山口 香の「柔道を考える」

柔道が直面している問題を考え、今後のビジョン、歩むべき道を模索する。

学生柔道体重別団体

2010-11-01 11:39:55 | Weblog
 週末は兵庫県、尼崎において学生柔道体重別団体選手権が行われた。男子が12回、女子が2回目となった今大会は始めて男女同時開催となった。

 2日間とも観客席はほぼ満席状態で、2日目の男女決勝戦前には立ち見の観客が目立ったことから関係者しか入れなかった1階席も解放するほどだった。使用する体育館の規模や設備(更衣室の数など)から男女共催にはハードルが高く、運営する側としては非常に大変だったことが予想できる。しかしながら、会場の盛り上がりをみていると大成功だったのではないかと思う。2日間の大会が大きな混乱もなく滞りなく行われ、それを支えた人たちの努力に敬意を表したい。

 女子は環太平洋大学が初優勝を飾った。女子柔道部創部4年目での快挙である。創部4年目といっても部員は40名以上で、選手層もあつい。しかしながら、こういった大きな大会で強豪校を次々と倒しての優勝は素晴らしい。総監督の古賀さんと決勝前に話をしたが、「久しぶりに具合が悪い」といっていた。見た目には自信満々に見えたチームだが、自分が闘っていたとき以上に緊張したにちがいない。

 総監督の緊張をよそに選手達は最後まで伸び伸びと闘った。競り合っても攻め負けない勝負強さは普段の練習量の豊富さ、やり込んできた者がもつ自信だった。

 これからは挑戦を受ける立場になる。成し遂げた余韻に浸る暇もなく次を目指さなければならない。男子と違い女子は常に下克上が可能で、新規参入校にもチャンスがある。こういった大学間の競り合いが現在の女子柔道の強さの裏付けになっているのかもしれない。今年敗れた強豪校が来年どう巻き返しを図ってくるのか、今から来年が楽しみである。

 男子は筑波大学が7年ぶり2度目の優勝を果たした。9月に行われた東京世界選手権のメダリスト3人を擁した筑波大学ではあったが、準々決勝、準決勝、決勝と僅少差のきわどい闘いだった。

 学生団体は無差別のそれも含めて独特の雰囲気がある。開会の挨拶で佐藤会長が「9月に行われた世界選手権の代表が先に行われた個人の学生選手権には出場しなかったが、今大会は1人を除いて全員が参加している。それだけ、この大会にかける思いがあるのだろう。」といった内容の話をされた。確かに、個人戦とは全く違うモチベーションとプレッシャーがある。

 自分の勤務校であり、母校である筑波大学が優勝したからということではなく、見ている人が息をのむような試合が続いて柔道の魅力をあらためて感じた。母校の名誉をかけて闘った選手達すべてに、素晴らしい闘いを見せてくれたことに感謝をしたい。

 この大会も当然のことながら国際審判規定で行われた。気になったのは「反則」のタイミングだった。確かに、国際審判規定においては両者に反則をとるのではなく、どちらかを見極めて一方に「指導」を与えることや、試合に動きがない時には早めに「指導」を与えるというのが流れである。しかしながら、あまりにも性急に反則をとってしまい、せっかくの試合の流れを断ち切ってしまうようなシーンも見られた。

 団体戦は個人戦と違い、駆け引きがある。引き分けという戦略もある。反則ばかりで勝負が決まってしまうのは個人戦以上に興醒めであり、団体戦の面白さや醍醐味がなくなってしまう。今大会は体重別なのでまだよかったが、これが無差別となったら小さい選手は闘い方がなくなってしまう。国内ルールを事実上なくして国際ルールに統一したことは異存ないが、大会によって匙加減があってよいと思う。ルールはいかにその競技の魅力を引き出し、見ている人にわかりやすく、面白いものにするために存在するのだと思うので、杓子定規に行うことはいかがなものか。大事なのは大会全体で申し合わせを行い、どの試合に関しても整合性がとられていることである。さっきの試合はこうだったのに、今度の試合はこうだった、では不満もでる。

 世界各国も若い選手達の活躍が目立つ。日本も男女ともに学生の中から1人でも多くの選手が世界で活躍できるように期待したい。