山口 香の「柔道を考える」

柔道が直面している問題を考え、今後のビジョン、歩むべき道を模索する。

選抜体重別選手権

2010-04-04 17:32:31 | Weblog
 昨日、今日と二日間に渡って選抜体重別選手権が開催された。この大会は、欠かすことなく会場で見てきたが今年は勤務先の入学式と重なったこともあってテレビでの観戦だった。放映内容に関しては様々意見もあるが、今回見た限りでは各階級の決勝戦を中心に比較的満遍なく放映されていたのではないだろうか。

 今大会は、実力者は揃っているものの絶対的なスターと呼べる選手が存在しない。柔道というのは、「世界でメダルを獲るのが当たり前」という印象が強く、世界チャンピオンというだけでは絶対的なスターにはなり得ないところが辛い。おそらく他の競技であれば世界のトップクラスにいるというだけで大きく注目されるに違いないのに・・。まあ、愚痴を言っても仕方がない。絶対的なスターがいない分だけ、放映も落ち着いた見やすいものになったのかもしれない。

 この大会は9月に行われる世界選手権(東京)の代表選考を兼ねていた。今年の世界選手権からは各国から2名(これまでは1名)の選手が参加できるようになった。試合を見ていても今ひとつ緊迫感を感じなかった(私自身が)のは、これが原因かもしれない。決勝戦でも比較的ゆったり見ることができた。

 日本男子は昨年の世界選手権で史上初めて金メダルゼロという結果に終わった。こういった苦しい状況の男子にとって、2人がエントリーできるということはありがたい。世界代表の顔ぶれを見ても6階級(100kg超級は全日本選手権後に選出)12人中6人が大学生である。若い選手達が世界の舞台で経験を積んでいけば飛躍的な伸びも期待できる。強化としてはわかってはいても、結果を求められるので、1階級1人であれば、実績のない学生を抜擢するのは難しい。そういった意味では、今回のIJFの方針は日本にとっては追い風である。しかしながら、1階級2名出場していてメダルが獲れなかったとなっては日本の威信がさらに落ちることは間違いない。ここは正念場だろう。

 女子の場合には、選ばれた選手のほとんどがIJFランキング上位であるので、世界選手権においても全員メダル獲得も夢ではない。おそらく日本女子の強さはしばらく続くと思われるので、世界選手権のメダリストが五輪には参加できない(オリンピックは各国代表1名のため)となると、五輪の価値がどうなるのか・・・IJFとしては悩ましい問題になるかもしれない。

 会場で見ていた人の感想を聞くと、観客があまり多くなく、盛り上がりに欠ける大会だったという。テレビで見た限り、良い試合も多かったようだが、テレビはダイジェストのように見せてくれるからかもしれない。試合を見に行くのは、その競技自体への興味もあるが付帯的なものも大きい。野球やサッカーなどは、試合以外でも売店での買い物、食べる楽しみなど、女性や子供でも退屈しないような工夫がなされている。柔道も競技の魅力を上げることはもちろんだが、それ以外の面でももっと工夫がなされるべきだろう。一度見に来たお客さんが、「もう一度きたい」と思うこと、リピーターをいかに増やすことも大事だ。最近の全日本クラスの大会会場は企業の応援団ばかりが目立つ。企業からの応援はありがたいが、やはり個人のファンをもっと獲得したい。選手が練習を重ね、一歩ずつ力をつけていくのと同様に大会をマネジメントする側も一歩一歩の努力と積み重ねが大事なのだろう。この両方がうまく機能しなければ今以上の柔道の発展は難しい。