山口 香の「柔道を考える」

柔道が直面している問題を考え、今後のビジョン、歩むべき道を模索する。

雑念のない若さ

2009-07-01 14:07:08 | Weblog
 先日、ミズノオープンよみうりクラシックにおいて石川遼選手が初日からの好調を維持して優勝を飾った。ゴルフは生涯で数回程度しかプレイしたこともなく、知識もないが、彼の活躍には興味がわく。高校生にもかかわらずプロに転向した時には、「世の中そんなに甘くないだろう。高校生なんだから学校に行けよ。」的な見方を正直していたしかし、最近では感心することのほうが多い大会によって調子の波は確かにあるようだが、技術、体力、精神力ともに着実に進化しているのが見てとれる

 何より素晴らしいのは攻めの姿勢を貫くところである。最近、柔道の試合を見ていて思うことは「リスクを背負ってでも挑戦する」といった闘いが少ないのを残念に思っていた。「やるかやられるか」の試合は見ていても面白いし、醍醐味を感じる。そういった意味において石川選手のゴルフは魅力があるし、人気が高いのも理解できる

 ミズノオープンでも15番でOBを2回打ってリードを一気に無くし、2位以下の選手との差がなくなった。普通、こういう状況であればリードを守ろうと堅いゴルフになると思われるが、16番でさらに攻めてチップインイーグルを決めて一気に突き放した。谷選手の絶頂のときがそうであった。試合が後半になって競っている場合、誰もが守りに入りそうになるが、彼女はそこで一気に攻めたて勝利を引き寄せた

 魅力のある選手というのは、勝つことももちろんだが、相手をどうやって料理してくれるだろうかという技や方法に興味がそそられる。勝負した結果、万が一負けたとしても見ている方は納得できる。また、彼らは積み重ねた練習での自信からリスクコントロールができ、負けることも少ない

 もう一人、気になっているのは全盲のピアニスト辻井伸行さんである。バン・クライバーン国際ピアノコンクールで見事に優勝し、一躍脚光を浴びた。今では世界各国で引っ張りだこの状況のようだが、周りの人間ほど彼自身は浮かれたところがなく、与えられたひとつひとつの課題と向き合い、一歩一歩進んでいるように見える。彼の言葉で印象的だったのは「目が見えないという部分で評価してもらうのではなく、一人のピアニストとして評価してもらいたい」という言葉だった。ハンディーを背負って辛いことや大変なことも多かっただろうにそれを利用しない潔よさがいい

 この二人を見ていて共通しているところは、雑念無く自分の目標に真っすぐに打ち込んでいるところだ。最近の政治などを見ていると駆け引きばかりが先行し、計算ずくの言葉や行動ばかりで興醒めする。そういった意味で若い二人が真っすぐに歩んでいる姿は清涼感を与えてくれるし、日本人も捨てたのもではないと感じさせてくれる

 マイケル・ジャクソンの死も衝撃的だった。彼は幼い時からスターとなって、それ故に生きにくい人生でもあったようだ。全く比較の対象にはならないかもしれないがスポーツ選手も似た部分を持つ。人生のピークを若いうちに迎えてしまう。ファーストキャリアをセカンドキャリアが抜くことの無い人生である。芸能でもスポーツでもトップに立ったり、夢をかなえることは素晴らしいが、そのことが長い人生においては足かせになり、生きづらいこともあるように思うと複雑である

 若く、活躍している人は、まぶしく、輝いているし、見ている私たちも晴れがましい気分になるが、同時に彼らが将来どのような道を歩き、どのような人生になるのだろうということにも興味がわく

 石川選手の試合には常に多くのギャラリーがいる。彼らはきっと自分にもあった「雑念無く、真っすぐに生きていた時代」を重ねて見ているのだろう

 柔道にも石川選手のような華のある選手が欲しい。それには何より、プレッシャーはあっても攻めの姿勢を貫くことが大事である