山口 香の「柔道を考える」

柔道が直面している問題を考え、今後のビジョン、歩むべき道を模索する。

アジア大会

2010-11-18 17:01:34 | Weblog
 アジア大会柔道は、男子が3階級、女子が4階級で金メダルを獲得したものの、怪我などのアクシデントも多かったようだ。

 アクシデントの一つは63kg級の上野選手の準決勝戦で北朝鮮の選手との対戦で目のあたりを負傷したものだった。開始早々に相手の右手が上野選手の顔面にパンチのようにあたって上野選手がうずくまるシーンがあった。かなり強烈にあたったようで試合中にもボクサーのように目のまわりが腫れ上がって痛々しい状況だった。

 問題はこれが単なるアクシデントなのか故意の攻撃だったのかという点である。コーチ陣のコメントを読む限り、故意に何度も「殴った」ようなニュアンスで、IJFにもビデオを提出するという。私もビデオを見たが、残念なのはやはりビデオはビデオであるということである。確かに殴っているようにも見えるが、気持ちの激しさが組み手の激しさになって、たまたまぶつかったようにもみえる。おそらく会場にいた人たちがみていると違った印象を受けたに違いない。おそらく、審判としても反則を取るまでには難しい判断であったに違いないが、選手に口頭で注意を与えるぐらいはあって良かったのではないかと思う。

 アクシデントといえるかどうかはわからないが、最終日の48kg級の決勝戦の判定も不可解きわまりないものだった。地元中国の選手との対戦であったので当然ながらホームタウンディシジョンはあるだろう。しかし、ゴールデンスコアに入ってからの闘いは福見選手が圧倒していた。これで旗が分かれるようであれば「立っているだけでも勝てる選手が出るということになる」というぐらい差があった。確かにポイントを獲らなかったのが悪いといえばそうだが・・・あまりにもひどい審判であった。

 IJFはコーチや選手には審判にクレームをつけることを許していない。コーチたちは正装をしてお行儀よく振る舞っている。審判は守られているのである。では、選手のことは誰が守るのであろうか?上野選手を殴った北朝鮮の選手が故意であったかどうかは判断できないが、この審判員達は明らかに故意に判定を行った。審判員としての倫理観に大きく欠ける。万が一、故意でないという主張であれば、素人でも間違わないような判定を間違えたとなれば国際審判員としての資格はない。コーチや選手は何かあれば罰則を受けるのに審判はお咎めなしではおかしい。それにしてもアジア大会という大きな大会でこのようなレベルの低い審判が捌いているのかと思うと情けない。

 男子では秋本選手、平岡選手が試合中に怪我をしたようである。不可抗力といえるのだろうが、前にも書いたが過密な大会スケジュールがこういった怪我を誘発しているともいえないだろうか。次の闘いであるグランドスラム東京大会まですでに一ヶ月を切っている。選手達は休む間もなく、落ち込む間もなく、次へと向かわなければならない。選手ばかりでなく、コーチも審判も大会関係者も大会を振り返って評価、反省、総括する時間もない。