山口 香の「柔道を考える」

柔道が直面している問題を考え、今後のビジョン、歩むべき道を模索する。

柔道着の規制

2010-03-06 00:22:09 | Weblog
国際柔道連盟(IJF)から各国に、公式大会で使用できる柔道着の通達があった。以前にも紹介したがIJFは柔道着メーカーとスポンサー契約を行った。その結果、今回通達されたのは、IJFが主管となる世界選手権、ジュニア、カデ世界選手権はもちろん、グランドスラム、グランプリ大会といった大会はもちろん、ベテラン大会(マスターズ)などすべての大会においてIJFが契約した4つのメーカー(以下に示す)のものしか着用が認められないというものである。これに関しては厳しく管理し、徹底して行うと明言している。

以前にも書いたが、国際競技連盟が用具メーカーと契約して、そのメーカーに限定して使用を認めるといったことは前代未聞である。テニスで「このメーカーのラケットしか使うな」とかサッカーで「このメーカーのユニフォームしか着るな。シューズはここだけ。」などということは考えられない。こういったあり得ないルールに理事達は、賛同しているのか、文句がいえないのか、どう考えているのか聞いてみたい。

柔道は現在199の国と地域が加盟している。世界中のそれらの国がたった4つのメーカーで自分たちの柔道着を調達するのは極めて難しい。また、4つのメーカーはIJFに納めた上納金を回収するために値段を上げることも考えるだろう。値段は上げても自分たちの「柔道着しか着てはいけない」というIJFのお墨付きがあるのだから怖くもない。貧しい国は大会に出場する柔道着すら買えなくなる。

さらに、一般的には各国の連盟がメーカーと契約を結んでナショナルチームに柔道着を提供してもらったり、スポンサー料を得て、強化資金などに充てるケースが多い。しかし、今回のことで例えばミズノは全日本柔道連盟と契約を結ぶこともナショナルチームに柔道着を提供する必要性はなくなる。(そうするかどうかはわからない)他の3社と競合しても日本人がミズノを選択するのは目に見えているからである。日本はよいが、これまでメーカーと連盟が契約して提供を受けていても、そのメーカーが4社に含まれていなければ、今後は購入するほかなく、選手個人の負担が増える可能性が高い。

興味深いのは最近柔道着に進出してきたアディダスは契約を結ばなかったことだ。おそらく高い契約金を払ってまで柔道に参入する価値がないと判断したのであろう。ヨーロッパではこれまでアディダスを着用してきた選手も多く、それらの選手達はいずれかのメーカーに変更せざるを得なくなる。

何度も言うが、あらゆるスポーツで自分たちの使う用具やユニフォームに国際連盟が制約を設けることは前代未聞であり、言語道断である。おそらく日本では「ミズノが入っているんだからいいじゃないか。日本には影響がない。」という論調になるだろう。しかし、本当にそれでいいのか?日本とフランスは柔道大国である。この2カ国が世界の中でも最も発言力を持っているはずである。下のメーカーを見ればわかるがこの両国のメーカーが含まれている。おそらく世界は「日本、フランスは自分たちが痛くも痒くもないことには目をつぶる」とみるだろう。こういった横暴に目をつぶって「見ざる、言わざる、聞かざる」を通すのであれば柔道において大国であるとか、リーダーであるという看板は外して世界のなかの一国にすぎないと認めるしかない。

以下は着用が認められる柔道衣メーカー(ドイツ1社、日本1社、フランス2社)
1)Green Hill
GmbH Firedrich‐Vorwerk‐Str. 4 21255 Tostedt Germany .
www.greenhillsports.com
2)MIZUNO Corporation
3)Double D Martial Arts & Combat Sports Division
2 rue Vladimir Jankelevitch F77436 Marne la Vallee Cedex 2 France
4)SFJAM ‐ NORIS FRANCE
11 rue de la pompe ‐R.N.14 ‐ BP 8249, 95801 Cergy Pontoise, France