kamekutobu

ザスパクサツ群馬の応援、スローライフ、終活日誌、趣味、旅行

WEのある音楽空間 「赤兵衛」

2005-12-18 19:10:26 | ジャズ喫茶

 

       いつもの席から見たSP全景

親父の知人からの情報で、連れられて出掛けたのが最初です。

秋まで、群馬県北部の猿ヶ京温泉にあった「喫茶店」です。

今でもこの店の様子はオーディオビンテージショップのHPで見ることが出来ます。

国道17号沿いにあり、周囲とは異彩を放つ山小屋風の建物なので、気が付いた方も多かったのではないだろうか。

店の入り口は道路とは反対側にあり、一寸入りにくかったかもしれません。

店に入ると、中世ヨーロッパに一挙にワープします。

建物は太い木をいかにも無造作そうにふんだんに使っている。

床は大谷石のような柔らかい?石張り。建物の壁は3面がガラス張りで、解放できる構造となっています。

この建物は、研修棟(宿)の付帯施設として位置づけられているようでした。敷地内はテニスコートもあります。

南側の壁際に、WE(ウエスタンエレクトリック)のスピーカーシステムがどっかと据えられている。

WEシステムって何と言う人もいるでしょう。

50年程前の米国映画館のトーキー装置と言えば、当たらずとも遠からずです。

兎に角、大きい。下の波板の後に、2本のウーファー(低音を出す部分)が隠れている。

その上に載っているのが、黒い金属の部分が(マルチセルラー)ホーンと言って、その後に付いているドライバー(振動板)から出る音をスムーズに導く通路となっている。

親父に言わせると、ウーファーとホーンとドライバーは大きいほど、偉いらしい。

室内を改めて歩き回ると、ヨーロッパアンティーク家具がさりげなく置かれている。その中でも、特に異彩を放つのは、室内中央の巨大な(ふいご)です。

 

           右チャンネルSP群

このスピーカーは低音、中音、高域のSPユニットで構成されています。

ツルの嘴のような細いホーンを持ったツイター(高音部)は珍しい。このお陰で、高域が伸び、高音不足の時に気になるトーキー色は少ない。

波板の後に18インチウーファーが二本隠れている。この波板はウーファーの音が拡散させるデフィーザーの役目なのでしょう。本来はこの波板の周囲にバッフルが付くはずですが省かれています。これが付けば、低音域がもう少し伸びるハズです。

           左チャンネル群全景

朝、窓を開け放し、遠方に見える山の四季の移り変わりを借景にして、音楽を聴く。

この主人はこれを求めて、この場所に来たらしい。確かに贅沢です。

マルチセルラーホーン(オリジナル)、ドライバー、ATT

     EMT927(フォノイコライザー付き?)

 一回り小型の930は時折見かけるが、珍しい。ターンテーブルの外周は、LPより2回りほど大きい。カートリッジはEMTのTSD15がメインのようであった。

 

   プリアンプ、300Bシングルアンプ、クレルMD1

CDトランスポートMD1とDACステラボックスST-2 96/24は、宿泊棟に泊まった時に親父が持ち込みました。これなら、ここに合うだろうと思ったようです。ぴたりと収まりました。

主人はCDはほとんど聴きません。

 

     SP電磁石用真空管式電源

なんなんだこれ!一見、風変わりな真空管アンプとしか見えないでしょう。

結局、ここには1年あまり通いました。

この間に、モノラルがステレオになり、ホーンが大型に代わり、電磁石の電源が真空管式になりと、行く度ににシステムが少しずつ変わっていきました。

このWEシステムは実はオリジナル品ではありません。WEをリニューアルしたものです。

幾ら保存状態が良くても、半世紀も経てば、当然、経年劣化はあります。クラシックカーだって、乗るのであればレストアは必要なのと同じです。

ウーファーのコーン紙は同じ会社の紙で貼り替えてあります。

アンプ類は、WEオリジナルの良質パーツを集め、リビルドしたものです。

プリアンプはWE回路を元に組み上げたもの。パワーアンプはWE回路の300Bシングルアンプのモノ仕様です。 

劣化のないホーンを除き、古そうに見えるけれど新品?なのです。

主人はクラシック、特に歌劇が好きなようであった。

なぜ、WEを使うのかと尋ねたことがあります。

50年前の音楽を聴くには、50年前の装置が似合うとの返事が返ってきました。

他のジャンルLPもあります。親父のリクエストに応えて、ジャズも掛けてくれました。親父が持ち込んだこともあります。

親父に言わせれば、低音の極低いところは出ていない。音像もハッキリしない。残留雑音も多い・・・・・と生意気なことを言っています。

 結局、10回近く行き、今年の夏は泊まり込みもしたのですから、親父のセリフは全く当てになりません。

赤兵衛の音を一言で言えば、青空のようにスカッとしている。箱に閉じこめていない音とはこう言う音なのかもしれません。

親父の部屋には滅多に入らない母もWEの音は気に入ったようでした。

僕も床から見上げながら聴き入りました。ビクター犬と言うのがいたそうだが、僕はさしづめWE亀であろうか。

この店は都合により10月初めに閉じました。

ご主人は何れの日にか、ルードウィヒ城で鳴らしたいと夢を語っていた。

さて、あれからどうなったのか。あちこち、あてもなく彷徨っているのかとカメながら案じていました。

そんな時に、久しぶりに電話がありました。

 「ホテルにいる。赤兵衛の4倍の床面積のところで最終調整中である。今なら、ゆっくり聴くことができるので、良ければ、開店前に来ないか。」 と嬉しい知らせでした。

 窮すれば通づる、・・・あれば、救う神ありである。場所は某有名スキー場のホテルらしい。

親父は暖かくなったら行きたいと言っているが、僕はホテルに入れて貰えそうもないので、つまらない。