっと気をつけてここへ来るように注意する。
だが、お構いなしに彼女の膝の上に頭を乗せて甘える郡平。
楠宝子も、そんな郡平をペットでも飼うように甘やかしていた。
その翌日、着物に着替えて姿見の前で襟を整える楠宝子。
郡平は昨日離れに泊まったらしい。喉が渇いたと、楠宝子に飲み物を催促する。
渡されたジュースを飲みながら、郡平は「この離れに引っ越ししようかな。」と言い出すが、楠宝子はそんなことをしたらつきあっていることがバレてしまうため、反対した。
ジュースを飲んだらゲームを片付けて自宅に帰るよう言われた郡平は、拗ね始める。
最近、楠宝子の態度が冷たくなったと言う郡平。
彼が庭仕事をしていると別の男性、郡平曰くダッサイ男がダッサイ車で大郷家の本宅を訪ねてきており、その来訪に合わせて楠宝子がおしゃれをして本宅に向かっていることに気づいていたのだ。
な~ん、ま~さかのま~さかだよねぇ。
ため息をついた楠宝子は、奥の和室にある化粧鏡の引き出しから封筒を取り出した。
勘づいているなら、話が早いわ。
そう言って、彼の目の前に封筒を差し出す。
お互い楽しい思い出だったということで・・・。
これは手切れ金ということらしい。
うちのお父様が許すわけがないのよ、アタシはこの家を継いで守らなきゃいけない一人娘。
アナタはただのバイトの庭師。春に卒業したら、結婚して婿養子を取ることも決まってる。
アナタの見たダッサイ男がそれ。
でも家柄は申し分ないし何年も前から決まってたの、だから・・・。
急な別れ話に驚いたものの、お金の入った封筒を覗き込んだ郡平は、その封筒を放り投げてふざけ始める。
や~っだよ、うそでしょ。なおちゃん。
いいじゃん、このままで別れなくても、ネッ!
今までどおり彼女に甘えてじゃれつけば、モトサヤに収まると思っているのだ。
廊下まで抱きついてきて、そのダッサイ男に自分たちの仲の良さをみせつけようとまで言い出す。
郡平を振りほどこうとして、楠宝子は郡平の頬を叩いてしまう。
怒った郡平が衝動的に楠宝子の頬を叩き返してしまうが、我に返る。
なんとか関係を修復したいとすがりつく郡平、彼を振りほどこうとして楠宝子が廊下で郡平を突き飛ばすと・・・。
ガッッ
なにかにぶつかる鈍い音が聞こえた。