Big Machine 誌(毎月15日発売)では、10月の全国白バイ安全運転競技会を取り上げ、SRTTの内藤さんが詳しく解説されています。これ、ポリスチャンネルにある動画と合わせて読むとさらに楽しめます。
そしてお馴染みHONDA Bikes (奇数月26日発売)では我らが野口大将の「安心街乗りテクニック」。僕のひとつ前の記事にも書いた「バイクを降りての取り回し」についての記事です。桶川の HMS へよく通う方は、掲載されている写真がどの場所かよくチェックしてみてくださいね。坂道や狭い路地もありますよ。大将、あいかわらず満面の笑みです。
そして、写真に載せていませんがヤングマシン誌(毎月24日発売)で同じく埼玉の山下さんのライテク指南の連載が始まってます。ややぎこちない笑顔がとても真面目でためになる記事です。
この連休、朝早くに郊外へ出そびれて、すでに流れる渋滞の報を聞き、遠出をしないと決めたみなさん、暖かな窓辺で陽光浴びながらのぜいたくなひとときに雑誌のページをめくりつつ、まずは「乗れるイメージ」をあれこれ醸成してみるのも興味深いライテク・トレーニングですね!
(僕はこの週末、家族と趣味のバランス取り中です。ブログ、書きすぎ(笑))
趣味と仕事。仕事と家庭。家庭と趣味。北と南。東と西。右と左。夜と朝。敵と味方。柔と剛。友達と恋人。夢と現実。前輪と後輪。収入と支出。アクセルとブレーキ。リーンインとリーンアウト。陰と陽。プラスとマイナス。デジタルとアナログ。若者と老人。愛と恋。そして男と女…。ああ、ラブ&ピース。
とかくこの世はバランスが大切ですね。タイヤは二つしかないバイク。ここでもやはりバランスが大切、ということで、遅い速度でもバイクのバランスをとって意のままに操る練習。これがいま、バイクのトレンドです。速度を出せばバイクは倒れません。しかし、速度がゼロかそれに近い低速でも、ライダーたるもの、バイクをコカすわけにはいきません。スローライフな低速での楽しいバイク制御。これが楽しめればバイクがさらに手足に近づきます。
この日の湖畔のHMSバランスの練習には、バランスの神の光臨を祈願するマニアックな、いや、信心深いライダーが多数、集いました。イントラさんのチーフはトライアルの名手、長躯のSUイントラ。バランス教の教祖様です。
極低速の速度域では、バイクのミリ単位での動きを察知し、これを意のままの動作に転じる操作ができると俄然、面白くなります。というわけでこの日はバイクの取り回しから。重たいバイクも、傾けないでしっかり直立させれば小さな力で押し引きが可能です。重い750でもまっすぐ立っていれば、指一本でこれを支えることが可能であること、これ、敢えて自分のバイクで積極的に試すのは躊躇されますが、練習の場で存分に経験しておくと、確実に取り回しを恐れなくてすむようになります。
次なるは、「たいへん優しい発進と停止」です。まず、微速で発進し、「そ~っと」停止する練習。速度をゼロにします。ただし、ゼロになっても足はつきません。リアブレーキをそ~っと操作し、ペダルにチカラをいれ、フルードに圧を与え、リアブレーキのピストンを少し押し出し、ブレーキパッドを優しくディスクに押し付けて、リアホイールの動きにわずかに抵抗を与え続けた結果として生じる速度域ゼロの世界。無駄な操作は他に一切なく、バランスの軸はカラダの真中心。そ~っと速度域ゼロの世界に突入すれば、右にも左にも倒れない、直立した「静寂の世界」に一瞬、包まれます。これぞエクスタシーの瞬間。バランスの神の光臨の扉が開く瞬間です。ああ。恍惚。停止バンザイ。
そしてその状態から、バランスを崩さず再発進。わずかに右手にチカラを込め、アクセルワイヤを引っ張ってキャブのバルブを開け、ここに混合気をわずか多く流し込んでエンジンの回転を増すと同時に左手もわずか緩め、クラッチ板どうしをさらに摺り合わせてチェーンを張り、リアタイヤでを回してあげる、そんなプロセスを感じながら、光臨したバランスの神の怒りに触れぬよう、ふらつかないで速度ゼロからの脱出をはかります。バランスの神は本当にきまぐれですので、ふらつかずに停止できても、その状態でふらつかずに再発進というのはさらに難しいです。どうしても発進時にグラリと右か左へ行ってしまいます。光臨したバランス女神に、発進時もまっすぐにバイクを前へ押し出してもらえるような、そんな操作を身に付けたいところです。
もうひとつの出色の練習は、「サスペンションの動きを味方につける」ものでした。減速すると荷重が前に移動するのでフロントサスは沈みます。そして速度ゼロになったとき、沈んだフロントサスは伸びます。ああ作用と反作用。男と女のラブ・ゲーム。これは物理法則ですね。
そして、この伸びるサスの動きをこんどは、「後方への駆動力」として利用する練習です。つまり、「乗車したままバックする」わけです
停止寸前でクラッチを完全に切り、フロントブレーキをぐっと握ってサスを縮め切った瞬間、速度がゼロになると同時に両腕から抜重、クラッチは完全に切ったまま「バランスの軸」に乗り続けているとフロントサスの伸びを入力としてバイクをバックさせることができるのです。
これ、Fサスの動きの大きな軽量のトライアル車ではよく使われるものですが、なんと、やってみれば CB750 でもできるではありませんか!面白くて、ハマりました。マイ・フェイバリット・チョイテクとしてマスターしよう、とココロに決めました。
まっすぐ走って止まる発進停止のなかでも、これだけ多くの味わい深いバイク挙動を楽しめるバランス練習、ぜひ一人でも多くのライダーに味わっていただきたいと思いました。バランスが取りにくい、逆境の中でのバランス取りこそ面白い!というところです。
ここに加えて、「曲がる」要素、すなわちハンドルを左右に切る要素が入ってきますと、バイクの動作はもう百花繚乱、セルフステアを感じたり、逆にライダーが積極的にハンドルを切ったり戻したり。パイロン2本あれば、同じ8の字を描くにしても無限の練習方法がそこには存在し(前のFOXさんの記事参照)、参加した人々がインナー・ワールドに入り込んで一心不乱に練習する姿は、清廉な白衣をまとう修行僧のごとき様相です。
いよいよ練習も後半戦。バランスと小回りのマニアたちは、より狭くタイトなコース設定の狭路を求め、これに合わせて繰り出されるイントラさんからの挑戦状。「こんなの絶対750では無理!」な感じの小旋回を伴う設定は、通過者が誰もいないという惨状です。僕も撃沈でした。足を付かないで行う小道路旋回では、バイクを倒しこむ角度を深くするとともに、倒しこむ速度自体を速くしないとダメなんですね。ぼくはここが甘く、あと数十センチは詰められるはずの回転半径に泣きました。NTイントラ、降参です。またリベンジします。
そして最後は泣く子も黙る一本橋!幅30cm、長さ15m、高さ5cm の静かなる戦場。悟りの板。自己と向き合う板。なぜ低速好きのライダーはこの板に魅せられ、この板の上に長くとどまりたいと願うのでしょう…。通過7秒で普通免許、通過10秒で大型免許はOKなのに、マニアな、いや、健全なライダーはより長くこの板に乗っていたいと願います。なぜならば、この板の上で、「バランスの神との邂逅」を最も長く楽しめるからなのですね。20秒、25秒、30 秒…40秒…50秒…。迫る橋の末端、意外と進まない時間…。ああ、前へ行きたくないっ!一瞬たりとも気が抜けず、それでいて、呼吸を忘れてもダメ。心落ち着けながらも、強靭な意志力で神の光臨を勝ち取る気合…。全身の五感と第六感をも味方としながらのバランス女神との対話。ああ、なんてスピリチュアルなのでしょう…。
この日、もっとも長く乗っていた方2名はなんと2分超。しかもそんな超絶技巧派ライダーがお二人もいらっしゃいました。そして、そのお二人とも小柄で素敵な女性であったことに、多くのライダーが希望とやる気を抱いたことは間違いありません。(僕もかなり萌え、違った、燃えました。愛知の某氏は目が据わってましタ。)
バイクを巧みに操るコツは腕力でも脚力でもなく、愛、いや、鋭敏な完成と細やかな操作、ツボを押さえたバランスの制御、なのですね。お二人とも、本当にバイクが好きで、機会を見つけては練習に勤しみ、ツーリングをエンジョイしておられる、とのことです。実にアクティブなレディス・ライダーのお二人です。凄い記録を出し、きりりとした晴れ晴れした笑顔がたいへん魅力的なお二人でした。やはりここでも、「継続はチカラなり」は健在でした。一方我らチョイモテ・オヤジライダーは大汗かいて何度頑張っても、まったくかなわず、撃沈…。
「バランスは一日にしてならず」ですが、一方で「為せば成る」のも事実です。バイクのみならず、ママチャリですら練習ができるこのバランスの幸せ。これからの寒い季節は練習に好適な季節ですね!楽しみましょう人生のバランスを!
(頑張るぞー)
こんにちは~。
天気予報は大きく外れ、好天の飛び石連休中ですが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。
僕のバイク仲間に今年、還暦を迎えられた方がいらっしゃいます。齢60と言えどまったくそれを感じさせず、安定した着実な走りと速さで毎回、HMS上級の難コースを非常に楽しげに走っておられます。年齢から来る衰えなど微塵も感じさせないその走り、そのコツはやはり、
「継続はチカラなり」
にあるようです。仮にこの方をFOXさんとお呼びします。
よく「トシをとると、早起きが苦でなくなる」といいますが、FOXさんも例に漏れず、早朝にお強いのです。 そしてFOXさんは、朝の清清しい時間に近所の空き地で8の字を書くことを日課とされています。春夏秋冬、四季の風情を肌に感じつつ、早朝の凛とした空気につつまれて描く8の字。おそらくは年齢の数ぶん、周回されているのでしょう。60周。節分の豆も60個。バースデイケーキのろうそくも60本。
ときに大きく、ときに小回りに。直線を長くとったり短くとったり。場合によっては微速前進・バイクを立てたまま…。人生の喜怒哀楽を8の字に込めて…。雨の日も風の日も。素晴らしいご努力です。尊敬します。
8の字走行は、総合栄養剤のごとく、「走る・曲がる・止まる」バイク操作のエッセンスがつまっています。FOX さんはこの8の字を毎日の日課とすることで、若い者にはとうていかなわない、いぶし銀の走りを披露する素晴らしい現役ライダーなのです。
先日の休日には、FOXさんの還暦祝いが馴染みの飲み屋で盛大に行われ、そこには日ごろお世話になっているHMSのインストラクターさんにも多数お越しいただいて、世代を超えたバイク談義に夜遅くまで花が咲きました。私はその日、所用があって都合が付かず、遠くからお祝いをさせていただきましたが、「好きこそものの上手なれ」「継続はチカラなり」がなによりも強いモチベーションなんだなあ、と思った次第です。
あせらず、マイペースで、いろいろ悩みながらも、「好きだから・楽しいから」乗る。練習する。すべてはその積み重ねなんですね。
FOXさん、まだまだこれからも8の字を描き続け、我々に希望と感動を届け続けてくださいね!
(まことにおめでとうございます!)
この週末、秋川セサミプレイスの駐車場で行われた「はたらくクルマ・大集合」のイベントのひとつ、キッズバイク体験にスタッフとして参加しておりました。キッズバイクのイベントは弊ブログでも何度か取り上げていますが、いやもう、子供たちの
「理屈抜きで、カラダで覚える学習能力」
には毎回、驚きと感動を覚えます。いちおう自転車に乗れるとはいうものの、生まれて初めてエンジン付きのバイクに触れた 30分後には、もう基本的な「走る・曲がる・止まる」操作を覚え、一列にならんで周回コースを右回り~左回りに、前のお友達にぶつからないよう走ることができるようになるのですから。
そしてなにより、初めて遠心クラッチがつながってバイクが前に進んだときの嬉しそうな顔!純真な、キラキラした瞳の輝きがぼくらスタッフの喜びであります。
大勢の子供たちの間には、上達の度合いに個人差はありますし、男の子と女の子では、おおまかに見て走り方の傾向に差があります。そんな中でも「早く乗れるようになるコツ」を覚えた子供たちは、本当に短時間で左右に曲がれるようになっていきます。
実はこれ、我々オトナのバイク乗りにも通じるものがあって、とても興味深いと思いましたので、3つほど書いてみます。
一点目は、「ステップに両足を素早く乗せる子は早く乗れるようになる」ことです。最初はどうしても、アクセルを回して車体が動き出しても両足を出したままだったり、停止するはるか前からステップから足を外したりしがちですが、そのうちに、走り出して足をすっとステップに乗せ、止まるギリギリまで足を乗せていられる子は、いちはやくバイクの動きに対応して「人車一体」となることをカラダで悟るようです。
二点目は、「行きたい方向を見られるようになる」ことです。スタッフは普通、(子供の暴走防止もかねて)走ってくる子供の正面にいてアドバイスを出すのですが、ターンするときに、「ハイ、アクセル戻して、右にいる隣の先生を見て!」と出した指示を素直に聞き、そっちを向いたときにバイクがグラリと傾いて向きを変えることに気が付いた子供は、もう、その次のターンから、しっかり行きたい方を見て、アクセルを緩めるようになります。セルフステアをカラダが覚えるんですね。
最後に、「褒められて、自信が付いた子はさらに伸びる」ことです。上述の2点が少しでもできるようになって、これを大げさなほど褒めて自信を持たせてあげますと、さらに自分でアクセルの回し加減なんかを調節し、ブレーキの強弱も細やかにつけられるようになっていきます。前のお友達のゼッケンを見ながら、ぶつからないように、かつ、離れすぎないように…。子供ながらに、五感から得ている情報を操作にどんどんフィードバックしている様子がよくわかります。
これらのことって、ぼくらオトナのバイク乗りでもやはり上達していくには欠かせないポイントですものね。バイクの本来の動きをカラダで覚え、さらに、オトナならではの「乗り方の理論」への考察と実践が加われば、バイクを自在に扱える「幅」が広がっていくんですね。
初めてバイクに触って30分後には、トコトコ一列で走れるようになる子供たち、走りながらニコニコするにはまだちょっと早く、真剣な目つきそのものですが、走り終わったあとでの、「楽しかったひと?」の問いに勢い良く上がる右手と晴れ晴れとした笑顔は、どの子もおおきな可能性に満ちています。
「パパ。ママ。楽しかったよ。また乗りたい。」
事実、二日とも乗りにきた子供たちが何人もいました。ご両親の方、おつかれさまでした。
(僕らも子供に学ぶこと、いろいろあって面白いです。)
こんにちは~。
週明けから、ひっさしぶりに海の向こうへ出張にでております。暖かい Hawaii 島へやってまいりました。まあ、半分は仕事、半分は社員研修会、といった風情のものですが、今日は到着日なので半日ほどの自由時間があり、波打ち際の椰子の木陰で文庫本を読みつつ、まどろみのひと時…
早いもので、適当に思いつくまま始めた弊ブログですが、今週で1年続いたことになります。更新もまばらで不定期ではありましたが、暖かいコメントを多数いただき、「バイクに楽しく乗りたい。」と思うみなさんに僅かでもお役にたつことができていればこのうえない喜びでございます。
この写真のはるか向こうにある日本にいらっしゃるみなさまに、あらためてお礼申し上げます。
さあて、海でもみながらライディングについて、思いをはせる数日間といたしますかぁ。まだまだバイク道、奥が深いですからねっ。
(今日のライテクは、「リゾートでリラックス」気分で、ということで。)
P.S. 今週末の土日、セサミプレイス(サマーランド)にて「はたらくくるま大集合」があり、ここでキッズバイク・スクールも開催されます。家族サービスにどうぞご活用ください
みなさんこんにちはっ。
「今、みなさんは砂漠の真ん中を旅しているとしましょう。どうやら道にはぐれてしまったようです。五感を働かせ、何か道しるべはないか、休めるオアシスはないか、と歩き回りましたが、一向に道標はみつかりません。そのうちにノドが渇きはじめ、疲労も高まってきました…。そのときです。何の天の啓示でしょう。ふと足元に、泉のあるオアシスの場所も記載された地図と、コンパスが落ちていることに気づきました。あなたはこれらを拾い上げました。コンパスは正しく動作し、地図も大変詳しく書かれたものです…。さて、これであなたはオアシスにたどり着けるでしょうか?」
…そのようなSZK師匠の問いかけで始まりましたこの日の練習は、まさにその日だけを狙ったかのような雨天の中で行われました。早朝から冷たい雨のみならず雷までも鳴り響き、路面は完全にウエット。カッパを脱げば雨が降り、カッパを着込むと薄日が差してくる非情なコンディション下での練習です。
およそライダーたる者は皆、雨天のときは気が萎えます。ライディングには適さない条件がたくさん増えますからね。濡れれば夏なら蒸し暑く、冬なら寒く不快だし、視界は悪くなり、路面は滑りやすくなるし、制動距離は伸びるし、愛車がドロドロに汚れるし…、雨のほうが良いことは、たとえば失恋ツーリングでの涙が雨に人知れず洗い流されること以外に、あれこれ探すのは一般的には苦労しますよね。
でも、風を共にし四季と肌で付き合うバイク乗り、「雨だからライディング、やーめた」が必ずしも通用するわけではありません。ツーリングの帰り道、にわか雨が降ったからバイクをおいて電車で帰るわけにはいきませんものね。それならばいっそのこと、雨の日の乗りにくいコンディションでの「ライディング技術の引き出しを増やしましょう。」「雨でしか出来ない練習、やりましょう。」というテーマを掲げて練習は始まりました。
雨の日は、路面のグリップが悪く、ブレーキをかけるとロックしそうで大変怖いです。それならば、今日は敢えて積極的にタイヤをロックさせてみましょう。
『どのくらい握れば、もしくは踏めば前後のタイヤはロックを起こすのか、そしてロックを起こした状態では、バイクはどんな挙動を示すのか、これを実際に体験するにはまたとない機会です!』
というわけで、午前中いっぱい、リアブレーキとフロントブレーキをロックさせ、そのときのフィーリングをカラダで覚える練習を行いました。これ、書物を読んでいるだけでは絶対に身に付けることの出来ない珠玉の練習です。いざロックさせようとすると、意外と強くブレーキをかける必要があったり、「これくらい行けるだろ!」とラフに扱うととたんに「ズザーッ」と来て意図せぬ方向へバイクがグラリと傾いたり。五感のセンサーを感度最大に働かせ、午前の練習はたいへん有意義なものとなりました。このような技術は、たとえABSつきの車両に乗るとはいえ、身に付けておいてまったく損のないものです。そのため、この日はCB1300のABSも無効にした上での練習となりました。
なんとなく雨が止むような、路面も乾きそうな希望の中での午後の練習は、まずは8の字を自在に描きます。まだまだ路面はウェットです。強すぎるブレーキングのミスは、たとえばABSのようなデバイスが救ってくれる可能性もありますが、加速に伴うスリップについては、ライダーの右手の技量がすべてを担っています。救ってくれるものは他にありません。「死して屍、拾う者なし。」8の字やオフセットスラロームなどの旋回を終えたあとの立ち上がり、タイヤのグリップをしっかり感じながらアクセル操作を行っていくこと、細心かつ大胆に。いつもの何倍ものキメ細やかさが求められる次第です。つい気を抜くと、晴天時のようにラフにアクセルを開けたくなるところ、とにかく「忍」の一文字。しかしこれは練習です。その中で最大にグリップを生かした速さを具現化しなければ練習の意味がありません。これまた己との戦い。
しかもそれをココロから楽しめば、おのずと笑顔になることができます。難しい局面こそ、アナタの笑顔が輝きます!
僕も何度か尻を大きく振って破綻しそうになりながら、一日の走行距離は60Km、雨で悔しかったけど、おおいにためになる練習が終わりました。そのころになると西の空には夕焼けが。この日参加したみなさんは、みな、最初こそ天気に合わせてキモチもウエットだったと思いますが、夕方の湖畔を紅く染めた夕焼けに、今日の練習の成果を重ね合わせて晴れ晴れとした心持ちだったことと思います。
「ブレーキはどこまで使えるのか」「アクセルはどこまでならタイヤを滑らさずに開けられるのか」そういった、『今、その状況下でできること。もしくは、今、自分がどんな状況か?』を知識とカラダで知って初めて、余裕のある確実なバイク操作が可能になる、ということなんですね。
そこで冒頭の問いかけに戻ります。たとえコンパスと地図が手に入っても、
「今、自分がどこにいるのか?」
が分からないとオアシスにたどり着くことができません。自分の現在位置を知ること、何が限界なのかを知ること。これこそが練習の最大の目的なんですね。クローズドな場所での「限界を知る」練習、これを閉じた一義的なものとせず、それを公道での走りにあてはめ、「限界を知っていて」ようやく得られる「安全」があります。
・「これ以上速度を出すとすぐには止まれない。ファミレスやコンビニが多いし、この路地では飛ばせないな」
・「お、この先はブラインドコーナーだ。対向車がはみ出してきたら、バンクしたままじゃ避けられない。早いうちに減速だ」
・「今日は徹夜明けだ。とにかく眠いぞ。早く家に帰りたいが、こんなときこそクルマの流れに乗ることにしよう。飛ばしたりスリ抜けしたらフラついてヤバそうだ」
・「この先は工事中で道路に鉄板が敷いてあったな。しかも今日は雨。最徐行でいくぞ。」
日本一の SZK 師匠の感動の教えであります。湖畔の夕焼けがあまねくすべてのライダーを優しく照らしますように!
こんにちは~。
連休の最終日の河川敷は華やかでした。やっぱりチームマリなわけですよ。というわけで、ぼくもビューティーにハートフルなライディングを練習してまいりました。なあんて。実際は、素敵なレディースのみなさんの走るコースの手前の不整地で、何十回トライしても絶対に後輪が外側へ流れ内足をついてしまう難セクションに魂の8割を吸い取られてしまうような熱い走りを展開、すなわちバランス・セカンドでトライアル車 TLM220 とともにいい汗かいておりました。
(魂の残り2割は、レディスのみなさんが何の練習をやっているのか聞き耳を立てるエネルギーとして温存されました。)
朝の高崎線の中で、ヘルメットを膝にちょこんと抱えて不安そうにしているレディスの方は、まず間違いなく桶川で降ります。しかしながらTEC-Rのバス専用のバス停の場所はわかりにくく(あるのか?無いよ。)、初参加の方は必ずキョロキョロなさいますので常連チョイモテ・オヤジとしては量販家電の店員のごとく、積極的にお声がけするようにしています。この日も不安そうにしていたお一人のレディスの方に、明るい笑顔を取り戻すことに成功いたしました。
でもやっぱり、初めて、って不安がつきもの。何が起きるかわからないし、痛いかもしれない。でも、今は怖さいっぱいの自分のバイクを少しでも楽しめるように乗りたい、と勇気を出して初めてバイクの練習に参加してみました、というその心意気には素直に賞賛を送りたいですもんね。
…って、こればっかり書いていると
「お前はバラ2で練習してたのか、レディスに目移りしていたのかどっちだよ?」
と突っ込まれそうですが、交通の周囲の状況を注意深く読み取ることが安全運転の重要なスキルである、との精神に則り、胸を張って「両方です」といえるチョイモテ・オヤジの愛読雑誌は、ヤングマシン誌ではなくL+BIKE誌、モーターサイクリスト誌ではなくファッション誌LEON です。て、お前ジローラモかよ?
で、トライアル車。TLM とはもう6年くらいの付き合いになります。HMS 受講のきっかけが小林直樹さんの「HMS・トライアル入門」でした。僕にとっては思い入れのある車両です。ライディングの幅も楽しみも広がりました。マーカーの置き方ひとつでただの緩斜面、楽勝だったコースがにわかに超難関なコースに変化する。そんなドラマティックな一面にもチャレンジ心を掻き立てられてまいりました。
トライアル車には、
「メンタル面がライディングに及ぼす影響の大きさ」
も強烈に教えられました。「このセクション、行けるかな…ダメかな。」という中途半端な気持ちでアタックすると、絶対に玉砕します。間違いないです。
「絶対いける!大丈夫!」という岩をも砕く信念を抱えてアタックし、はじめて何とかなるのがトライアル。そしてそのときの達成感と喜びは、他にたとえようがなくただもう笑顔・笑顔。というわけで、虜になってしまうのがトライアルの特徴だったりしますね。
これは、意中の女性に一輪のバラの花を捧げ、ひざまづいて次の休日にデートを申し込み、「はい。」と小さくうなずいて承諾してもらったときに喜びに酷似しています。って、またそっちに話を振るのかよ?
しかし、今日のセクション、玉砕しました。いちばん最後に設定された「ヒューム管超え、着地後左に振ってすぐに右へのきつい弧の昇りのキャンバー・ターン」は何回やっても、十何回やっても、何十回やっても絶対に最後に後輪が左へ流れ、右足が出る、という絶望の超難関でした。イントラさんすら通過できない難関モンスター。結局最後までクリーンは出せませんでした。悔しさいっぱい。でも楽しさそれ以上。リベンジをココロに誓うからこそ、また次が楽しめるのです。
「一山超えればまた一山」人生そのものがトライアルです。頑張ってる人のデイリーライフは、いつもクリーンで通過!ですね。
「継続はチカラなり」。今日初参加のみなさんも、またのお越しをぜひぜひ!
3連休、大きな天気の崩れもなく行楽日和な三日間でしたねー。2006年のバイクシーズンのイベントもほぼおしまいに近づきつつあり、二俣川の講習も先週で終了し、自分の練習の時間を増やすシーズンがやってまいりました。
というわけで3連休初日は、河川敷で上級の受講です。この日の設定イメージは『もてぎのコース』、ということで相当に速度の乗るコース設定の中での的確な操作を探っていく練習です。(メモ風に書いておくとT木さん、K島さんのご担当。) 始まる前から
「今日のコースは大変に危険な設定です。くれぐれも無理しないでください」
との注意があり、最近、湖畔で『危険』の意味はたとえば、「4m幅の直列パイロン50本」とか、「CB1300 ではフルロックしかあり得ないようなオフセット30ターン」などのコースである、という認識に染まりつつあった自分にとっては、危険、ときいてわくわくした不埒者であったことを吐露してしまいますが、
「そうか、速度の乗る対面通行も危ないわ。そりゃそうだ。」
と我に返った次第です。
さて、みなさんは、スクールでの練習の目的は何だと思い、参加されていますか?……。これ、決まった答えはないんですよね。それぞれ、参加する人のキモチ次第で、百人百様の答えが出てくると思います。もちろん『テーマ』としての『目的』は
『安全につながるゆとりと余裕のバイク操作を習得する・安全マインドを醸成する』
に集約されますが、個別の技術的な内容に対して、何をどれだけ練習すれば「ここが終点」という絶対的なものはなく、それぞれに思うところがあるかぎり、目標を高く設定し、そこへ到達するための楽しく苦しい長い道のりはいくらでも続くと僕は思っています。
たとえばこの日の高速寄りの練習での走り方では『正解』はひとつではありません。ギッチギチにパイロンで固められたパイロン・コテコテ系の狭いコースでは、ラインをタイヤ幅1本分でも外してしまうと、もう通過さえままならず破綻してしまうような「このラインで走らなければならない」絶対的な解が比較的浮き彫りになりやすいのですが、高速系のコースでは(もちろん、レースでタイムを削りとる、という明確な目的のもとでは、正解の幅を狭めやすいという事実はあるにせよ、)練習のなかで走り方の自由度は高く、いろいろな走り方を習得するまたとない機会となります。
「直線的に加速するラインを長く取り、減速を短時間で行い、バンクの時間は短くしてすばやく向き変え、バイクを立てて明確に加速」
を練習するもよし、
「旋回速度を高めに保ちながら向きを変え、その後の加速につなげるために旋回の半径は大きくとり、トレードオフとしてバンクの時間は長く深くなるが、アクセルを当てる時間の総計は長めになる走法」
にトライするもよし、というわけです。「正解はどちらか?」ではなく、どちらも使い分けられることが重要だと思います。僕自身は前者の指向性が強いので、この日の練習は、
「ストレッチするのをしばらくサボった筋肉を久しぶりに伸ばした」
感覚のうちに興味深く終了いたしました。
この日はまた、遠路はるばる、日ごろは湖畔に集う仲間が桶川までお越しでした。都内の渋滞を抜けるのが大変だったようで、無事帰着され残りの連休で疲労回復されていれば良いのですが。河川敷と湖畔の距離がさらに一歩近づいた心持ちでした。
さまざまな経験は血肉となり骨となる。百里の道も一歩から。これからトレーニングには好適な季節ですね。
(路面温度は下がりますが、テンション上げてがんばりましょう。)
その前の週末に湖畔でフルに二日間楽しんだ「代償」として、先週末は家族サービス(?)やら、洗車やら、パソコンの組み立てやら、四輪の車検のためにディーラーへ往復やら、その他家の種々雑多な用事のために練習はお休みしましたが、それでも日曜の朝は、ちょいとお買い物に新宿までバイクで出る機会がありました。
特に連休でもなかったこの日曜の朝は、甲州街道も相当空いていて、非常に快適に走れます。そもそも都内23区あたりで、渋滞をほとんど気にすることなく運転を楽しめるのは、「日曜の午前中のみ」と相場が決まっているわけですが、(そのかわり、レーダーの取り締まりもほとんど定点観測のごとく決まった場所でかならず実施してます。) この日もすいすい、R20 のライディングを楽しむことができました。
おりしもツーリングにはベストシーズンですので、バシッとウエアを決め、そうそうたるSSやリッターネイキッドともすれ違ったり、伴走したりもしました。ぼくは街乗り最強のトリッカーでトコトコ走っておりましたが、ハヤブサ+ヨシムラ管や、おろしたての ZZR1400 など、微笑ましいくらい強力なバイクも多数。これから中央道に上がって西を目指すんでしょうか…。しばし併走しながら、若い彼らの走りを見るとも無く見ておりました。
と、前方の信号が赤になり、減速し停止する段になりますと…、おぉ、これはいけません。巨艦を操っていた若者、にわかに巨体をもてあましヨタヨタと左足のみならず右足もステップから離して両足地面にベタベタベタ…。嗚呼、とてもカッコ悪いっす。 SSやフラッグシップ系は前傾気味なこともあって、右足でリアブレーキをコントロールできない乗り方で両足バタバタ…の姿はイケてません。残念です。ライダーがマシンに負けてます。ライダー君もマシンに負けないくらい、マシンを乗りこなして欲しい…。
でも、自分の若いころを思い返せば、人のことは言えないな、と思いました。とにかく最高速の出るマシン、排気量の大きなマシンへの指向性が強かったあのころ。逆輸入車が無くなる、100馬力規制が入る、というので、フルパワー車を入手するのは今年が最後、という年に150万の大枚はたいてZZRを買ったあのころ…。自分がリッターバイクに乗っているだけで、それがバイクに乗せられているとも知らずに、満足していたに違いないのですから。
自分自身もバイクに乗り出して、大きな事故も経験したりして、ようやく、スクールとか講習会の存在を知って練習するようになったのは公道に出てから10年後でした。スクールで習うことは、「免許をとるため」の教習所で習ったことのその先にある、実践的な乗り方でした。いや、正確には教習所でもその実践の乗り方のエッセンスは教わったはずなのでしょう。そのときは自分のキャパを超えていて、吸収しきれなかった内容だったのだと今にして思います。 「ちゃんとバイクを操作する、って面白いな!」 心底、そう思って練習に続けて参加するようになりました。練習からの帰り道は、毎回、バイクがさらに軽く感じられるように、そして、周りの風景や街の雰囲気をよく感じられるようになりました。「なるほど、あの練習はこういうところに生きるのか。」 もっと早くにちゃんとライディングを習っていれば…。「たら・れば」は言い出せばきりがありませんし、それは切ないことではあります。
しかしバイクの場合、 乗り続ける限り、ある意味、危険やアクシデントとも付き合うことをも必ず意味しており、そのリスク管理は乗り手である自分の責任であり、タスクです。リスクをミニマムに減らす努力も自己責任。そのためのアクティビティの一端がスクール参加であり、もしくはスタッフとしてスクールに関わることであるとすれば、これを楽しいと感じている自分は幸せなのだと思います。そんな幸せなら、より多くのライダーに手に入れて欲しいと思いますし、弊ブログをごらん頂いた皆様のまわりからも、そんな幸せに手を伸ばそうとするライダーがどんどん生まれれば良いな、と感じます。
交差点でベタベタ両足を付いていた彼らSS乗りも、きっとそのうち技量を上げて、望ましい方向へと経験を積んだライダーになって欲しい。そう思った初秋の日曜の朝でした。
(人のふり見て我がふり直せ、です。)