山口 香の「柔道を考える」

柔道が直面している問題を考え、今後のビジョン、歩むべき道を模索する。

海外合宿の考え方

2009-07-06 14:50:18 | Weblog
 ブラジル・リオでグランドスラム大会が行われた。男子は世界選手権の代表が数名参加しており、優勝はなかったのもの3位以内には入っていたので一安心といったところだろうかしかしながら、大会が多くなったこと、オリンピックへの出場に必要なポイントがオリンピック2年前からの大会から積算されるなどからか、どの大会をみても出場人数が少ないのが気になるこのシステムは今年1月からスタートしたばかりなので、とりあえず1年間過ぎてみないと評価できないとは思うが、IJFの思惑通りには進んでいないように思われる

 世界選手権まで2ヶ月をきった。この後、男女ともにスペインでの合宿、国内合宿を経て世界選手権を迎えることなる。何人かの選手が小さな怪我を抱えているようであるが、十分なコンディションで大会を迎えられることを願う

 今年は男女合同でスペインにおいて7月16日~23日まで合宿を行うようである。なぜ、スペインなのかはわからないが、毎年この時期に欧州のどこかで合宿を行うのが習慣になっている。世界で勝つためには欧州の柔道に慣れておくということが大きな理由である

 私自身これまで、この時期の欧州合宿に疑問も持たなかったが、よくよく考えてみるとこの時期の欧州合宿が実質的に必要なものなのだろうかという疑問を持つようになった。まず、これまで以上に大会が多くなって選手達にかかる負担が大きくなったことが大きい。国内での合宿も多く、怪我をじっくり治す時間もないようであるのが心配だ

 篠原監督のコメントを聞くと「この大会に出場できなければ代表を変える」とか「この合宿に参加できなければ代表を変える」といった励ましのようにも、脅しのようにも受け取れる確かに、選手は甘やかされるべきではなく、鍛えなければならないしかしながら、大会や合宿に参加することがメインの目的でもない

 また、女子のケースで考えると、どの選手も国際大会では十分な成績を挙げており、欧州の選手への対応は十分であると思われる。逆にこの時期欧州に行って手の内を見せるよりも国内でじっくり調整した方が賢いのではないかとも思う。実際、谷選手は欧州合宿にはほとんど参加しなかったし、参加しても乱取はしなかった。鍛えるべき選手と仕上げるべき選手とでも言おうか、そういった棲み分けも必要だろう

 こういった状況を考えるに、どうしても欧州の選手と手合わせをしたいのであれば欧州で合宿を行うのではなく海外のチームを招待して日本で合宿を行うという方法も考えられる。こちらが行くのも、あちらが来るもの予算的には変わらない。逆にメリットとしては、移動による時間の手間、疲労度が少ないこと、より多くの選手が海外の選手達と練習の機会を得られるそして、仕上げの選手に関してはこの時期に無理して海外の選手と乱取する必要もない。

 もちろん補助金での事業の場合、制約もあるだろうが最も効率よく成果を上げるための事業にするためにはJOCなどと交渉する価値がある。

 実は日本には、年間を通して海外からひっきりなしに多くのチームが合宿に訪れている。いくつかの大学はその受け入れに四苦八苦するほどである。こういった環境をナショナルチームが生かしきっていないようにも見受けられる大学に海外からのチームが来ると案内を出して個別分散などの合宿を組んでもらって選手を派遣してもらうこともあるが、実際に参加した選手は海外の選手と積極的に練習しようとしないといったケースもみられるこういう選手はわざわざお金をかけて海外に連れて行っても価値があるのだろうか?と思ってしまう

 日本が積極的に海外のチームを予算を出して受け入れれば、国際交流、貢献としても評価される。昨年と比べて大会の数が多くなり、選手はもちろん、コーチなどの派遣役員にかかる負担も大きくなっている。そういった意味では、これまでの年中行事として実行していた欧州合宿も本当に必要なものなのかどうか、時期、やり方を含めて検討する価値がある。全柔連会長は「常識を疑え」ということをよく言われるのだから