K巨匠のいかんともなるブログ

K巨匠:英国から帰国後、さらに扱いづらくなった者の総称。
また常に紳士的ぶりつつも、現実には必ずしもその限りではない。

千と千尋の神隠し

2008-07-24 02:08:31 | 日本情勢
今日はK的休暇日だったので、久々にDVDを見た。

「千と千尋の神隠し」

昔からジブリは好きだったので、
高校生だった頃に友達と上演開始日に観にいった。
けれど、
「何かビミョーだな。」
って思った記憶がある。


が、


今見ると、この作品はとてつもなく深く、最高に面白かった。
なので、感じたことを今日はこのブログに書こうかと思う。




「トンネルを出ると、不思議な町でした。」


これが「千と千尋の神隠し」のキャッチコピーだったみたいだけど、
覚えていますか?

けれど、トンネルを出たところにあった町は
本当は不思議でもなんでもない、
まさに「現実」がであったのだと思う。

あそこまで、東洋的・多神教的で懐古的な町並みを作りだしておきながら、
「現実」とパラレルな世界観を演出している。


ゆばーばの湯屋「油屋」では、皆が名前をとられ、働かされる。
そこでは働かないものは無用であり、動物にされてしまうのだ。
千尋の名前も「千」にされてしまう。

そこには、自分の個性を失いかけている現代人。
そしてそのことにすら気がつかずにひたすら働かなければならない社会。

「油屋」は見事に「現実」の矛盾を映し出し、批判している。


また「油屋」にやってくる神々も人間が作ってしまったものだ。

本当は川の神であったヘドロは環境汚染のために本来の姿を見せられなくなっていた。

そしてカオナシはお金や食べ物等の相手の欲望に応えることでしか
コミュニケーションをとれなくなってしまった「私たち」の化身なのではないだろうか。


ハクは最初に千尋を助けたけれど、、
その理由が双方共に理解できなかった。

でもハクは昔千尋がおぼれた川「琥珀川」の主だった。
それも人間によって埋め立てられ、
行き場を失って「千と千尋の神隠し」の世界に来たんじゃないかと思う。
そして名前すら失い、現実から忘れさられてしまったのだ。


だからこの作品は、資本主義や拝金主義の裏側を見事に描写していた。


本当に面白かった。


けどひとつ難点をいえば、
ちょっと子供には難しすぎるところか。

ナウシカとかラピュタには
子供にも大人にも楽しめるメッセージが込められていたからな。

良くも悪くも「千と千尋の神隠し」は
大人が楽しむアニメといえそうだ。

幕末と日本

2008-06-16 23:12:56 | 日本情勢
あなたは何人ですか?



例えば外国人からこのように質問されたら、あなたは何と答えますか?

多分よほど変人でなければこういうでしょう。

「日本人です」と。


「何当たり前のこと言ってんだ!?」
と思うかもしれません。



確かに今の私達には当たり前のことですが、
150年以上前の人に聞いたらこうした答えは返ってこなかっただろうと思います。

多分、薩摩藩の人に聞けば薩摩藩人と答えただろうし、水戸藩の人に聞けば水戸藩人と答えたでしょう。

つまり人々の帰属意識は基本的に「藩」に属していました。
今の日本に住む人たちの故郷は薩摩藩なり水戸藩であって、
「日本」ではなかったのです。



では、なぜ私たちは自分たちのことを「日本人」と思うようになったのでしょうか?



それは列強諸国(イギリス、フランス、アメリカ等)が鎖国状態だった日本に干渉してきたからであり、
それが「幕末」という一つの短い時代でした。

この「幕末」という時代には、幕府体制を保ちつつ武力を強化しようとする勢力と、
幕府を倒し天皇中心の体制に変革しようとする勢力が血みどろの戦いを繰り広げました。



私見では「幕末」という時代は、日本史上、
いや世界史上の一つの奇跡であったと思います。



当時、列強諸国の圧力がかかった国々はたくさんありましたが、
どこの国も体制自体を変革することはできませんでした。

かろうじて植民地化を逃れた国々(イラン・トルコ・タイ等)でも日本のように急激に近代国家に生まれ変わり、
列強諸国の仲間入りすることはできなかったのです。




「江戸幕府と諸藩」であった国は、10年にも満たない期間で、
「日本」になりました。

薩摩藩人も水戸藩人も土佐藩人も長州藩人も皆、
「日本人」になったのです。



しかし、この常識では考えられないほどの急激な変化には、
当然のことながら多くの犠牲が伴いました。
多くの志士達が自らの信念のために死にました。




志士とは「志」をもった人たちのことです。



「自らの命(もしくは人生)をかけて生きるとはどういうことなのか?」


「何を考え、何を目指して生きることが、真に幸せと言えるのか?」


「自分は何のために、何を為すために、生まれたのか?」



幕末の志士たちは、現代の日本人が失いかけている大事なものを教えてくれるようで、

だからこそK巨匠は幕末という時代がとても好きなのです。