7日付、夕刊三重に、「質疑に時間制限検討」の記事。
昨年3月の23時間議会に代表されるように、このところの松阪市議会は時間延長が目立つことから、議会の中に「質疑時間を制限しては」という声がくすぶっていたようです。
夕刊三重の報道にもあるとおり、
現在の松阪市議会の議案質疑には、当初予算案質疑を除いて質問時間や質問回数の制限がありません。
それでも以前、時間延長という常態化しなかったのは、質疑に加わる議員の数が圧倒的に少なかった(共産党議員や、私など一部の議員)からです。
最近、質疑の時間が長くなったのは、旧・松阪市の時代と比べ、質疑をする議員の数が増えたことを意味します。
質疑に参加する議員が増えた。それにふさわしい、十分な質疑時間の確保を!
少しばかり、質疑に参加する議員の数が増えたからといって会議時間を延長するのが常態化するというのは、質疑がないことを想定して会議時間や会議日程を編成していることが問題の根本にあることを示したにほかなりません。
昔のように質疑する議員が少なく、そのことを前提してスムーズに進行することを想定した議会運営は明らかに間違い。
議員が議案に対する質疑を行うのは当たり前。
質疑の数が増えたなら、それにふさわしい質疑の時間に日程を増やすようにするのがスジだと思います。時間を制限しようなどという動きは、本末転倒です。
多いときで30件もの議案を1日で質疑しなければならない矛盾 1つひとつ質疑すれば時間かかって当然
議会の会期が決まり、議会が開会すると、議案の提案・説明と、質疑の日(通常1日間)が別個に組まれます。1会期の議会に提出される議案の数は30件にも上りますが、質疑の日は1日だけです(当初予算案は3日間)。その日だけですべての議案を質疑するわけですから当然、時間は足りません。議案1件につき、たった1人の議員が30分質疑したとしても15時間。15分でも7.5時間かかる計算。これが複数の議員が各議案につき1件1件、質疑していけば当然、質疑時間はパンクするわけです。
これは昔の議会の慣行、すなわち、議長が「質疑はございませんか」と聞けば、「無し」とオウム返しする状態を前提とした、現実にそぐわない議会日程の組み方です。
世間のどんな会議でも、事項書にあがる検討テーマ(議題)は1回の会議につきせいぜい3件でしょう?
それを1日(通常、会議時間は午前10時から午後4時までのうちの6時間から昼休みの1時間を引き、トイレや、必要な人にはスモーキングのための休憩時間を引いた実質4時間)で30件もの議案を質疑せよというのは、最初から、議論をするな、と言っているようなものです。
日本の地方議会は、全国一律、戦前戦後、ずっとこんな状態で、「よろしくご審議をお願いします」と役所からおだてられてきたわけです。
議員も、「慎重な審議をした」などと自負するわけですが、それがいまの時代、市民が期待する議会かと言えばまったく違うわけです。
こんな状態を放置しておいて、議員の質疑時間だけ制限をかけるなんて、役所の思うつぼじゃないですか。
議案の中には質疑などしなくても済むような内容のものから何時間かけてでも質疑しなければならない性質のものまであるわけです。時間を制限しようというのは、これを一律、網にかけようということです。
ずいぶん無茶な話です。
むしろ、議案の提出段階でどの議案にどれだけの質疑の時間をかけるかなどを議論し、交通整理したうえで議会に諮って、議案質疑の日程を整理すべきでしょう。いまのように形式的な日程づくりはもうやめにした方がいいです。
小手先の質疑時間などに手をつけるより、改善しなければならない問題はいくらでもあります。
理事者の形式化した「説明」(棒読み)時間の方が質疑より多くを占める会議を改善することの意義
質疑の時間を制限しようという短絡化した方向に向かうのではなく、理事者(市長や部長ら)側の読めばわかることをダラダラと長く説明(説明ではなく、読み上げるだけ! 説明したというアリバイづくりのような形式的説明)する状態を根本的に改めさせることの方が重要です。
そのほうが、てきぱきとメリハリのある議会となり、傍聴する市民にもわかりやすいものとなります。
理事者の側も、議会運営員会で説明し、本会議で説明し、さらに常任委員会で同じことを棒読みし、という状態では、仕事の質としては低い技量で済むが決しておもしろくも楽しくもなく、やる気を起きない苦行でしょう。
それでも、これを長年の慣行として放置しておくことは実質、議会審議を形骸化し、ひいては議案チェックという議会の重要な機能を骨抜きにしてしまうことにつながっています。
せっかく傍聴に訪れた市民も、理事者側の説明時間や形式化した議会運営に耐えかねてうんざりして途中で帰って行ってしまうことが多く、重要な質疑の場面は見逃してしまうことがあるはずです。
会議(本会議でも常任委員会でも全員協議会でも)中の理事者の説明時間の方が、議員の質疑の時間よりもはるかに長い現実の方を改善することに目を向けるほうがはるかに意義深いことだと思います。
会期や会議日程をフレキシブルに変更すること
夕刊三重でも、駅西地区再開発問題で徹夜議会になったことを時間延長の象徴のように記事にされていますが、再開発予算の議案が提出されたのは、午前10時から続いた本会議で他の議案の説明や質疑が終了したあとの午後7時半。
それから市長、助役(当時)の提案説明があって、ようやく、議員の質疑に入ったのが実際。午後8時を過ぎてようやく1人目。11人が質疑すれば1人1時間(答弁を含めて)が平均だとしても11時間。途中、休憩とか中断とかが入るのだから終了時間が翌朝9時になるのは当然です。
市民に開かれ、傍聴しやすい状態をつくり、議員としてもフレッシュな頭で質疑し、他の議員の質疑や答弁を聞き漏らさない状態をつくろうと思えば、徹夜議会は望ましいことではありません。
会期を固定的にとらえず、翌日回しにした方がよかったと思います。翌日は土曜日だったのでなおさら。市長らが出席しなければならなかった行事もあったようですが、「公務の都合」(本来の公務である議会への出席であって、夏祭りへの参加ではないのだから・・・)でキャンセルすることは可能なはず。
時間をかけて質疑するのが悪いというような風潮をつくらず、いったん決めた会期を固定化させるのではなくフレキシブルに変更することや、ケースバイケースで日程を改めて対応することの方が重要だと思います。
議会に市長らが出席する必要はないときも設ける
議会日程を自由に組もうというときに問題となるのが、市長らの日程との調整だと思います。しかし、本来の議会の姿からすると、市長に出席してもらわなければならない会議は多くを必要としません。市長などいなくても会議は開けます。本当に必要なときだけ来てもらえばよいのです。
質疑すべき議案をすべて一括して同じ日に質疑するから、本会議場に入る部長以上の職員に加え、答弁に関係のない職員まで膨大(原則、課長級以上全員で100人以上)に本会議場横の控え室に待機しなければならないロスを生んでいます。
議会はもっと日常的に開かれるべきですが、とのつど課長級以上の職員と部長、市三役が拘束される状態ではにちにちの業務がストップしてしまい、仕事になりません。
そのような状態では困るから、関係のない職員にまで待機してもらう必要はありません。
それは市長すら例外ではありません。
前の千葉県我孫子市長は、議案を提出し、おそらく説明だけ済ますと、「あとは議会の皆さんでよろしくご審議をお願いします」と言って、本来業務に戻ったと言います。
松阪の市長は、賛成か反対かが微妙な議員のところに電話をかけ、「説明させてほしい」と事実上の賛成誘導をし、いさぎよくありませんが、本来は、議案として議会に提出した以上、議決されるか否決されるかは議会意思として静かに待つのが市長のつとめ。否決されれば、どんな良い議案でも、まだ機が熟していなかったのだととりあえずはあきらめて次期を待つべき!
審議するのは議会の機能。市長に質問するだけが仕事ではありません。質問するべきときは質問し、議案を質疑するときは質疑するが、議会として議員間で議案を審議する時間が必要です。
市民は議会はそのような場だと思っていますが、現実はそうではありません(質問と答弁の場です)。
議員間で議案を審議し、賛否を結論付けるような議会になるのであれば、市長や部長への質疑時間に制限があってもかまいません。