わたしは六百山

サイゴンでの365日を書き直す 

テト5 (テト3日目)

2006年01月31日 | 雑想
こちらk-603.
テト4 で紹介しなおした鉦と太鼓の鳴り物の正体がわかりました。
テト2日目(昨日)になると、みんなさっぱりした服を着て、とくに子供は初めて通す服を着て、女性は裾にきれいな花の刺繍がついた一張羅のアオザイを着て、親戚のうちなどを訪問します。これが、みんなバイクで行くのですから、いつもと違う服であることは、この方面に無頓着な私にもはっきり分かります。
さて、夜があけると同時に、あの鳴り物がやってくるのです。
トラック(大型トラックです)の荷台に太鼓と鉦をのせて・・・。
みんな そろいの真っ赤な上下の団服に黒い帯をきりりとしめて、背中には「心華龍獅団」なんて字が金字で書かれています。
つまり、龍と獅子舞の大集団なのです。
私が見たのは、ひとつは黒帯、これは2台の大型トラックでやってきて、まさにアクロバット的な獅子の舞い踊りを見せてくれるのです。総勢5、60人ぐらいいました。
毎年同じ家に来るのでしょうか?
そうかもしれませんし、あのトラックの上で鉦と太鼓を叩いていたのは、
「来たよ、来たよ、獅子舞が来たよ。縁起物だ、さあ、やらないか、やらないか」と施主(興行主)を探していたのだとも思われます。あるいは
「やるぞ、やるぞ、龍獅の踊りだ、みんな見に来い、この近くでやるぞ」と、見物人を誘っていたのでしょうか。
いったい、あのアクロバットの施主になるのがいくらぐらいかかるのか、まあ、私の生徒の中にはこれを頼むほどの数奇な人はいないでしょうから、聞いても無駄でしょうが、(でも、もしかしたら という事もありますが)私の見積もりでは、2,000,000ドンぐらいじゃないかと想定します。
さて、
鉦と太鼓、それに名前を忘れてしまいましたがシンバルが2対。これがすべての進行を計っています。
アドリブのようでいてアドリブでない、たいした打楽器のトリオ(ん?クアルテットかな)です。
1メートルぐらいの高さから順に2メートルぐらいまで、まず50cmぐらいの間隔で横に1本、次が2本、次が1本、また2本と石蹴り遊びのときのように交互に本数をかえた柱の上に30cmぐらいの円盤があり、この上で、7,80cmの大きな獅子頭(張りぼてで、大きなまぶたがぱちぱち閉じたり開いたり、まつげが長く愛嬌があって、口がおおきく開閉します。目には電気がついているので、暗くなってもやるのでしょうか)に入った頭役と背中をまるめた尾っぽ役が、跳んだり跳ねたり、首を持ち上げたり、体を回転させたり、空中でまさに息のあった芸を見せるのです。


  O   O   O   O
O   O   O   O  
  O   O   O   O

(柱を上から見た図、高さは右へ行くほど高くなる)

下にマットが置いてはありますが、場所はアスファルトの道の上です、落ちればけがもするでしょう。

そして、
最後は10mぐらいの太い一本の竹のてっぺん(上から50cmぐらいの所に、1本の赤い布で巻かれた横棒がある)の獅子舞です。もちろん竹は下で人間が、紐と手で支えています(鉄の台座もある)。これを、依頼を受けた家の前で興行します。
終盤には、3階のベランダから差し出される餌(菜類)を、体をぐっと伸ばして口でくわえとったりもします。
太い竹がぐっとしなります。「おおおおおお」
もちろん最後にはおめでたい真っ赤な垂れ幕を口からたらします(紙吹雪付)。
スケールが大きすぎるけれど、門付けです。
私は惜しいことに、龍の踊りを見逃したのですが、獅子の前に見ることができたはずです。
獅子は8頭いました。龍は2頭です。

もうひとつの集団は、青帯を締めていました。
こちらは、トラック一台で、獅子舞中心でした。依頼を受けた家の前にラグビーボールほどのスイカを置き、それを獅子が食べようとするという、ちょっとした滑稽味のある芸でした。それでも30人ぐらいの集団でした。こちらは、なんともオープンで、見物人のうちの1人が10,000ドンのご祝儀を、獅子の口に入れたりしていました。
ということで、正解は サーカスの呼び込みではなくて、正真正銘の龍と獅子の門付け大興行でした。

ところで、どうしても書いておきたいテトの風景があります。
それは、賭け事です。
市内の至るところで、大人だけでなくそこに子供もまじって、その子供も普段はレストランの客の靴やサンダルを磨いて、5000ドンの金を稼いでいる子供までが、歩道に敷いたダンボールの上の円座に混じって金を掛けているのです。(もちろん、家の中でも床や、テーブルを囲んでやっています)
平常時はよく将棋をさしている姿が街のあちこちに見られますが、テトの時はそれはどこにも見えなくなり、かわりにトランプや数字合わせ、それに色のついた小さなカードを使っての賭博が出現します。
トランプでやるのが一番多いようですが、これには何種類かがあるようで、一番簡単なのは次のようなものです。
まず、親(胴元)がトランプを切ります。
客は自分が賭けたいだけの金を自分の前に置きます。
親はその金の上にトランプを裏向きで3枚ずつ配ります。
親も3枚のカードを引きます。
残ったカードは中央に置き、裏返して、山にします。
子は配られたカードの数字を合計して、それで、その回を戦うかどうかを決めます。
子が勝負から降りるときは、3枚のカードを裏返したままで場に返します。そのとき、張ったお金は親に取られます。
親はもう一枚山から引く権利があります。でも引いたら必ずその数を加えなくてはなりません。
計算は簡単です Aと 絵カード(K,Q,J)は0ポイントです。
数字をあわせてそれから10の位の数字を除いた数が自分のポイントです。
ですから最高ポイントは9です。
勝負はあっという間につきます。
賭けるお金は1万ドンから10万ドンです。

街のあちこちで、ひがな車座になって大人も子供もやっています。

でも、これはきっと ベトナム南部の人たちの習慣のような気がします。
ハノイ周辺やフエあたりでは、こういう気質が育たないような気がします。
とても堅実だと聞きますから・・。

博打、 これはきっと新年の運だめしのつもりでやっているのでしょう。
あちこちでやっていると、やって当たり前の光景に見えてきます。
当局の取り締まりなんて、全然ありません。
HCM の テトの風景です。



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